過熱する中国のEVブーム はたして中国の電力は本当に足りるのか?

中国政府の肝いり政策「NEV」

 では、どうしていま中国でEVが急増しているのでしょうか。

 その背景にあるのが、NEV規制です。NEVとは、ニュー・エネルギー・ヴィークル(新エネルギー車)の意味で、EV、プラグインハイブリッド車、そして燃料電池車などの電動車を指します。

 NEV規制は、中国でクルマを製造・販売する中堅や大手の自動車メーカーに課せられた義務で、販売台数の一定割合をNEVにしなければなりません。そのため、2018年のNEV規制の施行に合わせて、自動車メーカー各社が一斉にEVを発表しているのです。

上海モーターショー2019に出展された電気自動車

 現時点では、中国でのEV年間発売台数は100数十万台ほど。中国全ての自動車年間販売台数では20分の1程度ですが、NEV規制は今後、段階的に厳しさを増していきます。そうなると、中国ではEVの数が必然的に増えていくことになります。

 中国政府としては、EVを足掛かりに燃料電池車を含めた次世代自動車の技術開発で世界をリードしていくとの方針を明確に示しています。すでに中国はEVの製造・販売数で世界一なのですが、国の肝煎り政策によって中国でのEVの需要は確実に増えそうです。

 ただし、そうなると大きな問題が生じてきます。「電力は足りるのでしょうか?」

 中国の電力需要は90年代からの始まった、経済の民主化政策によって増え続けてきました。2000年代初頭では、90年代に比べて一気に2倍に跳ね上がり、その後も電力需要は伸び続けてきました。

 そうした電力需要の約8割は、工場や商用施設など工業向けの需要です。それがEVの需要拡大によって、工業向け以外の分野で一気に増える可能性があります。

 現時点でのEV需要は、フリートと呼ばれるレンタカーやタクシーなどの公共交通向けが主流ですが、今後はNEV規制が厳しさを増すなか、個人需要が拡大しそうです。

 そうなっても、EVに対して十分な電力供給が行えるかどうかは、民間企業の一存では解決が難しいと思います。中国政府がNEV規制の動向を見据えながら、電力需要をコントロールしなければなりません。

 中国での発電所は、石炭による火力発電が全体の約6割、水力発電が約2割、残りが風力発電、太陽光発電などで、原子力発電は1%程度を少なくなっています。中国は石炭の採掘量が多いのですが、国の政策としては近年、大気汚染の低減に向けて石炭火力発電の比率を下げる傾向にあります。

 そうなると、今後は風力発電や太陽光発電など、自然エネルギーによる発電を強化することでEV需要に対応する可能性が高いと考えられます。

 ただし、過去にも中国は自然エネルギー発電をベースとした町づくりとして、いわゆるスマートグリッド構想を進めたのですが、計画が継続的に実施されている事例はけして多くないという状況です。

 NEV規制導入によって、中国政府が新規スマートグリッド構想をどのように描くのか。それによって、中国でのEV需要拡大の道筋が見えてくるでしょう。

【了】

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Writer: 桃田健史

ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、
自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日(洋泉社)

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コメント

2件のコメント

  1. EVは確かに必要とおもうのですが、国土の狭い国なら全てが電気でも良いと思いますが、国土の広い中国で本当に普及するのか疑問です。

  2. 火力発電でスモッグの街をEV車で走る中国。昔の中国人は予言して、四文字熟語を作った。◯◯◯◯