中国のパクリ車は完全に消えた? 10年前とは違ういまの中国ショーの現実
中国地場メーカーの商品性が格段に高まる
一方で、最近になって存在感を増してきたのが、中国の地場メーカーです。第一汽車、東風汽車、広州汽車、北京汽車、長安汽車など、日本ではあまり馴染みがない名前ですが、中国人なら誰でも知っている有名メーカーです。
こうした中国地場メーカーには、ふたつの顔があります。ひとつは、各メーカーの自社ブランド。そうして、もうひとつが中国市場での最大の特徴である海外メーカーとの合弁企業です。
中国では、海外メーカーがクルマを製造・販売する場合、中国地場メーカーと合弁企業を設立することが義務付けされてきました。そのため、たとえば日系の場合、一汽トヨタ、東風日産、広汽ホンダといったメーカー名で日本車が販売されています。
もともと、日本車などをパクっていた中国地場メーカーが、日系企業と正式に契約することでパクリ車はどんどん減っていきました。ただし、海外メーカーとの合弁がない中小メーカーの中には、パクりっぽい感じのクルマがいまでも存在します。とはいえ、10年前の“もろパクリ”といった露骨なクルマは姿を消しました。
中国でのクルマのパクリについて、今回の上海ショー取材で改めて感じたことがあります。
それは、SUVに関するパクリです。正確にいえば、パクリというより「日系も欧州系も、そして中国地場系も、どこのメーカーもSUVが同じような感じ」ということです。
さらに細かく見てみると「これは、ちょっとパクっているでしょ」と思えるケースもあります。ですが、これは中国地場メーカーに対してではなく、日系、欧州系、米系のなかでも感じされることです。
結局、SUVという商品の性格上、デザインの幅があまり広くなく、結果的にどのメーカーも似たりよったりのデザインに見えてしまうのです。
こうしたなかで、目立っているのが、中国のベンチャーです。中国では2018年からEVなどの新エネルギー車について販売台数の義務化が始まっていて、それをきっかけに、EV関連のベンチャーが次々と誕生しています。
その多くが、SUVのEVを仕立てているのですが、ボディのデザインが斬新なモノが増えてきました。EVを普及させるために、“見た目が重要”ということで、他社との差別化を図っているのです。
つまり、差別化ということは「他社のデザインをパクらない」ということになります。量産車はもとより、コンセプトモデルでも、中国ベンチャーは”かなり振り切った”デザインを採用するケースが目立ちます。
中国は最近、景気後退によって自動車販売が足踏み状態になってきました。とはいえ、アメリカの約2倍、そして日本の約6倍ものクルマを売っている世界最大の自動車大国です。そんな中国では、クルマのデザインをパクるなんてことから、すっかり卒業したのです。
これからは反対に、海外メーカーが中国メーカーの技術革新をパクる時代になるのかもしれません。
【了】
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。
不勉強な記事。北京汽車のモデルは合弁相手ベンツ旧Gと中身一緒だし、シトロエン?と言っているNIO(ウェイライ汽車)のES8は確か欧米資本が入ってスタートアップベンチャーのはず。雰囲気はどちらかと言えばレンジローバーの体だけど。