日産シルビアにロータリーエンジン、なぜ市販目前で発売中止に!? お蔵入りした幻のクルマ5選

財務状況から中止という経営判断が下された例

●ホンダ「HSV-010」

あと一歩で幻のクルマとなった「HSV-010」(画像はスーパーGTレース仕様)

 ホンダが誇るスポーツカー「NSX」は1990年に発売され、2005年に生産を終了しました。その後継車として日本でも『アキュラ』ブランドのスポーツカーを、2010年に発売すると発表し開発が進められました。

 新型スポーツカーはかつてのF1をイメージさせるV型10気筒エンジンをフロントに搭載。リアタイヤを駆動するFRを基本とするAWD車でした。

 ホンダは国内でアキュラの開発体制を強化する目的で、新たな研究開発施設を作る計画も発表していましたが、2008年にリーマンショックが起こり、世界規模で景気が悪化。

 これを受け、ホンダは急遽アキュラブランドの日本展開を中止し、同時に新型スポーツカーの開発も凍結します。

 こうして市販されなかった新型スポーツカーですが、2010年に「HSV-010」の名で「スーパーGT」レースに参戦します。NSXの販売が終了していたため、レース参戦のためのベース車両がない状況を打開する苦肉の策ともいえました。

 その後、2016年に新型NSXが発売されたことで、HSV-010の市販化と日本のアキュラブランド展開は、幻に終わることになります。

●日産「MID4/MID4 II」

当初は完全なスタディモデルだった「MID4」

 日産「MID4(ミッド・フォー)」は、研究開発の成果をモーターショーの場で発表することも目的とした実験車両で、1985年に発表されました。車名はエンジンをミッドシップに搭載した4WDのスポーツカーを意味しています。

 このMID4の発表から2年後、1987年の東京モーターショーに、より市販化を意識して進化した「MID4 II」を出展。

 エンジンは最高出力330馬力のV型6気筒DOHCツインターボの「VG30DETT型」を縦置きに搭載し、サスペンションはフロントにダブルウイッシュボーン式、リアには操舵機構「HICAS(ハイキャス)」付きのマルチリンク式を採用していました。

 内外装の仕上がりはいつ市販化されてもおかしくないほどのクオリティで、実際に市販化に向けた検討が行われていましたが、実現には莫大な開発費用と工数が必要だった(1987年当時、好景気ながら日産の財務状況は悪化)ことから、結局、MID4の市販化を断念する経営判断が下されます。

 ファンの期待に反して市販には至らなかったものの、MID4の開発で確立した技術の多くは、1989年に発売された4代目「フェアレディZ」や「スカイラインGT-R」などで活かされました。

【了】

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