トヨタ「クラウン」が抱える危機感とは? 新型で“若返り”を図った理由

変革や挑戦は「クラウン」にとって必然のもの

 最初の「クラウン」の誕生は1955年。トヨタとしては独自の技術でボディからエンジンまで全てを作りあげた初めてのクルマでした。当時の日本の自動車業界は、まだまだ未熟で、欧米から学んでいた状況です。欧米メーカーとの提携や、欧米のモデルをノックダウン生産するのが主流でしたが、そんな中で、オリジナルでクルマを開発するのは“挑戦”そのものだったのです。

トヨタ新型「クラウン RS Advance」

 それから現在まで、「クラウン」は、60年以上続く、ロングセラーモデルになります。これだけ長い間、同じ車名が続くことは非常にマレで、日本の乗用車としては最も長い歴史を誇ります。

 自動車業界を見渡せば、ヒットせずに1代限りで消えてしまうモデルが山ほどあります。また、長い歴史があっても現行モデルに魅力がなければ、あっという間に消え失せてしまうのが、厳しい自動車市場の現実です。しかも、ユーザーの心は移ろいやすく、ファッションのように人気やニーズは、毎年刻々と変化します。

 そんな中で「クラウン」が、60年以上、生き残ってきたのは、ひとえに常にフレッシュな存在であり続けたからでしょう。「クラウン」の歴史には、数多くの「世界初の技術」「日本初の技術」「トヨタ初」が綺羅星のようにちりばめられています。デザインも、時代の一歩先行くモノが数多く採用されています。

 先代モデルでは、“グリルがあまりに大きすぎる”とビックリされましたが、今となってみれば、“そんなの当然”というほど、ほかのモデルでも大きなグリルが増えました。一歩先行くデザインだったのです。

 ちなみに、過去、15年ほどの「クラウン」があまり変化していないのは、2003年に登場した通称「ゼロ・クラウン」のプラットフォームを改良しながら使っていたのも、大きな理由でしょう。プラットフォームが同じであれば、プロポーションを大きく変えるわけにはいきませんからね。

最新モデルでの若返りは成功したのか?

 高い人気を維持し、モデルを継続させることこそ「クラウン」の伝統です。そういう意味では、若返りも必須のミッション。では、その狙いは成功したのでしょうか。

「クラウン」エンブレムも新しいデザインに

 まず、販売数から言えば、新型「クラウン」は、2017年の後半の半年で、約3万8000台が売れました。年間でいえば、7万6000台のペースです。モデル末期であった2016年の販売数が年間約4万台であったことを考えれば、まずまず。しかし、先代が登場した2013年の成績である年間約8万3000台と比べると、現状は若干苦戦中というところでしょう。

 また、2018年6月のフルモデルチェンジから1か月後までの受注データでは、顧客に占める60代以上の割合は60%でした。つまり、新型「クラウン」のユーザーの年齢分布は、2012年に登場した先代モデルのデータと、まったく変わらなかったのです。

 新型「クラウン」の新車試乗会で会ったトヨタの開発者は、「40~50代の新しい人を獲得したい」と言っていました。それからすると、狙い通りにはいかなかったようです。しかし6年も前のデータと比べても変わらないということは、新たな若い人が加わっていることも意味します。誰も加わってないなら、さらに高齢者の割合が増えるからです。

 つまり、新型「クラウン」の結果は「最高ではないけれど、最悪でもない」ということ。それよりも、すっかり中身を新しくしたことで、この先、10年はやっていけそうな雰囲気を生み出したことの方が重要でしょう。「歴史は、しっかりと継続できた。まだまだモデルライフは続く!」ということができた。それが新型「クラウン」の最大の成果ではないでしょうか。

【了】

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