時代に逆行!? パワー競争が再燃の兆し 300馬力以上の国産高性能車が次々と登場するワケとは

ようやく世界が昭和の日本に追い付いた

 そして最近は、輸入車を中心にターボモデルが増えました。今のターボを使う目的は、排気量を小さく抑えて燃費を向上させ、必要な時だけ積極的に過給して高出力を発揮することですが、ターボの普及によってハイパワーを手軽に得られるようになったことも事実です。

2リッターで300馬力超のスバル WRX STI RA-Aのエンジン

 たとえば先に挙げた「シビックタイプR」、「スバルWRX STI」、ボルボの「V60」や「XC90」などは、排気量が2リッターで最高出力は300馬力オーバーです。過給器を装着しない自然吸気エンジンで300馬力を超えるには、通常はV型/直列6気筒で3.5リッター以上の排気量を必要としますが、ターボを使えば生産台数の多い直列4気筒エンジンを活用して高出力を引き出せます。

 つまり開発と製造の両面で、高性能エンジンのコストダウンが可能です。これこそまさに、1980年代の日本で、ターボが急速に普及した理由でした。当時は3ナンバー車の税金が高額で、排気量2リッターを上限にターボのパワー競争が展開されたのです。

 この後、日本ではターボが廃れたのは残念ですが(軽自動車のターボだけは進化しました)、今になってグローバルな技術としてターボが復活しました。ようやく世界が昭和の日本に追い付いたのです。

 このように考えると、高性能車の将来は、悲観的なものではないでしょう。V型8気筒とか12気筒の大排気量エンジンは絶滅する方向で、最高出力が600馬力オーバーといった性能も望めませんが、350馬力を上限とするスポーティなエンジンはターボの普及によって以前よりも実現させやすくなりました。

 商品化はメーカーの考え方次第でしょう。二酸化炭素の排出量や化石燃料の消費量を抑えるには、電動化が不可欠ですが、それだけではクルマの世界が退屈になります。興味が薄れてユーザーの購買意欲も盛り上がりません。

 その意味で最高出力が300馬力に達する2リッターターボは、環境エンジンとのバランスも優れています。主力はハイブリッドを含めた電動車としながら、一部に2リッターターボも共存する。このような商品構成なら、エコロジーにもさほど逆行しません。環境性能を見据えた新時代のパワー競争が始まっているのです。

【了】

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Writer: 渡辺陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。

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