電動化、自動運転で欧米がタッグ VWとフォードの提携で日系メーカーに影響は
VWとフォードの提携が発表されました。この世界的な自動車メーカーのビック2が手を組むことで、どんな影響があるのでしょうか。
アメリカとドイツの強力タッグが手を組んだ
世界の自動車産業における年始の一大イベントとして、毎年1月に開催されるのが北米国際オートショー(デトロイトモーターショー)です。
今年は、トヨタ「スープラ」がワールドプレミアをされるなど、新型車の発表で盛り上がりを見せたデトロイトモーターショーですが、アメリカ自動車産業の最重要拠点で行われるショーとあって、ビジネス面でのニュースも注目でした。
ビジネス面での今年一番のビッグニュースは、アメリカとヨーロッパ、それぞれのトップメーカーであるフォードとフォルクスワーゲン(VW)の提携が発表されたことです。
両社の提携交渉が報道されたのは、2018年後半のこと。実際には、それ以前から交渉が進められていたものと思われますが、最初の報道から公式発表まで数ヶ月という、非常にスピード感のあるディールでした。
では、その内容はシンプルなものだったのかというとそうではありません。あらゆる面で協力体制をとるという、非常にダイナミックな包括提携だったのです。
提携内容をより詳しく見ると、まずは商用車の開発に関して協業します。VWが得意とする小型商用車については、VWが開発したものをフォードブランドでも販売。反対に、ピックアップトラックのようにフォードが強みを持つ中型商用車についてはフォードが開発したものをVWでも販売します。
VWの商用車といえば、「ワーゲンバス」として知られるタイプ2のイメージが強いですが、現在欧州で販売されているトランスポルターという中型商用車はタイプ2の流れをくんでいます。
しかし、今回の提携をうけてトランスポルターはフォードが欧州で販売しているトランジットというクルマの次期型と統合されることになります。
タイプ2を愛するマニアからすれば少し複雑かもしれませんが、実用性やコストパフォーマンスが最優先される商用車においては、他社開発・生産のものを利用するほうがビジネス上のメリットは大きいのです。
ここまでは、自動車メーカー同士の提携交渉としては決して珍しいものではありません。他社開発・生産のクルマを販売すること(いわゆるOEM)は、両社に限らず多くの自動車メーカーが取り組んでいます。
新車を大量に販売することで売上を立て、コストを徹底的に切り詰めることで利益を上げることを基本的なビジネスモデルとしている自動車産業にとって、OEMは常套手段なのです。
今回の提携では、前出で述べた内容に加えてある覚書が交わされました。それは、『電気自動車(EV)、自動運転、モビリティサービスの分野における将来的な協業』についてです。
覚書のため、具体的な内容については未定とされていますが、これは未来の自動車産業を占う重要なポイントになるといえます。
電気自動車(EV)、自動運転、モビリティサービスという3つの要素の登場によって、自動車産業は100年に一度の大変革を迎えているといわれています。これは、単にクルマに新しい機能がついたというレベルの話ではありません。
これらの登場によって、既存のビジネスモデルが崩壊し、各国を代表する大企業である自動車メーカーであっても、いまのままでは事業を継続するのが困難になるとされます。