重視するのは「機能性?それとも見た目?」 トヨタ86カスタムへの道【エアロ編】
取材など、全国各地を愛車のトヨタ86で走り回る私、モータージャーナリストの先川知香。初めて購入したマイカーであるトヨタ「86」は大のお気に入りなのですが、取材先で出会った数々のカスタムカーオーナーにちょっとだけ憧れる。“そろそろ自分だけの1台に、バージョンアップさせたいな~!”という事で、カスタムの世界に足を踏み入れてみました。
性能アップとドレスアップ。まずはカスタムの方向性を決定
2017年1月に新車で購入したトヨタ「86(後期型)」。見た目もカッコ良くて、乗り心地も快適。とくに不満は無いけれど、さまざまなカスタムで自分だけの1台に仕上がった、こだわりの愛車オーナーに憧れる。そんな気持ちを秘めているクルマ好きのオーナーさんは多いと思います。実は、かくいう私もその1人。
全国各地へ取材に行く中で、こだわりのカスタムカーに出会うたび、その気持ちはどんどん高まっていきました。
そこで、遂に愛車の86をカスタムする事を決意したのです。
そんな私の「86」は、リアに挟み込み式のウィングが装着されているだけのほぼノーマル状態。現状は、移動手段に使用しているだけなので、まずはカスタムで一番分かりやすいポイントであるエアロパーツを装着する事に。
エアロパーツは、クルマのイメージを大きく変えてしまうので、オーナーにとってその選択はかなり重要です。エアロパーツの種類は大きく分けて2種類。装着する目的がドレスアップなのか、性能アップなのかで選択肢が分かれます。
私が「86」の購入を決めた理由が、“ドライビングテクニックを磨けて、運転を楽しめるクルマ”だったので、今回のカスタムの方向性はもちろん性能アップを選択。国内最高峰レース『SUPER GT』にも参戦するトヨタのオフィシャルチューナー、TOM’S(トムス)へ相談に行きました。
TOM’Sがラインナップするトヨタ「86(後期型)」用のエアロパーツは、純正バンパーに前後ともパーツを追加するタイプの『Sport』と、バンパーを前後とも変えて空力をさらに良くしようという『Racing』が存在。今回は、愛車の更なる性能アップを目指し、『Racing』を装着する事になりました。
そんなTOM’Sのエアロについて、トムス株式会社 自動車用品部の桑原氏は「レーシングカーの場合、エアロパーツの存在はかなり重要で、空気の力でクルマを押さえつけてタイヤのグリップを増やしてコーナリング速度を速くするなどの効果を求められるのですが、その為に色々な工夫が成されています。
簡単に言うと1つは抵抗を与えることで、例えばリアウィング。羽を起こしていくと風が当たってクルマが沈みます。それがダウンフォースです。
そしてもう1つは、床面の空気を速く流していくこと。流速の速い空気をキレイに流していくと、出ていく時に風圧が生じて地面に吸いつく。この2つの方法をうまく組み合わせて、レーシングカーは作られています」と教えてくれました。
日本のツーリングカーレースの最高峰とも言えるSUPER GTで培った技術を惜しみなく注ぎ込んだTOM’Sのエアロパーツを装着すると、私の「86」はどのような進化を遂げるのでしょうか。話を聞いているだけで、ワクワクが止まりません。
まずは、フロントバンパーを交換。このフロントバンパーの形状についても大きな意味があるそうで、「このエアロはとくに車体の下側を通る空気の流れをキレイにするように作られているのですが、車体の下をキレイに流れていく空気の通り道の邪魔をするのが、タイヤハウスに入る空気です。ここに空気が入ってしまうと、ボディの真ん中を走っているキレイな空気の中に混ざってしまい、流れを乱します。
車体前方から来た空気を真ん中に集めて、後方に行くにしたがって空気の通り道を狭くする。そうやって空気の流速を高めながら下面でダウンフォースを発生させ、スムーズな流れを作ります。これは、水の通り道を狭くすると流れが速くなるのと同じ理屈です(TOM’S 桑原氏)」
レーシングカーの1つ1つのパーツ形状には、全て意味があるということに驚くと同時に、そんな凄すぎる性能を果たして私は感じられるのか少し不安になりながらも、作業は着々と進んでいきました。