重視するのは「機能性?それとも見た目?」 トヨタ86カスタムへの道【エアロ編】

エアロパーツに隠された性能を紐解きながら、作業は進んでいく。

 続いては、リアバンパー。こちらは、フロントから取り入れた空気の吐き出し口となっていて、その形状も綿密に計算されているそうです。

純正リアバンパーを外した様子

「リアバンパーは、キレイに入ってきた空気を排出したいのでさまざま工夫が施されています。例えば、普通のクルマでは、タイヤハウス内にインナーフェンダー(内張り)が存在します。しかし、レーシングカーなどにはインナーフェンダーがありません。そのため空気を車体後方に流すために、リアフェンダーの両サイドに縦型の穴があいていて、ここから空気を逃がすという仕組みになっているのです。

 また、リアフェンダーの下側にディフューザーというものが装着されています。レーシングカーは、空気の出口を広くすることで、できるだけキレイな流れで空気を出す仕様になっています。逆にこの部分を狭くすると発生するダウンフォースは減ってしまいます。そのため、レーシングカーでは、このディフューザー部分を切りぬいてしまっているぐらい開口部を広くして、空気を速く抜けるようにしているのです(桑原氏)」

 次は、サイドステップ。さすがにこれは高級感とかアクセントとか、ドレスアップ系カスタムだろうと思いきや、実はここにも重要な働きがあるそうです。

「先ほどまでのエアロパーツの説明で、タイヤハウスの空気をキレイに出す工夫の話をしましたが、いろいろと防いでいても空気は入ってしまいます。そこで、レーシングカーに付いているタイヤの前と後ろを見ると、タイヤの後ろ側が緩く削られています。これはタイヤハウスから空気をスムーズに引き抜く為の形状で、これと同じくサイドステップも前側をゆるく落としているのです。

 そしてもう1つ。車体上面の空気は下面に潜ろうとする流れに変わるので、板状のステップを付ける事で下側に潜ろうとする空気を一旦受け止め、潜らせないのと同時にその流れ自体を下に押す力(ダウンフォース)に変える仕組みになっています(桑原氏)」

 ただの外枠のようなサイドステップにまで、空気の流れを変えるだけでなくそれ自体を利用する機能が備わっているなんて、本当に凄すぎる!と感動しながらも、自分の愛車に穴を開けられる光景を目の前で見ているのは少し複雑な気持ちになります。

 それでもエアロパーツ装着後の完成した姿を見ると大満足で、ノーマルの時ももちろんカッコイイと思っていたのですが、やはりカスタムをすると一味違う。新しいクルマを購入したような気持ちになりました。

 そして、気になる乗り味は、高速道路を走っただけでも全く違い、リアに安定感が増えたことがしっかりと感じられます。正直なところ、クルマは普段の足として以外には使った事がないので、実際のダウンフォースとか細かいところは理論上でしか分からない私ですが、例えばオーバースピードでカーブに進入してしまった時にコーナリングを安定させるためには、左足を踏ん張ると思うのですが、その踏ん張らなきゃいけない状況をクルマがカバーしてくれる。そんな、どっしりとした印象を受けました。

SUPER GTの500クラスで活躍する「LEXUS TEAM KeePer TOM’S」(提供:株式会社トムス)

『レースで培ったテクノロジーを注ぎ込んで開発したパーツ』という言葉はクルマのアフターパーツ業界で度々耳にする、ただのキャッチフレーズだと思っていましたが、それを実際に体感する事ができた今回のエアロカスタム。

 レースという過酷な状況下でも、安定した走りを可能にするレーシングカー。そのエアロパーツの役割は空気を取り込んでキレイに流すだけではなく、排出の流れも大切だそうです。そんなテクノロジーを細部にまで組み込んだ製品を装着し、公道を走ることができる。そう考えると、クルマのカスタムというのはかなり贅沢な楽しみ方ではないでしょうか。

【了】

ノーマルな86がトムス86にカスタマイズされる様子を画像で見る

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