トヨタ「次期カローラ」はどう変わる? 開発責任者が語る“13代目”の挑戦と「良品廉価」への思い 堤工場で60周年記念式典が開催
トヨタ自動車は2026年11月1日、堤工場にて「カローラ生誕60周年記念式典」を開催しました。会場にファンや関係者が集結するなか、ひときわ熱い視線を集めたのが、13代目「次期型カローラ」を示唆する挑戦的なコンセプトモデルです。開発責任者の言葉から紐解く、次世代カローラの姿をお届けします。
次期型開発の現場で繰り広げられるせめぎ合い
2026年11月1日、トヨタ自動車 堤工場(愛知県豊田市)にて、「カローラ生誕60周年記念式典」が開催されました。
カローラシリーズのマザー工場の1つであるこの会場には、開発や生産現場、全国の販売店、そして歴代モデルを愛してきたファンが集結しました。

式典ではトヨタコンパクトカーカンパニー プレジデントの高橋司氏の挨拶や販売店代表の祝辞に続き、カローラシリーズの開発責任者(チーフエンジニア、CE)を務める福島徹氏が登壇。
福島CEは幼少期に親しんだ2代目、免許を取って初めて乗った6代目、そしてCEとなった現在愛車とする12代目(カローラクロス)を挙げ、「人生の節目には常にカローラがあった」と振り返りました。
その会場にいた誰もが熱い視線を注いでいたのは、ステージ上に展示された過去・現在・未来の3台のカローラ。その右端のモデルこそが「13代目カローラ」を示唆する次世代モデル「カローラコンセプト」です。

昨年の「ジャパンモビリティショー2025」で世界初公開されたモデルですが、セダンでありながらクーペのようにワイド&ローな構え、極限まで低く抑えられたボンネット、四隅に配置された大径タイヤと短い前後オーバーハングなど、「これが本当にあのカローラなのか?」と見紛うばかりの挑戦的なプロポーションを備えています。
コンセプトと言っていますが、このイメージをより現実的にした量産モデルが、遠くない将来登場するはずです。

ただ、その裏には、開発陣と生産・生産技術(生技)現場との激しいせめぎ合いがありました。開発陣が最初に引いた図面に対し、生技側からは一時「受け取れません」と突き返される事態になっていたといいます。福島CEは苦笑しながらこう語ります。
「本当に受け取ってもらえず、開発が一度止まりましたからね」
最大の難所となったのが「骨格(プラットフォーム)の通し方・折り方」です。ただ、生産側も単なる「白黒(0/100)」で突っぱねるのではなく、「ここまでは受け取るが、この懸念点はどう変えるんだ」とお互いに本音をぶつけ合い、時には喧嘩のような激論を交わしながら、ミリ単位の成立ラインを切り分けていきました。
式典後のトークセッションでは、12代目カローラのチーフエンジニアを務め13代目のプラットフォーム開発を進めた上田泰史氏(現在はMSカンパニープレジデント)も登壇。
上田氏は「開発と生産は目指す頂点は同じですが、“役割”が違うからこそ本気でぶつかり合います。福島さんには『大変な思いをさせてごめんね』と謝りたいくらいですが、現場と一緒に泥臭くやり切ってこそ、本当にお客様に伝わるクルマになります」と笑顔で振り返りました。

福島CEも「仲良く喧嘩しながら、お互いに一歩も妥協せず戦っています。いいクルマをつくるためには、こうした激論を乗り越えた先にある最後の着地点が不可欠なんです」と応じ、単なるセレモニーの言葉ではない、現場への深い信頼を覗かせました。
13代目カローラのヒントとは?
式典後に行なわれた囲み取材で、13代目カローラの技術的・デザイン的なアプローチについて少しだけヒントをもらいました。
筆者(山本シンヤ)が気になっていたのは、新世代マルチパスウェイプラットフォームを採用する上での難しさです。
内燃機関からハイブリッド(HEV)、プラグインハイブリッド(PHEV)、そしてバッテリーEV(BEV:電気自動車)まで同一骨格でカバーするとなれば、軽量なモデルから大容量バッテリーを積むヘビー級まで、車両重量の振れ幅は過去にないほど大きくなります。この点について福島CEはこう語っています。
「まさにそこが一番難しいところです。軽いなら軽いなりの難しさがあり、重いなら重いなりの課題がある。そのすべてを1つのプラットフォームで衝突安全から操縦安定性まで両立させなければなりません。重量の幅がこれだけ広いクルマを成立させる挑戦は、現在進行形で最も苦労しているポイントです」

また、展示されたカローラコンセプトのフォルムについても非常に興味深い証言が得られました。
「トランクの見切り線をどこに置くか分からないような造形にしています。セダンにも見えるし、リフトバックのようにも見える。SUV全盛の今だからこそ、セダンという枠にとらわれない新しい提案として磨き上げています」
さらに、かつてトヨタ博物館で初代カローラを自らドライブした経験にも触れ、「初代に乗った時の、軽くて自分でクルマを意のままに操っているというピュアな感覚は今も忘れられません。そうした原点の乗り味や味付けも、13代目にしっかり受け継ぎたい」と、カローラが本来持っていた走りの楽しさへのこだわりを明かしてくれました。
「変わり続けてきたからこそ60年続いた」
そんな中、筆者が福島CEと高橋プレジデントにどうしても聞きたかったのは、「60年の歴史の中で浮き沈みもあったと思いますが、お2人にとってカローラの“生き様”とは何でしょうか?」ということでした。
その質問に対して、福島CEは実感を込めてこう語ってくれました。
「一時期、『カローラという名前が重い、厳しい』と言われた時代があったのも事実です。日本市場への導入時、あえてカローラの名を外した車種を出したこともありました。
しかし、カローラクロスなどを通じて若い世代のユーザーにも再び受け入れられ、『カローラっていいよね』と言っていただけるようになりました。苦しい時期をバネにして、再び大きく跳躍するチャンスを迎えているのが今だと感じています」

高橋プレジデントも大きく頷きながら続けます。
「私は当時他の車種を担当していましたが、カローラを担当する開発陣の浮き沈みや苦しさを常によく見ていました。
でも、決して諦めず、もがき苦しみながらも『なんとか良いクルマを世に送り出すんだ』という強烈な執念がある。セダンだけに固執せず、時代に合わせて姿を変えながらお客様に寄り添ってきたからこその60年なんです」
そして、カローラを語る上で絶対に外せない「良品廉価」について筆者が「大いに期待して良いですか?」と水を向けると、福島CEは笑顔を見せつつ力強く答えてくれました。
「ぜひ期待してください。以前、トヨタイムズでも豊田会長から『良品だと思うけれど、本当に廉価なのか?』と鋭いツッコミをもらったことがあります。
そこに応えられなければ、世に出す意味がありません。手が届く安心の価格でお届けできるよう、全力で取り組んでいます」
式典の締めくくりの挨拶で、福島CEは13代目、そしてその先にあるカローラの未来について力強いメッセージを投げかけました。
「カローラは60年間、ずっと同じクルマだったわけではありません。ボディタイプも駆動方式もパワートレインも、社会の中での役割も時代ごとに変えてきました。
ただ、その変化は流行に合わせることではなく、お客様の期待の少し先へ行くために自分自身を変えていくことでした。変わらなかったから60年続いたのではなく、変わり続けてきたからこそ60年続いたのです」
そして、先輩たちからのバトンを受け継ぐにあたり、以下のように宣言しました。
「受け継ぐべきは過去の『形』ではなく、先輩たちが持っていた『挑戦する精神』です。良品廉価、変化、そしてプラスアルファというフィロソフィーを次の世代へ繋ぐため、カローラ自身が変わり続けなければなりません。今取り組んでいるカローラづくりは、次の時代、そして100年に向けた第一歩です」

電動化や知能化、価値観の多様化が進む激動の時代にあっても、新技術を載せること自体を目的にはしないと福島CEは語ります。
各地域のエネルギー事情や暮らしに寄り添った選択肢を届け、世界中のひとりひとりに「これは自分のためのクルマだ」と感じてもらうこと。目指すのは世界中のお客様の笑顔の量産であり、トヨタが大切にする「To You(=あなた目がけて)」の具現化そのものです。
「13代目の開発を富士登山に例えれば、まだ5合目にも達していません。これからまだまだ険しい山が待っていますが、『こんなにすごいのか!』『これがカローラなのか!』と世間をあっと驚かせ、世界中の“あなた”の心に深く刺さるカローラをお届けしたいと思っています」
初代が切り拓いた「プラス100ccの余裕」から60年。開発と生産の現場が互いのプライドをぶつけ合い、泥臭く削り出される13代目カローラは、日常に寄り添う親しみやすさを持ちながら、再び世界中をワクワクさせる「手の届く憧れ」として、確実にその歩みを進めています。
そのXデー、登場の日は果たしていつなのか。楽しみに待ちたいと思います。
Writer: 山本シンヤ
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

































































































