超値上げ? トヨタ 新型「センチュリー」は先代の1.6倍に なぜむやみに高価格クルマが誕生するのか

月販50台という条件、価格を高めて実現へ

 クラリティPHEVは、北米でも売られるために事情が異なりますが、国内の販売計画は1年間に1000台です。1か月平均であれば83台で、フューエルセルを含めてクラリティ全体の販売規模も小さいです。そこで価格が割高になりました。

ホンダ 新型「クラリティPHEV」

 ユーザーから見た時の商品の価格は、主に機能やデザインという商品価値で決まります。クルマであれば、走行性能、乗り心地、燃費性能、車内の広さ、質感、装備などが、価格をイメージさせる商品価値でしょう。

 ところが実際には「どれだけ売れるのか」という生産規模が重要で、たくさん売れれば安くなり、少数では高まります。開発者の中には「クルマの価格と機能はまったく関係ありません」と断言する人もいるほどです。

 したがって売れ行きが伸びると、すべてがよい方向に進みます。大きな利益を生み出し、次期型の開発費用も潤沢に与えられます。価格の割に装備を充実させたり、質感を高められるので、ますます好調に売れます。

 逆に販売が伸び悩むと、必要な改良を受けられなかったり、次期型の開発費用を減らされるなどマイナス方向に進んでしまいます。その結果、消滅する車種も少なくありません。

 センチュリーは前席よりも後席を重視する国産唯一の高級セダンで、トヨタのイメージリーダーカーでもあります。そこで国内専売で月販50台という厳しい条件ながら、価格を大幅に高めることで商品として成立させました。

 このようにクルマの価格は、人気度を表現する指標でもあります。読者の皆さんが「コスパがいいね、割安だね」と感じた商品は、クルマに限らず高い人気を得ているでしょう。

 その一方で「コスパは悪いけど、思わず買ってしまった」という商品もあると思います。そこに当てはまるのが、センチュリーやクラリティPHEVで、「たとえ割高でも買いたい」と思わせる魅力が必要です。はたしてこの2車種はどう評価されていくのでしょうか。

【了】

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Writer: 渡辺陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。

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