「技術で負けてはいない」“事故死ゼロと移動の自由”を両立する「日本らしい自動運転」とは?
2026年9月17日、日本自動車工業会(自工会)は「自動運転を前提とした交通システム確立」に向けた詳細な取り組みを説明しました。「事故死ゼロ」と「移動の自由」の両立を最上位目標に掲げ、各メーカーが競い合うAI等の技術開発と、官民一体で進めるインフラ整備などの協調領域を両輪として推進します。
「競争領域」と「協調領域」を設定し自動運転の実装を加速
2026年9月17日に行われた日本自動車工業会(自工会)の記者会見において、「新7つの課題」の取り組みテーマの一つ、「自動運転を前提とした交通システム確立」に関する説明が行われました。
自工会は2026年1月に持続可能な自動車産業の基盤構築に向けた「新7つの課題」の取り組みテーマを発表しています。
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1. 重要資源・部品の安全保障:調達リスクの低減と、供給不足を起こさない「後戻りしない仕組み」を構築。
2. マルチパスウェイの社会実装:水素トラックの普及、走行中無線給電の実装、CN(カーボンニュートラル)燃料の早期普及を推進。
3. CE(循環型経済)の仕組みづくり:電池のリサイクルや価値の見える化により静脈産業を事業化。
4. 人材基盤の強化:関係機関と連携し、整備士不足の解消と生産性向上を明確化。
5. 自動運転を前提とした交通システム確立:車・人・インフラの一体化で事故死ゼロと移動の自由を実現。
6. 自動車関連税制抜本改革:車体課税の簡素化と負担軽減を推進。
7. サプライチェーン全体の競争力向上:共同物流の標準PF構築や部品・素材の共通化で強靭化。
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今回説明された「自動運転を前提とした交通システム確立」の中核となるのが、「事故死ゼロ・移動の自由の実現に向けた取組み」です。
自工会は、すべてのヒトとモノが安全・安心に自由に移動できる自動運転社会の実現を目標に掲げています。

会見に登壇した安全技術・政策委員会の赤石永一委員長は、2025年度に2500人以上が交通事故で命を落としている現状に触れ、「まずは交通事故死をゼロにすることが目指すべき姿である」と説明しました。
さらに、高齢化や地域公共交通の縮小が進む日本において、移動の自由を維持・確保することは非常に重要な社会課題との認識を示し、事故死ゼロと移動の自由を高いレベルで両立させることが自工会の最上位目標だと強調しました。
この目標を達成するために、自工会は各メーカーが独自に競い合う「競争領域」と、業界全体や国、自治体と協力して取り組む「協調領域」を設定。
自動運転の核となるAIを活用した車の自律性能向上は各メーカーが競争領域として進める一方で、社会への実装力を高めるための協調領域として「インフラ協調」「社会基盤の整備(社会信頼基盤の確立)」「技術の市場浸透」の3つを柱としています。
1つ目のインフラ協調については、交差点などに設置したカメラやセンサーを用いて死角の情報を周囲に配信し、安全行動を促してスムーズな交通流を守るという具体的なイメージが提示されました。こうした仕組みを現場に実装してデータとともに有効性を検証し、車両単独では対処しきれないリスクを補う「情報管制プラットフォーム」の構築を目指します。
2つ目の社会信頼基盤については、技術的な安全性だけでなく、社会的信頼性をいかに確保・維持するかが重要視されています。自動運転車は認証を取得して市場に出せば終わりではなく、その後の市場運用からしっかりと学び、制度と技術を継続的に改善していく仕組みを作り上げることが不可欠であるといいます。
そして3つ目の技術の市場浸透では、安全な車の共通認定や購入支援による普及促進、さらには運転をやめても利用できるモビリティサービスの確保など、ユーザーを切れ目なく支える環境整備が進められます。
「技術で負けてはいない」 次のフェーズはいかに社会へ浸透させるか
自工会の佐藤恒治会長は自動運転の基本方針として「安全」と「移動の自由」の二つをぶらさずに「日本らしい自動運転」のあり方を考えていくとコメント。日本の交通環境は歩行者と車両の近接や信号、高速道路設計、ETCなどインフラとの協調設計が進んでおり、モビリティとインフラが調和する社会を基盤にしていると述べています。
自工会としてはロードマップを定め、まず「自律制御型(E2E、エンドツーエンド)」の技術の社会実装を、スピード感をもって高める方針です。
各社が持つ技術を積極的に社会へ示し、自治体・地域と連携して実装を進め、現場で得られた課題を自工会が拾い上げて中長期的な社会システムの構築につなげる流れを示しました。

海外と比べ「周回遅れ」との指摘に対しては、「技術で負けてはいない」と述べつつ、社会実装のスピードに課題があるとの認識を示しています。
政府の重点政策で自動運転が重視されている現状を追い風に、投資環境の後ろ盾を得ながら実装を加速する考えです。次のフェーズは「いかに社会へ浸透させるか」だとし、官民一体で法整備や社会受容性の向上に取り組み、認知を高めていく方針です。
イヴァン・エスピノーサ副会長は、「日本の業界は安全と移動の自由という共通のビジョンを共有し、車車間・路車間通信やインフラ連携を含む高度な協調を進めている。これが日本のOEMの競争力につながる」と補足しました。
また、日本の強みとして「高度な共同作業が可能であること」を挙げ、技術の早期実装を支える仕組みや社会システムづくりを急ぐ必要性を語りました。
三部敏宏副会長は、協調領域について、通信の周波数など技術要素で各社の考えが異なる事実を認めつつ、最終的には国際標準での統一が必要で、日本としての考え方をまとめて標準化の場に持ち込み、日本発の仕様の世界標準化を目指す意欲を示しました。
ただし過去の標準化での苦戦にも触れ、各社の異なる考えを一つにまとめる作業を「非常に重要で、やらねばならない」としています。
二輪の自動運転については、設楽元文副会長が「社会的基盤の確立は四輪も二輪も同じカテゴリー」としつつ、二輪は自立しない特性から四輪以上に高い安全確認が必要だと述べました。交差点での出会い頭の状況における認知や、四輪側が適切に注意を引かれるような仕組みづくりを課題として挙げ、「技術的課題の解決に取り組む」としています。
二輪の事故ゼロに向けては、「二輪車産業政策ロードマップ2030」が2021年に発足・発信されており、一般ライダーや高校生、通勤者向けの教育を徹底して進めていると説明。安全装備の普及では、ヘルメット、胸部プロテクター、運転に適したウェアなどの装着を促す啓発を継続します。
AI活用については、各社がAI導入に努めて自律的な車を目指している一方、AIに特有の安全担保の課題を車両全体の観点で総合的に確保する重要性が示されました。
「自動運転では半導体とAIのあり方、モビリティのハードウェアとソフトウェアの関係を統合的に見る必要がある」との指摘があり、AIを用途特化的に捉えた“モビリティ特化AI”の進化の姿を考えるべきだとしています。
さらに、フロンティアAIによる脅威を踏まえ、「攻撃への防御」「車両がハッキングされない仕組み」「開発プロセスでのソフトウェア秘匿性の向上」などセキュリティ論点が提示され、「フロンティアAIによる被害を想定した自動車業界としての構え」を自工会内でも議論し始めているとのことです。
社会実装は「困りごと」起点で進める
社会実装の進め方は、都市か地方かといった区分にこだわらず、地域の「困りごと」を起点に効果のあるところから実践導入するという方針です。
アルゴリズム向上には多様な環境のデータ収集が重要で、交通量の多寡だけでなく「トラックが多いが道が狭い」「幹線が多い」「自転車や小さい動きが多い」など地域固有の特殊要因を重視するとしています。
国の重点地域指定のフォーマットに則りつつ、各社のニーズに応じて地方自治体と直接連携し、多様性のある場所で実証を進める考えです。
またL4(レベル4)自動運転については、国連のUNR法規が2026年6月に採択されるなど世界で法規化が進んでいるとの認識が示されました。
日本国内でも官庁と法規化を進めている段階で、「導入を遅れなくするための備えは必要」としつつ、競争領域(市場投入される各社の技術・サービス)とインフラや社会基盤の整備を並行して行うといいます。
具体的なスケジュールの断定は避け、「2030年に向けて両方が並行して進み、より拡大した社会を作っていくイメージ」としました。
Writer: くるまのニュース編集部
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