普及が進む「自動ブレーキ」に過信は禁物 速度によっては作動しないことも
車両の前方に設置されたカメラによる画像解析や、ミリ波レーダー、赤外線レーザーなどを駆使して道路状況を監視し、衝突の危険を感知すると、自動でブレーキを作動させる「衝突被害軽減ブレーキ」ですが、作動には上限速度があることを知っていますでしょうか。
自動ブレーキには制限速度が設けられている
いわゆる「自動ブレーキ」と呼ばれている「衝突被害軽減ブレーキ」ですが、近年では普通乗用車のみならず、軽自動車、バス、トラックと、ありとあらゆるクルマに搭載が進んでいます。
車両の前方に設置されたカメラによる画像解析や、ミリ波レーダー、赤外線レーザーなどを駆使して道路状況を監視し、衝突の危険を感知すると、自動でブレーキを作動させ、衝突を回避、または被害を軽減する役割を果たします。
しかし、衝突被害軽減ブレーキは、すべての速度域をカバーしているわけではなく、自車速度に上限があることを知っていますでしょうか。
例えば、ホンダ「シビック」の安全運転支援システム「ホンダセンシング」のうち、衝突軽減ブレーキ「CMBS」では約5km/h以上でセンサーが動作し、100km/h以下で走行中に衝突の恐れがあるときに自動ブレーキが作動すると取扱説明書に記載があります。日産のノートに搭載されている「インテリジェント エマージェンシーブレーキ」であれば80km/h、スバルの「アイサイト」の衝突被害軽減ブレーキが160km/hとなっています。
上限速度はなぜ定められているのか
上限を超えた速度で走行している場合、衝突被害軽減ブレーキは作動することはありません。各社それぞれの上限速度を設定している理由は何でしょうか。
衝突被害軽減ブレーキの作動する速度の上限について、ホンダにうかがいました。
──シビックに搭載されている「CMBS」は上限速度を100km/h以下としていますが、その理由は何でしょうか。
高い速度になるほど対象物(衝突相手)を遠方から認識する必要がありますが、遠方になるほどレーダーやカメラで認識することが難しくなります。よって高い速度では十分な作動ができないことから、作動上限速度を設けています。
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現時点でのカメラやセンサーが正確に道路状況を分析できる性能の限界が、上限速度を定めた理由のようです。日本の法定速度は高速道路で100km/h(一部区間のみ110km/h)、一般道であれば60km/hであるため、実用に問題のない範囲となっています。
また、衝突被害軽減ブレーキが作動する上限速度を160km/hに設定しているスバルですが、上限速度とは別に、自動ブレーキが作動しない状態があるといいます。スバルにうかがったところ「前方の車両との速度差が50km/hより大きい場合は、性能限界から衝突を回避することはできません」とのことでした。
ほかにも、対歩行者の場合、スバルの衝突被害軽減ブレーキは速度差が35km/h以下でないと自動ブレーキが動作せず、日産のインテリジェント エマージェンシーブレーキでは、60km/h以上で走行している場合は、歩行者に対して自動ブレーキが動作しないなど、それぞれの制約があり、メーカーや車種などでも異なります。