469馬力のBMW新型「“スポーティ”SUV」に乗った印象は? “超高性能”な統合制御でスムーズに止まれる!? 新世代「iX3」の実力とは
BMWジャパンは2026年7月22日、新型「iX3」を発売しました。次世代コンセプト「ノイエ・クラッセ」の第1弾として登場した新世代の電動SUVは、どのような走りを見せるのでしょうか。今回は新型「iX3 50 xDrive M Sport」に試乗しました。
「ノイエ・クラッセ」でデザイン一新
BMWの次世代モデル群「ノイエ・クラッセ」の第1弾として登場した新型「iX3」。WLTCモードで最長906kmという航続距離や800Vアーキテクチャなど、新技術を満載したBEV(電気自動車)ですが、実際に乗ってみると、数字以上に印象的だったのは「新しいBMWになっても、BMWらしさは変わらない」ということでした。
1960年代、BMWは「ノイエ・クラッセ(Neue Klasse=新しいクラス)」と呼ばれるモデル群によって大きな変革を遂げました。そして21世紀、電動化やデジタル化によって自動車が大きく変わろうとしているいま、BMWは再びノイエ・クラッセを掲げ、その第1弾として新型iX3を送り出しました。
そのフロントマスクを見ただけでも、新型iX3の変貌ぶりには驚かされるばかりです。
BMWのアイデンティティであるキドニーグリルは、近年のモデルで見られた大型のものとは異なり、縦長ですっきりとしたデザインに。これは1960年代のノイエ・クラッセを思わせるもので、新世代のBMWであることを強く印象づけます。

いわゆるDセグメントSUVのiX3は、全長4780mm×全幅1895mm×全高1635mmというボディサイズで、SUVらしい存在感がありながら、空気抵抗を示すCd値は0.24を実現しています。
これに貢献しているアイテムのひとつがポップアップ式のドアハンドルで、BMWとしては初採用という力の入れようです。
エクステリア以上に目を引くのがコックピットです。さっそく運転席に座ると、上下をフラットに仕上げた未来的なデザインのステアリングホイールの奥に、一般的なメーターパネルはありません。
代わってフロントウインドウ下部に横長の「BMWパノラミック・ビジョン」を配置。幅約110cm、43.3インチの表示領域に速度や航続可能距離などを表示します。
ドライバーから少し遠くにあるので、乗る前は「見にくくないの?」と思いましたが、実際には視線移動が少なく、想像以上に見やすくひと安心です。
余裕あるボディサイズだけに、後席は足元、頭上ともに十分なスペースがあります。フロアにセンタートンネルがないため足元は広々としており、後席はリクライニングも可能です。
荷室は、後席を使っている状態でも奥行きが約1m確保され、シートを倒せば190cmまで拡大できるため、車中泊もラクにできそうです。
加速だけじゃない! “止まる”にもこだわりが
今回試乗した「iX3 50 xDrive M Sport」は、前後にモーターを搭載する4WDです。
システム最高出力は345kW(469ps)、最大トルクは645Nmを発揮します。
基本的には後輪駆動で走り、必要に応じて前輪も駆動します。

それもあって、リアにはレアアースを必要としない巻線界磁式同期モーターを、フロントには駆動していないときの抵抗を抑えられる誘導モーターをそれぞれ採用。
BMWらしい後輪駆動の感覚を残しながら、効率と4WDの安定性を兼ね備えているのです。
システム最高出力が469psとはいえ、アクセルを軽く踏むかぎりはジェントルなマナーを見せるiX3。
実に軽々と加速していく様子はプレミアムミッドサイズSUVにふさわしく、洗練されています。
一方、アクセルペダルを深く踏み込めば、まわりを簡単に置き去りにできるほど、力強い加速が得られます。
しかも、大きなトルクを4輪でしっかり路面へ伝えるため、加速は常に安定しきっています。
そして今回、とくに感心したのが減速の滑らかさでした。
新開発の統合制御ユニット「Heart of Joy(ハート・オブ・ジョイ)」は、駆動やブレーキ、回生などをまとめて制御。BMWによれば、日常走行におけるブレーキングの98%を回生だけでまかなえるといいます。
Bレンジでは、強力な回生によるワンペダル感覚の走行が可能です。
一方、Dレンジでは回生の強さを調整でき、メニューで「アダプティブ」を選択すれば、先行車との距離などに応じて自動的に回生をコントロールしてくれます。
さらにブレーキペダルを使って止まるときも、停止直前に制動力を滑らかに調整する「ソフトストップ」が働きます。
ふわっと優しく止まってくれるので、同乗者から「運転がうまくなった?」といわれるかもしれません。
試乗車は255/40R21という大径タイヤを装着していたこともあり、低速では荒れた路面の感触をやや拾います。それでも低重心のBEVらしく車体の動きは落ち着いており、快適性は十分です。
そしてカーブを走れば、素直に向きを変えていくBMWらしい感覚も健在です。
新しい技術を満載していても、「駆けぬける歓び」というBMWの根っこの部分はきちんと残されていました。
航続距離906km! 15分の充電で約420km分をチャージ
新型iX3で見逃せないのが、BEVとしての実用性です。
新型iX3の一充電走行距離は、標準モデルの「iX3 50 xDrive」がWLTCモードで906km。今回試乗した21インチタイヤを標準装着するM Sportでも835kmを達成します。
さらにBMWのBEVとして初めて800Vアーキテクチャを採用しました。今後設置が予定される最大350kWのCHAdeMO式急速充電器を使った国内テストでは、15分でバッテリー残量10%から63%まで充電でき、約420km走行相当の電力を受け入れられたといいます。これならロングドライブ途中の充電も、休憩時間を利用して済ませられそうです。
iX3では、新しい「ハイウェイ・アシスト」も見どころのひとつです。
なかでも「レーン・チェンジ・アシスト」は、車両から車線変更を提案された際、ドライバーが車線変更する方向のドアミラーを見ると、その視線をカメラが検知し、周囲の安全を確認したうえで車線変更を支援するというものです。
さらに、ハードウェアとしては最高130km/hまでのハンズ・オフ機能に対応しており、日本の高速道路の最高速度120km/hをカバーします。

残念ながら試乗時点ではこのハンズ・オフ機能を試すことはできませんでしたが、2026年11月以降にOTA(Over-the-Air)によるソフトウェアアップデートで利用可能になる予定です。
日本の高速道路でのロングドライブでは、ドライバーの疲労を大きく減らしてくれそうです。
新しいデザイン、広い室内、906kmという航続距離、短時間での急速充電、そして最新の運転支援技術……。
iX3にはノイエ・クラッセの名にふさわしく、これからのBMWを示す新技術が数多く盛り込まれています。
一方で、実際にステアリングを握って印象に残ったのは、スムーズな加減速や素直なハンドリングといった、昔からBMWが大切にしてきた部分でした。
街乗りから長距離ドライブまでBEVならではの制約をあまり意識せずに使えて、それでいて運転そのものも楽しめる。
新型iX3は、電気自動車としての進化だけでなく、これからのBMWの方向性をわかりやすく示した一台といえるでしょう。
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今回試乗したiX3 50 xDrive M Sportの価格(消費税込、以下同)は1034万円です。このほか、「iX3 50 xDrive」の価格は982万円となっています。
Writer: 生方 聡
1964年生まれ。1992年、システムエンジニアから自動車誌「カーグラフィック」の記者に転身。現在はフリーのライターとして試乗記やレースレポートなどを執筆する一方、エディターとしてウェブサイトの運営などに携わる。愛車はVW ID.4とゴルフGTI。





































