日産「次期スカイライン」は爆速で登場!? 開発期間を「13〜20ヶ月」短縮! “もっと速く、安く、良い車”を届けるための戦略とは?

日産「次期スカイライン」は爆速で登場!? 開発期間を「13〜20ヶ月」短縮! “もっと速く、安く、良い車”を届けるための戦略とは?

激変する市場環境と日産が抱く強い危機感

 日産は、2026年7月30日、開発期間短期化の取り組みについてメディア説明会を行いました。

 現代の自動車産業は、かつてないほどのスピードで変化を続けています。電気自動車(EV)へのシフトや各国における環境規制の変更、補助金政策の動向、そして多様化する顧客ニーズなど、市場環境は目まぐるしく移り変わっています。

 このような不確実性の高い時代において、従来の長い開発期間は自動車メーカーにとって致命的なリスクとなりつつあります。

 新車の企画を立ち上げてから実際に市場へ投入するまでに膨大な時間を費やしてしまうと、いざ発売を迎えた時には、すでに消費者の求める機能やデザインのトレンドが過去のものになっているという事態に陥りかねないからです。

 日産もまた、こうしたリードタイムの長さがもたらす事業リスクの増大に直面していました。

 日産自動車 第一製品開発本部 執行職の山口一之氏は、開発の最前線における実情について「長い期間をかけて開発していると、車が世に出るのがずっと先になってしまい、ライフサイクルが長期化しすぎるという問題がありました」と語ります。

 加えて、業界構造の変化も日産の改革を力強く後押ししています。特に顕著なのが、中国市場における新興メーカーの台頭です。中国ではコロナ禍以降、新エネルギー車(NEV)の開発競争が激化しており、現地メーカーは圧倒的なスピードで新型車を次々と市場に投入しています。

 山口氏も「中国市場ではNEVの競争が非常に激しくなっており、そのスピード競争は今や海外市場にも波及しています」と語る通り、このスピード競争はもはや中国国内にとどまらず、グローバル市場全体における新たなスタンダードになろうとしています。

「PCS-T」について説明する日産自動車 第一製品開発本部 執行職の山口一之氏
「PCS-T」について説明する日産自動車 第一製品開発本部 執行職の山口一之氏

 さらに深刻なのは、こうして膨らんだコストの行き着く先です。長期にわたる開発で積み上がった費用は、企業側の努力だけで吸収しきれるものではありません。

 山口氏はこの点について、次のように指摘します。

「期間が長くかかり、作りが複雑になると、掛け算で様々なことをたくさんやらなければならなくなり、結果的にそれが開発費やコスト、人件費を含めて跳ね返ってきます。

 開発費が上がると最終的には部品コストが上がったり、お客様に届ける際のプライス(価格)が上がってしまう。こういうリスクが大きかったと思います」

 つまり、開発期間の長期化によって生じた余分なコストは、最終的に新車の販売価格に上乗せされ、購入者であるユーザーの負担になってしまうという構造的な問題が存在しているのです。

 最新の機能が搭載されたから高価になるだけでなく、作ること自体に時間がかかりすぎることも価格高騰の一因になり得るという切実な現実があります。

 こうした背景から、日産は抜本的な開発プロセスの見直しを決断したのです。

開発期間を“13〜20ヶ月短縮”する「PCS-T」とは

 急激な市場の変化に対応し、グローバルでの競争力を高めるため、日産は新たな開発の枠組みである「PCS-T(Product Creation System-Transformation)」を2024年度より立ち上げました。

 山口氏はこの取り組みについて「私たちがやりたいことは、より早く、より競争力のあるコストで、より魅力ある車をお客様にお届けすることです。この全体活動を総称して、PCS-Tとして全社で進めています」と説明します。

 このPCS-Tは、新車開発にかかる期間をかつての約50ヶ月から、一気に約13〜20ヶ月短縮することが可能です。

 具体的には、新たなプラットフォームやコア技術を導入するリードプロジェクトにおいては37ヶ月で開発を完了させ、それに続く派生車種などの後続プロジェクトにおいては、わずか30ヶ月で量産まで漕ぎ着けるという計画です。

 これを実現するために、日産は開発プロセスを大きくデジタルフェーズとフィジカルフェーズの2つに分け、それぞれにおいて徹底的な効率化と変革を推進しています。

 前半のデジタルフェーズは、車両の企画から設計構想、デジタルデータを用いた性能検証などを行う段階です。そして後半のフィジカルフェーズは、実際の試作車両を用いた性能検証や品質確認、生産工場でのトライアルを行う段階を指します。

 日産はこれら2つのフェーズにおいて、主に4つの具体的な施策を実行することで、劇的な期間短縮を実現しようとしています。

 これまでのやり方を単に急ぐのではなく、商品を生み出すための仕事のやり方や組織、さらには社内文化に至るまでを全社で変革していくというのが、PCS-Tの真髄と言えます。

デジタルフェーズにおける顧客視点の徹底と意思決定の迅速化

 開発期間短縮のための具体的な施策として、デジタルフェーズでは3つの大きな変革が行われています。

 第1の施策は、ユーザー視点に立った車両企画と目標値の設定です。これまでの日産は、他社の競合車を徹底的に調査し、すべての性能において他社を上回ることを目指す全方位型の目標設定を行う傾向がありました。

 しかし、すべての性能で勝とうとすると開発リソースが分散し、結果として車両重量が増加したり、コストが膨らんだりする悪循環に陥ることがありました。

 そこで新たな体制では、ユーザーの心に深く刺さるウリとなる部分を際立たせた目標性能設定へと転換しました。

 強みとするべき日産らしい性能を明確にし、そこにリソースを集中させる一方で、優先順位の低い部分は適正な水準を見極めることで、過剰な開発を防ぎ、結果として期間の短縮とコストの削減につなげています。

 第2の施策は、デザイン決定の前倒しとプロセスのシンプル化です。車のスタイリングは商品力を左右する重要な要素ですが、従来は複数のデザイン案を並行して長期にわたって検討していたため、開発に多くの時間を費やしていました。

 この問題を解決するため、日産は「ファミリーデザインルール」と呼ばれる新たな枠組みを適用しました。

 あらかじめブランドや車種群としての共通の方向性を定めておくことで、初期段階での方針決定を格段に早め、デザイン選定にかかる時間を大幅に圧縮して効率的に開発を進めることに成功しています。

 第3の施策は、プロジェクト責任者の明確化と意思決定の迅速化です。かつての開発現場では、プロジェクト全体を統括するプログラムダイレクター(PD)、個車の魅力に責任を持つ商品企画責任者(CPS)、そして収益と魅力を両立させる手段に責任を持つ開発責任者(CVE)の三者が、いわゆる三権分立のような形で存在していました。

 この体制は丁寧な合意形成ができる一方で、意見が対立した際の調整に時間がかかるという課題がありました。

 そこで日産は、この複雑な体制を改め、魅力と収益の責任を担う役割と、開発とものづくりの責任を担う役割に再編。

 責任の所在をはっきりさせることで、プロジェクトの簡素化によるリーンで迅速な意思決定を実現しています。

フィジカルフェーズの革新を支えるAIとデジタルツイン技術

 後半のフィジカルフェーズにおいては、第4の施策として最先端のデジタル技術を駆使した車両実験の効率化が進められています。車を実際に形にしてからテストを行うフィジカルフェーズは、手戻りが発生した際のタイムロスが最も大きくなる領域です。

 日産はここで、人工知能(AI)やデジタルトランスフォーメーション(DX)の技術を全面的に導入しました。

 例えば、作業性や操作性の評価には仮想現実(VR)を活用し、物理的なモックアップを作る前にデジタルの世界で入念な確認を行っています。

 また、実際の車両と全く同じ挙動をコンピューター上で再現するデジタルツインのモデルを構築し、実際の実験データとコンピューター解析を高度に連携させることで、テストの精度を飛躍的に向上させています。

 さらに注目したいのが、AIを使った評価計画作成から判定までの自動化です。

 これまでは人間のエンジニアがマニュアルでテスト設計を行い、テストケースを作成し、レポートをまとめていましたが、AIを活用することで、操作や条件のモデル化、テストケースの自動生成、そしてテスト結果の自動判定とレポート作成までを一気通貫で行えるようになりました。

 くわえて、実際の車両を用いた走行テストにおいても自動運転技術を応用しています。人間のドライバーではどうしても生じてしまう車速や加速度のばらつきを、自動制御によって排除することで、精度の高い実験を安定して行うことが可能になりました。

 また、昼夜を問わず連続して実験走行を行うことができるため、実験にかかる期間を劇的に圧縮しています。これにより、品質の精度を落すことなく、より信頼性の高いデータを短期間で取得できる体制が整いました。

「大部屋」方式がもたらすメリット

 働き方そのものの変革も行われています。その象徴的な取り組みが「大部屋化」です。

 従来は部署ごとに分かれて業務を行っていたため、ある部署が作成したデータや情報を別の部署に渡し、検討結果を待ってからフィードバックを受けるという、時間のかかる情報のキャッチボールが発生していました。

 そこで日産は、プロジェクトに関わる多くのメンバーを物理的にも同じ場所に集める「大部屋」方式を導入。現在は、設計・造形・企画・生産・購買のメンバーがメインになっているといいます。

 山口氏はこの大部屋化の効果について、「今までだとデータや情報を渡して相手の部署が検討するのを待ってやり取りをするようなキャッチボールが行われており、とても時間がかかっていました。それが大部屋でみんなが集まると一緒に話せるので、キャッチボールではなくみんなの輪の対話になるんです。それが非常に速く物事が決まる理由です」と説明します。

 問題が起きてもその場で集まって即座に解決策を導き出せるようになり、意思決定のスピードは劇的に向上しました。

※ ※ ※

 日産が全社を挙げて取り組む「PCS-T」は、すでに、新型日産「スカイライン」、新型日産グローバルCセグメントSUV、そして新型インフィニティコンパクトSUVへ適用されることが2025年5月に「経営再建計画 Re:Nissan」で公表されています。

 中でも注目されるのが、次期型スカイラインの位置づけです。日産を代表する伝統的なモデルであるスカイラインは、この新しい開発プロセスの有効性を実証するためのパイロットプロジェクトとして選ばれました。

 日産はスカイラインからこの革新的な手法を本格的に導入し、今後登場する新しいクルマはすべてこの新体制の下で開発を行っていく方針です。

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Writer: くるまのニュース編集部

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