シビック、ハイラックス、日本復活から1年… 一度消えたクルマが復活する理由とは
復活を望む声に応え、トヨタも13年ぶりにハイラックスを復活
トヨタのピックアップトラックとなる「ハイラックス」も復活しました。「ハイラックス」は1968年に初代モデルを発売して、3代目から5代目の4WD仕様は、悪路向けのオフロードSUVがブームだったこともあって好調に売れました。
ところが2004年に発売される7代目は、ボディを大幅に拡大することになり、6代目で国内販売を終えています。
それが13年後の2017年になり、タイ製の8代目を輸入して国内販売を開始しました。ボディタイプは後席を備えたダブルキャブの4WD仕様で、全長は5335mm、全幅は1855mmと大柄です。最小回転半径も6.4mに達するので小回りも利きません。
「ハイラックス」の開発者に輸入開始の理由を尋ねると「『ハイラックス』は7代目で(海外向けになって)ボディを拡大したため、売れ筋の4ナンバーサイズに収まらず、生産を終えています。しかし今でも国内で約9000台の『ハイラックス』が保有され、復活を望むお客様もおられます。そこで輸入を開始しました。
ちなみに復活の要望は2007年頃からあり、社内的なトライをしてきましたが、(リーマンショックの影響などもあって)なかなか実現しませんでした。今回は3回目の検討になり、ようやく輸入が可能になりました」とコメントしています。
ホンダとトヨタの開発者と話をして、メーカー内部での葛藤が見えてきました。現行「シビック/CR-V/ハイラックス」の商品開発は、基本的に海外向けに行われ、日本は対象外です。それでも開発者の中には日本で売りたい思いがあり、復活したことになります。
それでも商品開発は海外専用として行われ、日本向けの商品ではありません。その意味でメーカーのやっていることは、中途半端にも感じられます。国内で一度廃止したクルマを復活させることについて、販売店ではどのように見ているのでしょうか。
ホンダ車を販売しているホンダカーズ(ホンダのディーラー)で尋ねると、「今まで販売してきた車種を廃止すると、そのクルマを使うお客様は、ガッカリすることが多いです。自分のクルマを見捨てられた気がして、不愉快になるのは当然でしょう。別のメーカーのクルマに乗り替えるなど、お客様との関係が途絶えることもあります。そうなると後になって復活させても、以前のように売れ行きが順調に伸びるとは限りません」といいます。
クルマは、運転するとユーザーとの間に一体感が生まれる商品でもあり、愛情を移入しやすい工業製品です。そうなると今まで購入できた車種が海外専用になり、日本で買えなくなった場合、ユーザーには過度な不快感を与えるなど情緒的な悪影響も生じます。自社製品を購入した大切なユーザーを悲しませないためにも、生産と販売を終えずに済むよう、最大限度の努力をすべきです。
それでもなお販売を終えるなら、簡単には再販しない覚悟が必要なのかもしれません。
【了】
Writer: 渡辺陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。