自動運転中の事故は誰の責任? 完全自動運転の実現までに越えなければならないハードルとは
自動運転「レベル3」の壁
自動ブレーキやACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)が搭載されているクルマが該当する、「レベル1からレベル2」は、運転支援機能という意味合いが強いです。
その上の「レベル3」以上は、システムが運転を肩代わりするので、実際に普及するとなるとさまざまな問題が生じます。とくに、『自動運転による事故は誰の責任になるのか』という問題をはじめとする議論は、国連で行なわれる国際基準の制定や、自動運転車の認証などの事案について日本が主導する形で進めています。
運転支援機能がメインとなる「レベル1」と「レベル2」の自動運転であれば、万が一の事故の際には運転者が責任を負うというのは自然です。しかし、「レベル3」以上で、運転をシステムに任せた上で事故が起きてしまった場合、運転者が『運転』しているのかが争点になります。
自動運転のシステムの提供者(自動車メーカー)が、責任を追うべきという考え方もありますが、あらゆるシチュエーションが想定される自動車という乗り物について、自動車メーカーがすべて責任を負うというのは難しく、また仮にそうなってしまうとリスクが多すぎて自動車メーカーが自動運転車両を開発するメリットが少なくなります。
現在の大きな方向性としては、これまで『運転者』として捉えていたものを、『遠隔管理者』として捉え直すという考え方となりつつあります。
完全自動運転車両における『運転者』は、必ずしも運転席に座っておらず、場合によっては自動車以外の場所にいることも踏まえると、『遠隔管理者』という表現で管理責任を問うということです。
この考え方は、現状の自動車と運転者の関係と同様であり、一見わかりやすいように見えます。しかし、この『遠隔管理者』には運転免許が必要なのか、『遠隔管理』とは具体的にどのような行為なのか、不透明な部分が多くまだまだ議論の余地があります。
今後、責任の所存や関連する法律が明確にならなければ、自動運転をはじめとする新技術の発達はありません。実際に、自動車を運転するユーザー自身も『自動運転』に対する正しい認識を持つことが重要といえます。
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