広瀬すず、ももクロ、吉岡里帆… なぜ軽自動車のCMには多くの芸能人が出演している?
クルマを宣伝するには、貴重な存在の「テレビCM」
自動車のテレビCM、とくに軽自動車のCMにはどんな特徴があるのでしょうか。テレビCMなどを多く手がける 大手広告代理店の社員に話を伺いました。
――テレビCMを放送する意義はなんですか。
人が何かを購入する場合、『興味関心』『情報収集』『比較検討』などいくつかのステップを踏んだ上で『購入』するのが普通です。お菓子や飲み物などと比べて販売価格の高いクルマの購入では、それぞれのステップがより丁寧かつ慎重になりますが、まずは商品に対して興味関心を持ってもらうということの重要性は変わりません。
この、『興味関心』のステップでテレビCMには大きな効果があるのです。テレビがない家庭も増えているとはいえ、テレビは家の中で目と耳に訴えかけられる貴重な存在です。ここで『興味関心』を惹いておき、次の『情報収集』や『比較検討』のステップで、ウェブサイトなどが活用されます。
――軽自動車のテレビCMにはどんな特徴がありますか。
クルマには、「生活必需品」と「嗜好品」の2つの側面があります。軽自動車やミニバンは前者で、スポーツカーや輸入車などは後者といえます。とくに、地方の人にとってクルマは生活必需品なので、興味がなくても購入する機会が訪れます。半ば強制的に『興味関心』を持たされるというわけです。
クルマに興味のある人なら、どんなエンジンを積んでいるとか、どんなスペックを持っているかとか、クルマそのものの魅力を伝えたほうが『興味関心』を惹きやすいです。「生活必需品」としての軽自動車の場合はそういったことよりも、“なんとなく名前を聞いたことがある”、“あの芸能人がCMに出ていた”というほうが効果的なのです。
例えば、ダイハツ「ウェイク」のCMでは“ウェイクだよ!”と、連呼しているのも、15秒や30秒という限られた時間で強い印象を与えるひとつの手法です。
――軽自動車のテレビCMに出演する芸能人はどんな人が多いのでしょうか。
軽自動車のターゲットは、初めてクルマを購入する若い人や主婦が多いので、そうしたユーザー層に人気の芸能人を起用することが多いです。そのとき話題の芸能人はもちろん、ターゲット層に強く刺さる人やキャラクターを起用します。
顕著な例として、スズキ「ワゴンR」のCMでは、広瀬すずさんが運転免許を持っていない女の子の設定で登場します。免許を持っていない広瀬すずさんが、街で「ワゴンR」に一目惚れして、免許より先にクルマの購入を考えるという内容です。
放映開始当初、広瀬すずさんは18歳でした。地方では、免許の取得と同時にクルマを購入することも多く、18歳になって免許を取得し、初めてクルマを購入する人を想定して作られています。同世代に対する広瀬すずさん自身の人気もさることながら、ターゲット層に共感を与えられることも重要なポイントです。
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実際の購入プロセスは、もっと複雑なので、“CMを見たからクルマを買った”というように単純なものではありません。
しかし、クルマを購入するプロセスの始まりにテレビCMの存在は欠かせません。印象的な内容で『興味関心』を惹き、なおかつ共感を与えられることがクルマのテレビCMでは重要といえます。
【了】