「ヤリス」と「アクア」がまとう唯一無二のデザイン トヨタの“アートラリーカー”はどのようにして誕生したのか? ヘラルボニーとタッグで挑む“単なる支援にとどまらない”新たなモビリティの形【PR】
広島県で開催されたラリーレースで、障害のある作家のアート作品を鮮やかにまとった2台のトヨタ車が注目を集めました。福祉を起点に新たな文化を創出する「ヘラルボニー」との共創で誕生したこのラリーカー。単なる支援にとどまらず、アートの力でモビリティの価値を高め、作家に「移動の機会」を提供するトヨタの想いと、その取り組みの裏側に迫ります。
魂がこもったアート 作品をきっかけに広がる世界
そんなラリーチャレンジ安芸高田で出走した2台のアートラリーカーにラッピングされているのは、どのような作品なのでしょうか。
今回お披露目となったのが2026年の受賞作、Yuinaさんの『無題』をモチーフとした146号車です。色とりどりの糸が繊細なバランスで刺繍された、91.7cm×124.6cmという大きな刺し子の作品。その表現がトヨタの源流である自動織機と通じ、「運命を感じた」と木全氏は話します。
制作のきっかけは3年ほど前に施設でスタートした自立支援の縫製作業でした。始めは端から端まで一定のやり方で布を縫うというものでしたが、ある日、本人が自由に縫ってみたタイミングがあり、そこから制約なく取り組んでもらうことで色々な作品ができるようになったといいます。
Yuinaさんのお母さんは「私の中ではアートという発想は全くなかったのですが、現場でその姿を見て、施設の方が『これちょっとアートじゃない!』ということで、(アートプライズに)出してみませんかと誘ってくださったのが始まりです」といいます。
「本当に初めての作品応募だったので、力試しのつもりでしたし、それによってどういう影響があるのかも全然わかりませんでした。どこまで評価されるのかな、くらいの軽い気持ちで。結果の連絡を受けてからみんなパニックです(笑) すごくちゃんとした賞だったのでびっくりしました」
「ラリーのことは全然知らなかったので、勉強してきました」というお母さん。実車を見て、「やっぱりかわいい感じになったなぁと。他にないという印象を受けました。驚いたのは、縫ったときの布の感じがプリントで失われることなく、作っていただけているところ。表現力がすごいですね。色々考えて作っていただいたんだな、というのがわかりました」といいます。
「(作品が)クルマにラッピングしてもらえるという発想も、私たちにはありませんでした。色々な企業さん、色々なデザインがあって、そういうところに障害者アートが採用されて、それが広がっていく。皆さんに触れてもらう機会がある。受賞をきっかけに、新しい経験をすることができました」と話してくれました。
Yuinaさんが通う施設のスタッフさんも「毎日Yuinaさんが作業する姿を見ているので、感動して大泣きしてしまいました。特に他のクルマにはないような色合いや質感が出ているなと思います。決して派手ではないですけど、ラリーカーとしてはまずないデザインですし目を引きますね」と感想を語ります。
施設のプログラムで1日2、3時間は作業を行うというYuinaさんは、とにかく刺し子が好きで、スタッフさんがあえて休憩時間を作らないといけないほど集中して取り組んでいるのだそうです。
「彼女はアートに関して天才で、絵もすごく上手だし、色が好きで使い方も素晴らしいんです。こちらが想像できないような作品を生み出すことが多いので、これからもたくさんの体験をして、彼女のインスピレーションが育っていったら、絶対にもっと新しい表現が出てくると思います」とスタッフさんは、今後に期待を寄せます。
もう一台の134号車は、2025年の受賞作、古城貴博さんの『はばたく』がラッピングされ2025年シーズンにデビューしました。
この作品は水性マーカーの「ポスカ」を用い、ペンを細かく動かしながらフリーハンドで描かれています。暖色系の力強い色使いと広がりをイメージさせるラインの表現が特徴的。古城さんのお母さんは、「下書きがないので最後の最後まで何が出てくるかわからない。なので、『はばたく』を描き終えて、鳥の絵がバッと浮かんで見えたときにはみんなで驚きました」といいます。
絵を描き始めたのは6年ほど前。たまたま作業所に絵画のレクリエーションが入り、古城さんの絵がインストラクターの目にとまったのだそうです。
それをきっかけに、「おおいた障がい者芸術文化支援センター」のオープンアトリエを紹介され絵の指導を受けたという古城さん。その後、センター長の吐合紀子さんから、公募展への応募をすすめられたといいます。HERALBONY Art Prizeもその一つでした。
実車を見ての感想は、「どのラインが生かされて、どういうふうに見えるかというのをすごく考えて作ってくださっていたので、走っている姿を見た時はもう感無量でした」とのこと。
「息子もあのクルマを見たときは毎回笑うんです。毎回、毎回、本当に嬉しそうなんです。ラリーのときや、先日は名古屋のミッドランドスクエアでの展示もありましたけど、いつもニコニコしています。
絵を通して色々な人たちとコミュニケーションができるというのが、嬉しいですよね。どうしても閉じこもりがちになって、社会が狭くなってしまうところを、このような形で導いてくださっているので、ヘラルボニーさんとトヨタさんには感謝しかありません」
古城さんは毎日描き続けられること、そこで自分が認めてもらえるということにやりがいを感じているようだとお母さんはいいます。
「息子がご機嫌に描ける環境を家族で作っていきたいですし、これからも作品をたくさんの人に見ていただきたい。
私たちみたいにハンディがある子供がいても、思いもかけない世界が開ける瞬間があるので、多くの人に諦めないでほしいというか、ずっと寄り添ってもらいたいなと思っています」
可能性を自分たちで狭める必要はない、そんなメッセージを送ってくれました。
![]() |
![]() |
|---|---|
作品の良さを失わないように…試行錯誤のラッピングデザイン
どちらの作家のお母さんも、元の作品の魅力を失うことなくラリーカーに落とし込まれていることに感動していましたが、それを実現したのが、クルマ開発センター VC開発部 車種企画室 デザイン グループ長の佐藤健一氏です。
作品そのものはクルマにラッピングすることを想定したデザインではありません。あくまでもアート作品として、ラリーカーや用品に反映したときのビジョンは全くない状態で賞の選出を行います。
「作品から最初に受けたインスピレーションや良さをしっかり考えた上で、それがスポイルされないようにしたいとはいつも思っています。また、やはりその作家さんがどういう想いで作られているかだとか、その作家さんと移動やモビリティとの関係ってどうなんだろう? というところも、少し勘案しながらやっています」
Yuinaさんの『無題』については、縫った糸の印象がどこまで表現できるか、プリントの仕方で元々の作品が持っている緻密さが失われないか、ということに気を付けたといいます。また、車両そのものの独特なデザインとのマッチング、シンクロしているかにも注力。
「そもそもがラリーに出場する車なのでカッコよく速くとか、そういう元々のスポーティーなイメージは保ちながら、作品が一緒に見られるように、というのをいつもテーマにしています。
作家さんはコミュニケーションがなかなかうまく取れないという人がほとんどですので、『一番気に入っている部分はここ』と具体的に教えてもらえるわけではないですし、それを僕らがラッピングという行為で潰してしまったり切り取ってしまうことがないようにと、すごく気を遣っています」

クルマの外観は左右対称に作られているため、どちらか半面は作品を反転させてラッピングすることになります。作家が一方向から向き合って作り上げたものを反転したときにどういった印象を持たれるのか、こういうことはやってはいけないのではないか、そのような考えも浮かぶなかでチャレンジを続けてきました。
試行錯誤を続けながら、3台のアートラリーカーを作り上げてきた佐藤氏は「作家さんにはクルマを見て喜んでいただけているので、結果的に上手くできているのかなと思っています」と笑顔を見せます。
古城さんの『はばたく』については、ヤリスが元々もつ特徴的な線と、作品の線や色合いがうまくシンクロするように配置や切り替えを行っています。例えばリアコンビネーションランプから続く端末の線は、作品の中から同じような線を見出してマッチさせました。
また、「細かいところと大きいところの対比が羽ばたくイメージを表現しているので、うまく両方入るようにしたい。切り取る場所はすごく難しいですね。作品の見どころが欠けてしまわないよう、スタイリングには気を遣っている」そうです。



















































