今なぜPHEVなのか? BEV/HEV/FCVと選択肢がある中で三菱がプラグインハイブリッドに拘る理由とは【PR】
EV・パワートレイン先行開発部担当部長の半田さんにインタビューを実施
後半は、半田さんへ一問一答式で、アウトランダーPHEVに関連して三菱の電動化に対する考えをズバリ聞いてみました。
●アウトランダーPHEVのテレビCMで、三菱自動車の得意分野である、SUV(パジェロ)、四駆制御(ランエボ)、そして電動化(i-MiEV)が進化していくCGが実に迫力があります。そうした中で、四駆制御で三菱自動車の特長とはどこにありますか?
「四輪駆動ありきではなく、あくまでも四つのタイヤの性能を使い切ることを最優先にしている点です。
例えば、モーターでは(左右方向の)ヨーコントロールや、(前後の縦方向の)ピッチコントロールができます。ですが、四輪それぞれの接地を上手く使い切れば、結果的にピッチなどが収まるという考え方です。これは、(三菱自動車として)開発の思想です。その上で、前後トルク配分やブレーキAYCなどを有効に使います。
(その上で)お客様には、大きいクルマなのに軽いよね、速いよね、小さく感じるよねといった、町中での走りで実感して欲しいのです。」
●EVではモーターによる走りのフィードバックが、ドライバーに対してダイレクト感が強過ぎると、かえってドライバーにとって走りのリニア感が捉えられないとも言われます。
ここをどういう視点でチューニングしているのですか?
「人の感性を数値化することは難しいと思います。例えば、ハンドルの操舵角とヨー(変化)の値を見て前後輪のトルク配分に落とし込むのですが…。どのパラメーターがドライバーのどの感覚に効いてくるのか、知見として蓄積しています。」
アウトランダーPHEVをシリーズハイブリッドにした意図とは?
●では、1964年のミニカバンEVを基点とするこれまでの電動化の流れが、アウトランダーPHEVにどう繋がっていると表現するのが正しいのでしょうか?
「そうですね…、私は入社時から電動化を担当していましたが、70年代は排ガス規制が主な目的で鉛バッテリーを車内いっぱいに搭載しました。その後、バッテリーを革新させるべきという観点から、当時注目されていたニッケル水素電池から一歩先んじたリチウムイオン電池についてFTOで実験を進めました。
そうした実績を経たうえ、永久磁石を使ったモーターや軽量で高性能なバッテリーが登場したことで、BEV本来の良さが際立ち、i-MiEVへ、そしてアウトランダーPHEVへと技術が受け継がれていったと思います。」
●アウトランダーPHEVは欧州系PHEVと比べると、エンジンを発電機として使うシリーズハイブリッドが特長ですが、その点の拘りとは?
「EVの良さを、大きなクルマでも活かしていきたい。そう思って、発進時の力強さ、そこから伸びやかで滑らかな加速感をとても大切してきました。それがエンジンをかけるハイブリッド状態になると、パラレルハイブリッドではエンジンでトランスミッションを介した普通のクルマの走りとなります。そこにEVとの変曲点が生まれてしまいます。
三菱自動車としては、エンジンがかかってもEVの走りをずっと続けていることを優先し、シリーズハイブリッドの技術を追及してきました。ハードなドライブでの限界領域ではなく、町中でEVらしさをずっと体感して頂きたいと思っています。」
三菱が導いた答えは、実績と知識、そして社会情勢を見据えたものだった
●最後に、PHEVってどうなの、と聞かれたらどう答えますか?
「現時点では、現実的なEVの解がPHEVだと思います。例えば、BEVの場合、航続距離の解釈に課題が残ります。気温25度程度での走行モードで航続距離を測定していますが、外気温やヒーターやエアコンの使用によって航続距離は変わります。
i-MiEV量産時には、様々な走行条件で航続距離がかなり変わることを資料にして販売店からユーザーにしっかり説明していました。BEVでは今後も、走行性能についてリアルワールドでの情報開示が不可欠だと考えています。」
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三菱自動車が、今なぜPHEVに拘るのか? そこには、BEVを含めた多様な電動車の研究開発とグローバルの社会情勢を踏まえた実績と知見による、しっかりとした裏打ちがあることが分かりました。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。