「YZF-R1」歴代モデルのプロジェクトリーダー集結 開発秘話を披露
サーキット最速を目指せば一般道でも乗りやすくなる
司会:そしていよいよ2015年に現行モデルが登場。大きな話題になりました。
2015年PL藤原英樹さん:クロスプレーン化された2009年モデルと2015年の現行モデルの間には実に6年の歳月があり、その間にスーパースポーツ界は大きく変わりました。国産メーカーに加えてBMWやドゥカティ、アプリリアといったヨーロッパ勢が台頭してきましたから、その中でどうしても勝ちたかったんです。しかもわかりやすくサーキットで勝とうと。
ただし、歴代のYZF-R1は「セカンダリー・ロード最速」を謳ってきました。これは「いかにワインディングで楽しいか」と言い換えてもよく、ラップタイムありきのサーキットとは本来方向性が異なります。その整合性に悩みましたが、そういう意識を変える出来事があったんです。
司会:といいますと?
2015年PL藤原英樹さん:実は開発に際して技術者を集め、YZR-M1に乗る機会を作ってもらいました。とてもじゃないけれど普通のライダーの手には負えない。そんな風に思っていたのに「このままツーリングに行ける」と言い出す者がいたほど、それは扱いやすかった。それがきっかけになり、最新の技術でサーキット最速を目指すとおのずと乗りやすいバイクになり、結果的に「セカンダリー・ロード最速」というコンセプトも守れると確信しました。それが分かると、あとはやりやすかったですね。迷った時はラップタイムがよくなる方を選べばよく、ブレることなく突き進めたというわけです。
司会:サーキット最速を狙った現行のYZF-R1はデビューイヤーから鈴鹿8耐を3連覇(2015~2017年)。全日本ロードレース選手権でも2年連続(2015~2016年)でタイトルを獲得し、世界スーパーバイク選手権でも優勝を果たすなど絶好調ですが、今年はいかがでしょう?
2018年PL平野啓典さん:「サーキットで勝つ」というシンプルな目標はプレッシャーですが、強力な後ろ盾にもなっています。ライバルのメーカーとのガチンコ対決を制し、特に鈴鹿8耐では4連覇をしてくれると信じています。
司会:最後に、初代PLの三輪さんから現行PLの平野さんにエールをお願いします。
1998年・2000年PL三輪邦彦さん:常に頭にないといけないのは「突き抜けるとは一体どういうことか?」ということです。目の前にある技術の延長線上で「ここを改良したらこうなる」なんて考えているようではダメ。なによりもまず「こんなコトができたらスゲェ!」という理想が先にあり、そのためには「スゲェって一体なんだ?」という思いをしっかり持っていることでしょうね。強い意志と同時に「ホントにこれでいいのか?」という疑問を持ち続け、人を動かしていく。それがPLの資質だと思います。
2018年PL平野啓典さん:とても重たい言葉ですが、まだまだできることがあると自覚していますので次期モデルにつなげていきたいと思います。他のメーカーがスーパースポーツを止めてもヤマハだけは作り続ける。そういう思いでやっていきますので、これからのYZF-R1にもご期待ください。
【了】