ニスモが手掛けた日産「リーフNISMO」、EVの走りにさらなる可能性も
コンピューターチューンで全く別物のクルマに
ではなぜ、ノーマルよりも力強くアクセルに対する反応が早いかといえば、VCM(ヴィークル・コントロール・モジュール)と呼ばれる制御用コンピューターをチューニングしているからです。
電気自動車の場合、モーターが同じ出力、バッテリーが同じ容量だったとしても、それをどのように出力してどのように使うかを制御用コンピューターで自在セッティングすることができます。そしてこれは内燃機関を制御するのとは比べものにならないほど、幅広くきめ細やかにチューニングすることが可能となっています。
そこでリーフ・ニスモでは、通常の走行で使うノーマルモードでのDレンジを、ニスモ専用の力強い加速を実現するモードになるようチューニングを施しました。加えて回生ブレーキを多く使うBレンジがありますが、ここではさらに力強い加速と素早い加減速の応答を作り込んだモードへと専用のチューニングを施しています。
これにより特にBレンジでは、アクセルを踏み込むと相当に俊敏な加速レスポンスを実現し、一方でアクセルを離すとより素早く減速になるような味付けになっています。
さらに車台では、足まわりを構成するサスペンションのパーツが専用チューニングとなっており、こちらでもノーマルモデルよりも高い操縦安定性と乗り心地を両立しています。これはサスペンションを構成する、ショックアブソーバーというパーツをチューニングすることに始まり、専用デザインで空力性能も向上するアルミホイールの採用。そして装着されるタイヤを18インチのコンチネンタル・スポーツコンタクト5に変更するなど多岐に渡ります。
この結果、乗り心地はスポーツモデルらしいハードなフィーリングが生まれていますが、高速域で姿勢をしっかりと安定させるフラットな乗り味が作り込まれており、どこまでも突き進む感触を手に入れることができました。
そしてコーナリングでも、ノーマルよりもさらに高い旋回性能を手に入れており、もともとのリーフの低重心がゆえの安定感の高さと相まって、カーブを曲がる際にはかなり踏ん張りがきくようになっています。
そして上記のようなハードウェア的なチューニングを施すだけではなく、車速感応式電動パワーステアリング、電動型制御ブレーキ、インテリジェントトレースコントロールといった制御を行うソフトウェアに関しても専用のチューニングを施しているのです。
実際に試乗した際に、リーフ・ニスモはモーターとバッテリーがノーマルと同じにも関わらず、まるで別物といえる走りの印象を生み出すのはこうした変更によるものなのです。
この技術を応用すれば、様々なドライバーが運転することを想定した際に、ドライバーによって異なる操作の精度や曖昧さを、クルマ側でもっと積極的にフォローして、誰もが安心して安全に走れる、人に優しいドライビング環境が構築できそうです。
その意味では、リーフ・ニスモは新たな電気自動車のスポーツグレードにとどまらず、電気自動車の走りにおけるさらなる可能性を感じさせる1台でした。
【了】