トヨタがクルマをスマホ化? 「繋がる機能」はユーザーの心をつかむのか

今の自動車業界のキーワードは「CASE」だといわれます。Connected(接続/通信)、Autonomous(自動運転)、Shared(共有)、Electric(電動)が、互いに関連性を持ちながら進化しています。これらの中で実際の使い勝手やメリットをイメージしにくいのが、接続/通信のコネクティッド、いわゆる「繋がる機能」ではないでしょうか。

現状のコネクティッドはあくまで”器”ができた段階

 コネクティッドの現状は、あくまで基本的なシステムを確立させた段階でしょう。器はできましたが、その中身、コンテンツはまだ足りていません。トヨタのコネクティッドの発表会には、ベンチャービジネスの関係者も多く参加しており、トヨタ側が協調を呼びかける場面もありました。コネクティッドの中身は、社外のベンチャービジネスも巻き込んで、今後充実させるわけです。

トヨタ 新型カローラスポーツのモニターに表示されたコネクティッド機能

 それは自動車メーカーが、車両の開発、製造、販売、点検などにとどまらず、人やモノの移動全体にビジネスを拡大することも意味しています。今後の過当競争の中で、自動車メーカーが生き残るための多角化ともいえるでしょう。

 言い換えれば、これから魅力的なコンテンツを作っていかないと、何も始まりません。「コネクティッドが充実しているから、インプレッサスポーツやアクセラスポーツではなく、カローラスポーツを選ぶ」という話にもなりません。

 魅力的なコンテンツをそろえるには、トヨタに限らず、自動車メーカーのアイデアだけでは足りないでしょう。社外との提携が不可欠です。そしてコネクティッドにさまざまなソフトウェアのメニューが用意され、ユーザーが必要なコンテンツをダウンロードするという、スマートフォンに似た状態に至ります。

 アイデアの実現は早い者勝ちですから、コネクティッドには、スピードを要するビジネスチャンスが数多くあります。

 このあたりを販売会社ではどのように見ているのでしょうか。トヨタ店のセールスマンに尋ねると、「クラウンのお客様は、60歳以上の方が多いです。スマートフォンやメールのようなコミュニケーションツールの使われ方はさまざまで、LINEやFacebookを積極的に活用する人から、メールなどをまったくやらない人までおられます。機器の進歩に付いて行けないお客様がいるのも事実でしょう。

 コネクティッドのニーズは、お客様によってバラバラです。その意味でオペレーターのサービスは、メリットが大きいと思います。カーナビの目的地設定など、基本的な操作まで対応してくれるので、コネクティッドを使う難易度が大幅に下がります。そして3年間は無料、その後も定額制なので、何回でも気兼ねなくオペレーターサービスを使えます。この使用頻度も、お客様によって大きく異なるでしょう。繋がりにくいと問題なので、オペレーターの人数は十分にそろえて欲しいです」と言います。

 クルマの進歩によって走行性能や燃費が均質化すると、やがて装備で選ばれるようになります。ミニバンや背の高い軽自動車のシートアレンジなどもそのひとつですが、コネクティッドの守備範囲は広く、安全性にまでおよびます。

 走行性能や乗り心地といった基本性能を確実に進化させ、車両開発が本末転倒にならないようにしながら、コネクティッドを充実させて欲しいものです。

【了】

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Writer: 渡辺陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。

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