ベンツ、BMWなど独勢は好調! 国産車は苦戦も輸入車の販売が伸びている理由とは

国産セダンが目指すところは輸入車に奪われた市場を取り戻すこと

 国産Lサイズセダンの開発者に話を聞くと、「最近は国産Lサイズセダンの売れ行きが下がり、メルセデス・ベンツやBMWなどの輸入車が増えています。以前は国産車が販売面で同クラスの輸入車に負けることはなかったですが、今は状況が変わりました。従って今の国産セダンに求められるのは、輸入車に奪われたセダン市場を取り戻すことです」といいます。

レクサス 新型ES(日本導入予定車)

 かつて国産セダンには、1.5リッターエンジンを中心に搭載する5ナンバー車が多かったですが、今は4車種だけです。それ以外はすべて3ナンバー車で、大半が海外向けに開発されました。

 その結果、価格が300万円を超える上級セダンで堅調に売れるのは、トヨタ クラウン程度になり、ほかはすべて低調です。トヨタが展開する上級ブランドのレクサスには、セダンが豊富に用意されますが、ミドルサイズのISでも登録台数は1か月平均で350台前後です。クラウンの14%前後にとどまります。

 日産スカイラインは、かつて高い人気を誇り、1973年には「ケンメリ」の愛称で親しまれた4代目の1か月平均登録台数は1万3133台に達しました。2017年の日産ノートを上まわり、小型/普通車で販売1位のプリウスに迫る販売実績です。またノートは2018年上半期で、48年ぶりに小型/普通車の販売1位になりましたが、この1か月平均(1万2230台)よりも45年前のスカイラインは多く売れていました。2017年のスカイラインは1か月平均で243台ですから、当時は今の54倍も売れていた大人気車です。

 スカイラインに限らず、ホンダではアコードの売れ行きが下がり、シビックは一時的に販売を中止しました。マツダ アテンザ、スバル レガシィも低調です。このように国産上級セダンは、デザインや車両の持ち味、ボディサイズなどが日本のユーザーから離れて沈んでいきました。そこに欧州車が入り込んだのです。

 しかもレクサスなど今の国産上級セダンの特徴は、メルセデス・ベンツやBMWに似ています。欧州車風の国産車に魅力はなく、誰でも本家本元の欧州セダンを選んでいるのです。

 国産セダンが以前から国内市場をもっと大切にしていれば、今ごろは世界に通用する日本独自の上級セダンが育っていたかも知れません。海外に目を向けた結果、国産セダンの良さまで失われたのは残念です。

 その意味ではクラウンの役割が従来以上に大切になりました。ただし2018年6月26日に発売された新型は、走行性能、安全装備、通信機能などが大幅に向上した半面、欧州車とは違う「純日本的なクラウンらしさ」は薄れました。

 走行性能を向上させ、デザイン面でユーザーの若返りをねらった結果、持ち味が欧州車に近づいたのです。これではユーザーがメルセデス・ベンツなどに逃げてしまうかも知れません。若いユーザーを獲得しながら、今後のクラウンがいかに国産らしさを取り戻せるか。それは国産セダン市場全体の行方を左右する重要な商品開発になるでしょう。

 「国産 VS 欧州車」のセダン競争が激しくなれば、改めてセダンが注目されて活性化する可能性があります。逆に競争すら成立しなければ、国内市場では、軽自動車/コンパクトカー/ミニバンの販売比率がさらに増えることになります。今の日本でセダンはマイナーな存在になりつつありますが、クルマの楽しさや趣味性で選ばれる傾向は依然として強く、それゆえに欧州車が伸びているのです。

【了】

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Writer: 渡辺陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。

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