浸水・冠水車、乾けばまた乗れる? マフラーに水が入っていたらエンジン始動はNG
エンジンルームまで水に浸かった車は、廃車しかない?
ところで、エンジンルームまでが水に浸かった車はその後、どう扱うべきでしょうか。廃車買取の専門業者「廃車王」に聞いてみました。
――浸水した車を再び使うことは可能ですか?
どこまで浸水したか? がポイントです。室内に水が入っていたらほぼアウトですが、状況によってはクリーニングやパーツ交換、エンジン修理などで乗り続ける方もいらっしゃいます。ですが、ほとんどの場合、水没車は廃車にした方が良いケースがほとんどです。
――水没車は買取の世界ではどのような扱いになりますか?
水没車は『冠水歴車(浸水車・水被害車)』という扱いで、自動車保険でいうと、ほぼ『全損』扱いになります。下取り時には修復歴車よりも嫌われる傾向にあります。外見に損傷が出にくいため、修理個所の判別が難しいという見方もあります。また、被った水が淡水であれば洗浄して使えるものもありますが、海水の場合は部品の再利用すら難しくなるので、新しい車であっても査定額に期待はできないでしょう。
――水没車の修理は難しいのですか?
エンジンまで水が入ると修理代にも大変なコストがかかります。さらに、ダメージが大きいのは室内の悪臭です。川の水や下水、泥水などが混じって強烈な悪臭となる場合も多く、水が乾いてルームクリーニングと消臭作業を繰り返しても、なかなか完全には抜けないということも多々あります。場合によってはエンジンの修理よりも悪臭除去の方が高額になるケースもあります。
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なお、近年急増しているハイブリッド車、電気自動車などの電動車は冠水や衝突事故などを想定した厳しいテストを行い、水没しても感電しないために万全の対策を講じています。自動車アセスメントでおなじみのNASVA(独立行政法人 自動車事故対策機構)においても、試験項目に「電気自動車等の衝突時における感電保護性能試験」の内容を追加してハイブリッド車や電気自動車等を評価しています。
さらに、トヨタ自動車、日産自動車では安全設計に加えて、「レスキュー時の取扱い」として公式サイト上に一般公開しており、事故車を取扱う際の注意事項を明記しています。
ちなみに日産自動車は「静止状態で浸水、冠水という状況であればガソリン車と同じ扱いで問題ありません。車両に強い衝撃を受けたり、事故で衝突したりで、バッテリーに損傷を受けた場合(中身が露出するなど)には注意が必要です」とのことです。
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Writer: 加藤久美子
山口県生まれ。学生時代は某トヨタディーラーで納車引取のバイトに明け暮れ運転技術と洗車技術を磨く。日刊自動車新聞社に入社後は自動車年鑑、輸入車ガイドブックなどの編集に携わる。その後フリーランスへ。公認チャイルドシート指導員として、車と子供の安全に関する啓発活動も行う。