なぜ「SUV」が世の中に増えた? 今や「車といえばセダン!」は過去のもの… 人気の理由はどこにあるのか 「ユーザー」「メーカー」それぞれがSUVを選ぶ理由とは
クルマといえばかつてはセダンが一般的でしたが、なぜ今ではSUVが人気なのでしょうか。ユーザー視点、メーカー視点でそれぞれ考えてみました。
SUVは「運転しやすく作りやすいクルマ」
現在世界的に人気なクルマのジャンルと言えば「SUV」です。一般的な自動車メーカーはもちろん、スポーツカーとしての歴史を持つブランドも今やSUVを展開するようになっています。
なぜこれほどまでにSUVは人気となっているのか。改めてその理由を見つめ直してみましょう。

SUVとは「Sport Utility Vehicle(スポーツ・ユーティリティ・ヴィークル)」の略で、日本語に訳すと「多目的スポーツ車」となります。
クルマで「Sport」と聞くとスポーツカーのような走りのイメージをしてしまいますが、英語のSportは運動や競技といったメジャーなもの以外の意味も持っています。
その1つが娯楽や楽しみといった意味合いで、Utilityは実用性や利便性を指しています。
Vehicleの意味は車両なので、SUVを簡単に言い直すと「アウトドアなどの娯楽に使いやすい利便性の高い車両」になります。
この汎用性と利便性が高いということは、要するに「万人にとって使える」ということになります。この点が、SUVが人気となっている理由といえます。
また「運転がしやすい」と世間で広く認知されているのも人気の理由といえます。
その認知の背景には、着座位置が高いため周囲が見えやすいこと、地上高が高いため多少の段差を気にしなくていいといったことがあります。
しかし、かつてクルマのラインナップの中心といえば、オーソドックスな3ボックス型のセダンでした。
セダンにあってSUVにないものといえば、走りの良さです。「SUVは背が高いからカーブで不安定に感じてしまう…」と、そんな風に思う人もいるかもしれません。
確かにSUVはセダンに比べればコーナリング性能は劣る傾向にありますが、技術の進化と人気ジャンルらしい競争の激化で、走りも以前に比べて良くなってきています。
普通の人であればSUVでもコーナリング性能に不満を持つことはないでしょう。セダンに比べて劣る走行性能に関しては、多くの人にとって及第点、もしくはほぼ満足という領域にまで仕上がっているのです。
そして自動車メーカーにとっても、SUVが作りやすいという背景があります。
まずスペースの問題です。全高が高く、ある程度ボディサイズを大きくできるため、スペース的な制限が少なく済みます。
また他のモデルとプラットフォームやパワートレインを共有しやすいため、開発コストが安く済むのも、作りやすいポイントといえます。
さらに近年登場しているBEV(バッテリー電気自動車)モデルの場合、床下にバッテリーを搭載するというレイアウトの都合上、室内空間の高さの確保するのが難しいです。
そのため、全高を高く出来るSUVならば、BEVでも室内空間を確保しやすいという背景もあります。
運転のしやすさや汎用性と利便性の高さなど、ユーザーが積極的に選ぶ理由と、メーカーが作りやすいという背景、そんなお互いの利害が一致しているからこそ、SUVの人気は一段と加速し、多くのメーカーが取り組む人気ジャンルとなったのです。
Writer: 西川昇吾
1997年生まれ、日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。大学時代から自動車ライターとしての活動をスタートさせる。現在は新車情報のほか、自動車に関するアイテムや文化、新技術や新サービスの記事執筆も手掛ける。また自身でのモータースポーツ活動もしており、その経験を基にした車両評価も行う。




































