タンスや便器まで… 高速道の落下物は年36万件 見つけたらどうする?
落下物はどのように処理されている?
前述した同行取材の際には、東名高速の東京インターから御殿場インターまでを2時間かけてパトロールする車に乗せてもらいました。道路上の落下物を発見すると、パトロール隊員は車を路肩に寄せて停めます。その際、私たち取材スタッフは車内待機で絶対に外に出ないように言われました。そして、大きな旗を持って、2人1組で路上の落下物を拾いに行きます。車が途切れた一瞬のスキに本線に出て拾うのです。
高速道路を走る車はまさか、人が出てきて落下物を拾う、などとは思いもせずに走っていますから、本当に路肩の車内から見ているのも怖いくらいの状況でした。高速道路の路肩や非常駐車帯に車を止めたことがある人ならお分かりかもしれませんが、遠くに見えている車がほんとに一瞬にして目の前を通過していきます。”路肩に立つことすら怖い”、それくらいのスピードでした。落下物の回収はまさに命がけです。
また、落下物が広範囲にわたるなど、個別の回収が難しい場合は道路を通行止めにして回収、清掃などの処理を行っています。
荷物を落としたことに気づいて、絶対にやってはいけないこと
高速で走行しているときには、そのスピードや風圧、振動など一般道路を時速30~40キロで走っている状態とは比べ物にならないほど影響を受けることがあります。つまり、しっかりひもをかけ、ルーフキャリアに固定したと思っていたものが、高速走行時では強度が足らず、道路に落下してしまうことも少なくないのです。
車から物を落としてしまったことに気づいたらどうするべきでしょうか? ネクスコ中日本広報室に聞いてみました。
「走行中、トラックの荷台やルーフキャリアやトランクなどから荷物が落ちてしまった場合、周囲の交通に注意して路肩に車を停めてください。落下物からなるべく離れて(後続車が落下物を踏んだり、跳ねたりして、路肩に飛んでくることもあります)、『#9910』(道路緊急ダイヤル24時間対応)に電話をしてください。
絶対にやってはいけないことは、”自分で本線上に出て拾いに行く”、という行為です。落とし物を自分で拾いに行き、後続車にひかれて亡くなる事故も年間、数件発生しています。絶対に自分では(すぐ近くにあるように見えても)拾いに行かないでください。
また、落下物らしきものを発見した場合は、少しスピードを落として前方の状況を確認します。追突される恐れもありますので、急ブレーキ、急ハンドルは極力避けてください。落下物が見た目に柔らかそうな毛布やシートに見えても極力、踏まないよう避けてください。できる限り接触を避けるのが賢明です。そして、やはりこの際も『#9910』に連絡をして落下物の状況を伝えてください」
ちなみに、積載物の固定方法が悪くて積み荷を落下させたような場合は、転落等防止措置義務違反となることもあります。さらに、落下物を放置して逃亡し、それが原因で事故が起こった場合にはひき逃げ同様の重い罰則が科せられることになります。万一、荷物などを落としてしまった場合には、速やかに「#9910」に連絡をしましょう。
【了】
Writer: 加藤久美子
山口県生まれ。学生時代は某トヨタディーラーで納車引取のバイトに明け暮れ運転技術と洗車技術を磨く。日刊自動車新聞社に入社後は自動車年鑑、輸入車ガイドブックなどの編集に携わる。その後フリーランスへ。公認チャイルドシート指導員として、車と子供の安全に関する啓発活動も行う。