価格はほぼ一緒の「軽自動車」と「小型車」で維持費はどう違う? 実際の差額を比較

同じ価格帯のN-BOXとフィットで維持費を比較

 では実際に同じ価格帯の軽自動車と小型車で、維持費を比べてみましょう。

ホンダ N-BOXの室内空間

 軽自動車の「ホンダN-BOXカスタムG・Lホンダセンシング」(169万8840円)と、普通小型車「ホンダフィット13G・Lホンダセンシング」(165万3480円)を比べてみます。

 両車ともにエコカー減税の対象に入り、N-BOXカスタムの購入時の諸費用は、自動車取得税(1万6900円)+3年間の自動車重量税(3700円)+3年間の自賠責保険料(3万5610円)+リサイクル関連費用(8400円)=6万4610円です。

 フィットは、自動車取得税(3万3000円)+3年間の自動車重量税(1万6800円)+3年間の自賠責保険料(3万6780円)+リサイクル関連費用(8450円)=9万5030円です。

 購入後の3年間の諸費用は、N-BOXの軽自動車税が1年当たり1万800円×3年間=3万2400円。フィットは1年当たり3万4500円×3年間=10万3500円です。

 この税額を購入時の金額と合計すると、N-BOXが9万7010円。フィットは19万8530円になります。N-BOXは10万円以上安く、フィットの半額以下です。

 このほかオイル交換の料金は、N-BOXが3400円、フィットが4400円といった違いがありますが、軽自動車とコンパクトカーではあまり差が開きません。

 車種カタログに記載されるJC08モード燃費値は、N-BOXが27km/L、フィットが24.6km/Lですが、比率に換算すると約9%で、負荷の多い状況で使うとフィットの方が優れた数値を達成する場合もあります。

 そうなると出費の比較で差が付くのは、やはり税金です。特に自動車税は、軽自動車とコンパクトカーで3倍以上の開きがあります。

 1台だけのクルマを持つ世帯であれば、N-BOXとフィットの差額は年額2万3700円ですが、4台のクルマを持つ世帯になると、この差額が9万4800円に拡大して、3年間であれば28万4400円になります。

 さらに自動車重量税もエコカー減税の期間が終われば、車検を受ける時の2年分で軽自動車が5000円、フィットは3万円です(両車とも本則税率で計算)。

 この差額も4台であれば10万円(年額にして5万円/3年間なら15万円)です。

 従って今でも軽自動車は、複数の車両を所有する世帯の多い地域(いい換えれば公共の交通機関を使いにくい地域)で多く売られています。そのために佐賀県/鳥取県/長野県などでは、軽自動車は10世帯に10台以上の割合で普及しており、東京都は10世帯に2台以下です。

 今の軽自動車は便利で快適になりましたが、安い税額により、日常生活に欠かせない移動手段として使われる役割は昔と同じです。

 そして小型/普通車の税金は前述のように高額なので、軽自動車の税金まで今以上に高まれば、多くのユーザーの生活を圧迫してしまいます。

 軽自動車は、地域によっては生活をする上で不可欠なライフラインとして機能しますが、軽自動車税は従来の7200円から1万800円に値上げされました。これ以上税金を高めることは許されないでしょう。

【了】

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Writer: 渡辺陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。

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