コンビニなど街角の駐車場には、看板などで「前向き駐車にご協力ください」などというお願いが書かれていることがあります。
　
　一体なぜこのようなお願いをしているのでしょうか。

　駐車場にクルマを停める場合、一般的には「バック」で駐車枠へ入っていくこととなります。

　駐車時のバックで気にするのは「後ろの壁にぶつからないかどうか」くらいですが、出庫時は「クルマや人が通りかかっているのに気づかず、うっかりバックで轢いてしまわないか」という不安があります。

　そのため、多くの人が、停める時にバックで入る「後向き駐車」を選びます。しかし先述のコンビニの看板は、それと逆のことをしてほしいとお願いしているのです。

　このお願いについて、とあるコンビニオーナーOBは「フェンスの向こうにある民家に迷惑を掛けないため」だと話します。

「後向き駐車だと、クルマのお尻が民家側を向きます。排気ガスが民家へ直接噴射されるほか、マフラーからの音も近くなってしまいます。もちろん店舗の立地によって事情は異なりますが」（同OB）

　開業直後は、「ブボボボ…ブボボボ…と夜うるさくてかなわん」というクレームもあり、苦労したそうです。

　ショッピングモールと違って生活空間に近く、他の業態よりもクルマの出入りが激しいコンビニ。店舗営業を長期間にわたって円滑に続けていくには、周囲との共存が重要になってきます。そこで、駐車車両による影響にも苦心しているのです。こうして看板で明記していることで、「住民の皆さんのためにここまで配慮しています」という示しにもなります。

　もうひとつ重要なのが「バックで運転ミスで突っ込んでくる事故」を避けるためだといいます。後ろに振り向いて確認しながらバックしているうちに、アクセルとブレーキを踏み間違えて急加速し、店舗内へ「ダイナミック入店」…という破壊事例もニュースでたびたび報道されます。それを防止するため、フェンス沿い以外の場所でも、前進駐車を呼びかけているそうです。

　では、この要請を無視して後向き駐車で駐車した場合、何らかの罰則はあるのでしょうか。

　とある警察OBは「道路交通法に基づくものではなく、私有地内で土地管理者が決めたルールであるため、法律による罰則があるわけではありません」と話します。

「とはいえ、何らかのトラブルによって裁判となった場合、お願いを無視したことでトラブルの引き金となったと認定されれば、ドライバー側にとって不利な事実になるでしょうね」（同OB）

　互いに思いやりの気持ちをもって、駐車場を利用したいものです。

　もちろん、無関係な第三者が「このクルマ、お店のお願いを無視して後向き駐車しているぞ」として、勝手に「正義の鉄槌を下す」ような行為は、刑法による器物損壊罪や名誉毀損罪、暴行罪などに問われる可能性があるため、やめましょう。