なぜタクシーは新型でも「フェンダーミラー」? ドアミラーに変えない理由
タクシー運転手が好む「フェンダーミラー」メリットとは
一般的に言われるフェンダーミラーのメリットは、1)視線の移動が少ない。 2)狭い道を曲がるときの目安になる。 3)助手席に人を乗せた際、人や荷物でミラーが見えなくなったりしない。等といわれています。
果たして、これらは本当なのでしょうか?
1)について言えば、逆にドアミラーの普及理由になりました。ドアミラーでは左右確認のため、ドアミラーの方向に顔を向けます。この行為で死角が少なくなり、安全確認に役立つことになります。
2)の理由は、クルマをあまり運転しない人か、免許取り立てのドライバーしか理由にしないと思います。タクシー専用車はコンパクトカーと同じ車幅しかなく、運転も容易です。
3)の理由のみ、「そういうこともあるかもしれませんね」と納得できます。もう少し踏み込むと、助手席に海外旅行用トランクや大きな荷物を載せたような場合、ドアミラーだと見えにくくなるようなケースが出てくる可能性もあります。
ただ、3)について、ドアミラー車のタクシードライバーの方に聞いみると「特に問題ありませんよ」という回答でした。
そこでより多くのフェンダーミラー車タクシーに乗られている運転手の皆さんに意見を聞いてみよう、とさらに取材してみました。
結果は意外なことに、フェンダーミラーでなければならない大きな理由はなかったのです。
「ドアミラーだと車幅が広くなってしまうため狭い道に入れない」という運転手さんも居ましたが、「どうしてもという時だけはドアミラーを折り畳んでみれば?」と言うと納得した様子で「そうですよね」
半年前から運転手さんになった方は、「最初はフェンダーミラーに慣れなくて怖かったです」との意見も。務めているタクシー会社にドアミラー車とフェンダーミラー車、両方のタクシーがあるという運転手さんは、「どちらでも同じですよ。私らは運転のプロですから」。確かにその通りだと思います。
以上、取材をしても決定的なフェンダーミラーのメリットは見つけられませんでした。
話を文頭に戻します。「なぜタクシーはフェンダーミラーなのか」と言えば、もはやタクシーの「アイコン」のようなものなのかもしれません。筆者の知り合いの親方(大工)も、弟子に裾絞りでない普通のズボンを支給したら「イヤだ」と言われるそうです。
大きなメリットはないけれど、あえて選ぶ理由、それは今でもフェンダーミラーがプロドライバーとしての”粋”なんだと思います。
【了】
Writer: 国沢光宏
Yahooで検索すると最初に出てくる自動車評論家。新車レポートから上手な維持管理の方法まで、自動車関連を全てカバー。ベストカー、カートップ、エンジンなど自動車雑誌への寄稿や、ネットメディアを中心に活動をしている。2010年タイ国ラリー選手権シリーズチャンピオン。