「オリンピック」みたいなクルマ!? “輪っか”の並ぶ「謎エンブレム」のクルマは何者? 気になるマークの意味と「似ている理由」とは
オリンピックのようなエンブレムをフロント/リアに取り付けたクルマを見かけることがありますが、あれは一体どのようなクルマなのでしょうか。
エンブレムが「オリンピック」みたいなクルマ!?
フランスのパリでは、2024年7月26日から8月11日までの17日間、、世界各国の代表選手がスポーツで競い合う「パリオリンピック2024」が開催されます。
このオリンピックは「五輪」とも呼ぶように、“5つの輪っか”が重なり合ったマークを近代オリンピックのシンボルとして定義していますが、これによく似た形のエンブレムをフロント/リアに取り付けたクルマを街中で見かけることがあります。
一体どのようなクルマで、そのエンブレムにはどのような意味があるのでしょうか。
冒頭にあったオリンピックのシンボルの正式名称は「オリンピック・リング」。
単色あるいは、青・黄・黒・緑・赤の5色の輪を重ねて連結した形状をしており、これは「ヨーロッパ・南北アメリカ・アフリカ・アジア・オセアニア」の五大陸および、その相互の結合や連帯を意味するもの。
そんなオリンピック・リングが初めて世に姿を表したのは、1914年開催された「IOC設立20周年記念式典」での発表で、以降このシンボルはオリンピック憲章第1章の8でも定義されています。
そして、記事の冒頭にもあったように“オリンピック・リングに似たエンブレムを付けているクルマ”と時折言われるのは、ドイツの高級車ブランドの「アウディ」です。
たしかにその形状を見ると、4つの丸い輪が横に並ぶ形で連結しており、オリンピック・リングから輪を1つ取ったようなデザインと思う人がいることにも頷けます。
このアウディの象徴となるエンブレムにも正式名称があり、正しくは「フォーリングス」(フォーシルバーリングスと呼ぶ事例もあります)。
かつてドイツに独立し存在していた4つの自動車メーカー「アウディ」「DKW」「ホルヒ」「ヴァンダラー」が1932年6月29日に合併し、現在のアウディの前身となる「アウトウニオン」という1つの自動車メーカーになったことを象徴するものです。
合併は、1929年に勃発した世界恐慌を乗り切るためにザクセン州立銀行によって主導されたもので、この動きによってアウトウニオンは、当時のドイツにおいて2番目に大きな自動車メーカーグループへと急成長。
この合併を機に会社のロゴマークとして、4社の統合を示す“4つのリング”を組み合わせたシンボルが採用されたのです。
しかしアウトウニオン設立後も、アウディ、DKW、ホルヒ、ヴァンダラー4社のブランド名は引き続き使用され続け、それぞれが異なる市場セグメントを担当する形でブランドの差別化を図ります。
DKWはバイクおよび小型車、ヴァンダラーは大衆的な中型車、アウディは上質な装備の中型車および大型車を、ホルヒは高級車から自動車市場におけるトップエンドモデルとなる最上級ラグジュアリー車の製造と販売を行いました。
このように各社が得意分野に専念することで、アウトウニオンは自動車メーカーグループとして総合力を高めることに成功。
ドイツを代表するフルラインナップメーカーとしての基盤を確立し、現在のアウディに至る礎を築いたのです。
しかし実は、アウトウニオンのシンボルだったフォーリングスは、この後に一度世界から姿を消しています。
それは1969年に「NSU」と合併したタイミングで、フォーリングスが無くなり、社名を「アウディ NSU」と改めて、文字だけというシンプルなロゴデザインとなりました。
そして14年後となる1985年に、社名を再び「アウディ AG」と変更。
ここでようやくフォーリングスが復活し、シンボルマークとして制定され、その後もデザインの小改良を続けながら、今も多くの人が憧れる高級ブランドのエンブレムとして使用されているのです。
※ ※ ※
このように、オリンピックの「オリンピック・リング」とアウディの「フォーリングス」は、デザインに似た面はありながらも、直接的に関連する要素はありません。
しかしどちらも、複数の輪が連結するデザインに「連帯や統合」という意味が込められたものなっています。
世界の複数の国家や地域、あるいは異なる企業の協力を示す表現として、このシンプルかつ印象的なデザインがいかに直感的に伝わる優れたものであるのかが理解できますね。
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