ホンダが「新型軽バン」発表! 斬新1人乗り&2人乗りも設定!? 「N-VAN」と何が違う? 「e:」って何?
ホンダが2024年10月10日に発売する軽商用EV「N-VAN e:」は、ガソリンエンジン車の軽商用バンN-VANをベースにEV化したものですが、単にエンジンとモーターを載せ替えただけではなく、構造や装備面でも様々な専用仕様が施されています。
従来のN-VANとは何が違う? 新型「N-VAN e:」登場
ホンダは新型「N-VAN e:」を2024年6月13日に正式発表しました。
従来のN-VANとは何が違うのでしょうか。
ホンダが2024年10月10日に発売する軽商用EV「N-VAN e:」は、ガソリンエンジン車の軽商用バンN-VANをベースにEV化したものですが、単にエンジンとモーターを載せ替えただけではなく、構造や装備面でも様々な専用仕様が施されています。その違いを解説します。
まずはビジュアルから見ていきましょう。
エクステリアでは、フロントマスクが専用化されています。
フロントバンパーが専用デザインとなり、フロントグリルもリサイクル素材を活用したフロントパネルに。
そのパネル面には、普通充電口と急速充電口が設けられています。
またN-VANとは異なり、ナンバー位置も中央配置となっています。
フロントマスクの変更の理由は、N-VANとの差別化や充電口の設置だけではなく、EV向けの冷却システム向けにラジエーターを追加するなど、ボンネット内部の構造の違いも影響しています。
充電口がフロントに配置されたため、EV化で充電口設置場所として活用される給油リッドも廃止されており、リヤフェンダー付近のデザインもすっきりしています。
因みに充電口がフロントにあるのは、ビジネスカー複数台所有する法人などの駐車場で、充電時に余計なスペースを必要としないことや充電時のケーブルの取り回しの良さなど操作性を考慮したものだそうです。
インテリアも一部が専用化されています。
まずトリムカラーがN-VAN e:では、ホワイトを基本とし、個人オーナーを指揮した「e:FUN」グレード専用となるベージュが用意されています。
またドアなどのトリムが、傷が目立ちにくいようにコンテナ風の縦のビートラインが施されています。
そして、ダッシュボードデザインも専用仕様となっています。
まずメーターパネルは、アナログ式から7インチ液晶によるデジタル式、もしくはセグメント液晶式に変更。
ステアリングも、シンプルなホンダ最新仕様の2スポークタイプとなります。
さらにダッシュボードに備わる機能の配置も異なり、シフトは、レバー式からスイッチ式に変更され、ハザードスイッチの位置も変わっています。
エアコンパネルは、最新世代にアップデートされため、周辺のパネルデザインも異なり、USBソケットが新設され、アクセサリーソケットの位置もダッシュボード上部へと変更されています。
細かい部分ですが、EV化で新世代Nシリーズに使われるパーツも、一部取り入れられていることが分かります。
シートレイアウトは、N-VAN同様に、運転席以外のシートを簡素な作りとし、助手席と後席を折り畳むとフルフラットな荷室空間となる点になります。
ガソリン車が4人乗り仕様だけに対して、EVの「N-VAN e:」には、同様の4人乗り仕様だけでなく、運転席のみのシングルシートと、運転席と運転席側後席のみのタンデム式のツインシートも用意。
これはより荷室スペースを広げるだけでなく、EV化による車両重量増加の影響による最大積載量の減少を補うための秘策です。
ガソリン車のFF車の場合、最大積載量は350kg(2名乗車時)ですが、4人乗り仕様のN-VAN e:では、300kg(2名乗車時)に。それが1人乗りと二人乗りでは、350kgと同等となっています。
モーター化で走行性能も向上。最高出力は1人乗りと二人乗り仕様が、39kW(53ps)、4人乗り仕様が、47kW(64)psに。
前者が自然吸気エンジン仕様と、後者がターボエンジン仕様と同等となっています。
ただいずれも最大トルクは、162Nm(16.5kgm)まで向上されており、これはターボエンジン車の104Nm(10.6kgm)を大きく上回っており、電動化の強みが活かされています。
駆動方式は、前輪駆動車のみとなりますが、雪上走行テストも、しっかりとおこなっており、不足ない性能があるとされています。
またEV化で車両重量が増しているために、ブレーキ性能も容量をアップすることで性能を強化。そのために、タイヤサイズも1インチアップの13インチタイヤを装着しています。
ただ13インチ化は、乗り心地の性能の向上という嬉しい効果も生んだというのは、歓迎すべき情報でしょう。
因みに、N-VANはタイヤ交換時のコストを抑えるべく、12インチを採用していますが、13インチタイヤ化での価格負担増は、僅かということなので、運用コストへの影響はさほど心配しなくても良いそうです。
走行性能面では、その活躍が期待される配送現場からのフィードバックも取り入れられています。
それが加速性能と回生ブレーキによる減速力です。
当初はEVの強みを活かすべく、モーターらしい力強い加速としっかりとした回生ブレーキの効きを与えていたそうですが、走行時の加減速による車体の揺れが荷物の落下などの起こさないように、ペダルで緩やかな加速を作りやすくし、回生ブレーキの原則も少し抑えたとのこと。
このような走りのチューニングは、まさに街中で働くEVならではの特色といえるのではないでしょうか。
最後に、ちょっと気になる点を。
それはN-VAN以上にコストダウンを意識し、一部仕様の機能が抑えられたことです。
それがN-VAN e:専用の1人乗り仕様「e:G」と2人乗り仕様「e:L2」の先進の安全運転支援機能です。
もちろん、安全機能に手抜かりはなく、軽商用バン初のサイドカーテンエアバックや軽自動車初の衝突後ブレーキシステムも標準化するなど新たな取り組みを行っています。
しかし、先進の安全運転支援機能の内容には、グレード差があります。
4人乗り仕様の「e:L4」と「e:FUN」は、ホンダセンシングが標準に対して、衝突軽減ブレーキ(CMBS)、歩行者事故低減ステアリング、路外逸脱抑制機能、パーキングセンサーシステム(後部)、オートハイビームの最小限の機能に限定されることです。
大量購入も考えられるビジネスユーザーがターゲットのモデルだけに、1台当たりの価格を抑えることの重要性は理解できます。
しかし毎日のように使われる働くクルマだけに、ホンダが取り組む先進安全運転支援パッケージである「ホンダセンシング」の重要性をアピールし、全車標準化として欲しかったものです。
このようにN-VANベースの軽商用EV「N-VAN e:」には、単なるEV化した軽商用バンではないことがわかります。
ホンダの技術者たちの拘りから、EVならではの特徴を活かした様々な工夫が施された新型車なのです。
Writer: 大音安弘(自動車ライター)
1980年生まれ。埼玉県出身。クルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者へ。その後、フリーランスになり、現在は自動車雑誌やウェブを中心に活動中。主な活動媒体に『ナビカーズ』『オートカーデジタル』『オープナーズ』『日経トレンディネット』など。歴代の愛車は全てMT車という大のMT好き。
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