スタイリッシュな新型「4ドアセダン」発売! 1000台限定で「495万円から!?」 日本の道で試したBYD「SEAL」の実力とは

中国メーカー・BYDが日本向けに改良した4ドアセダン「SEAL」は、どのような実力を持っているのでしょうか。

BYDのセダン「SEAL」とはどんなクルマ?

 2024年6月25日にBYDは日本市場向けに4ドアセダンの「SEAL」を発売しました。

 中国メーカーが日本向けに改良したSEALは、どのような実力を持っているのでしょうか。

ついに日本市場に投入! BYDセダン「SEAL」とは
ついに日本市場に投入! BYDセダン「SEAL」とは

 2022年7月に日本市場に参入を発表した中国メーカーのBYD。ブランドの意味は「Build Your Dream(あなたの夢の作る)」です。

 その歴史を少しだけ解説すると、1995年にバッテリーメーカーとして起業した会社で、本社は中国のシリコンバレーと呼ばれる中国南部・広東省深セン市。

 その名を知らしめたのは携帯電話向けのリチウムイオン電池事業でしたが、2003年に小規模な自動車メーカーを買収し自動車業界に参入。

 当初は日本車コピーのようなモデルも多かったですが、短期間で独自性を備えたモデルを投入しグローバルでビジネスを展開しています。

 新聞・経済メディアの記事では電気自動車(BEV)ばかりが注目されていますが、実は中国や他国ではPHVも販売されており、その比率は5:5となっています。

 ちなみに販売台数は年々増加、2023年は302万台(BEVとPHVの合算)を記録しています。

 そんなBYDですが、日本市場ではBEVのみの販売戦略を掲げています。

 日本法人の社長である劉学亮氏は「日本はBEVに最適な環境だと思っています。我々のビジネスも大事ですが、まずはBEV浸透のための協力をしていきたいと」と語っています。

 このように「選択と集中」の考え方は韓国メーカーのヒョンデと似ていますが、大きく違うのは店舗販売を基本にディーラー網の構築を進めている点でしょう。

 この辺りを関係者に聞くと「買いやすい環境を作ること」、「アフターサービスが重要」と、日本のユーザーに“寄り添った”戦略と言えるでしょう。

 現在はコンパクトクロスオーバーの「ATTO3」、コンパクトハッチバックの「DOLPHIN」が発売中ですが、2023年のジャパンモビリティショーでお披露目されたセダン「SEAL」を2024年に投入と発表。

センターディスプレイはスイッチで縦・横に変えることができる
センターディスプレイはスイッチで縦・横に変えることができる

 そして公言通り、6月25日に正式発売がスタートしました。すでに筆者は2023年に中国にて試乗済みですが、今回は“日本仕様”を日本の“道”でシッカリ試乗してきました。

 エクステリアはグリルレスのフロントマスク、4ドアクーペシルエットのサイド、そしてシンプルなリアとBEVと、空力を意識しながらも奇を衒わない、BEVセダン王道のデザインと言った印象です。

 個人的にはまとまってはいるとは思うものの、中国車らしい“イケイケ感”はあまり感じられず。

 ちなみにデザイナーは元アウディのウォルガング・エッガー氏によるモノですが、「従来の自動車の美しさを継承した」と語っています。

 ボディサイズは写真で見るとコンパクトに感じますが、実際は全長4800×全幅1875×全高1460mmとメルセデス・ベンツ「Cクラス」やBMW「3シリーズ」に近いです。

 インテリアは運転席前に小型のフル液晶メーター、センターにBYDの特徴の一つである回転式の大型ディスプレイを備える点は他のモデルと同じですが、高めに設定されたセンターコンソールによりコクピット感覚は強めでスポーティな印象です。

 インフォテイメントは日本語対応もバッチリで操作性も高いです。個人的には音声検索が優秀で、「ちょっと窓を開けてほしい」、「助手席の温度を上げて」と言った細かいオーダーができるのはさすがと思う一方で、日本語のナビゲーションとの連携が現時点ではできていないのは非常に残念な部分。この辺りはOTAを活かした早急の対応が必要でしょう。

 質感・品質は個々のパーツを見るとレベルは高いですが、全体的に見ると調和が取れておらず大味に感じる部分も。

 居住性は2910mmのロングホイールベースを活かし室内空間は見た目以上に広く、特に後席の足元スペースは1クラス上のセダンに匹敵するレベルと言えるでしょう。

 パワートレインは後輪駆動が230kWのシンプルモーター仕様、AWDは160kW/230kWのツインモーター仕様です。

 バッテリーはBYD独自のブレイドバッテリー(リン酸鉄リチウムイオン)を搭載しており、容量は82.5kWh。航続距離はシングルモーター仕様が640km、ツインモーター仕様が575kmとなっています。

 アクセル操作に対する反応の良さはBEVでは当たり前ですが、加速の立ち上がりは意外と緩やかでジェントル。

 AWDモデルはシステム出力390kW/650Nmとかなりハイスペックですが、アクセル全開時はハイパワーBEV特有の脳天揺さぶるような怒涛の加速ではなく、「加速感は少なめだが速い」と言う印象です。

 ちなみにシフトレバー付近にあるドライブモードはECO/ノーマル/スポーツが選択できますが、日本車のBEVに多い「加速レスポンス」の変化ではなくトルクが変化。

 日常域ではAWD仕様はもちろん後輪駆動仕様でも十分以上のパフォーマンスなので、個人的にはECOで十分かなと。

 フットワークは車体、ステア系、サスペンション周りなどの基本素性の高さは感じるものの、試乗中は総合的に「何かが足りない」と感じたのも事実です。

箱根のワインディングでの実力は?
箱根のワインディングでの実力は?

 もう少し具体的に言うと「意のままの走り」がしにくいのです。

 例えば、車体はカチッしていますがどこか突っ張った印象。その弊害なのか直進性は最近のクルマにしては外乱に影響されがち。

 コーナリングは限界こそ高そうですが、そこまで至る過程はと言うと。

 まずステアリングの切り始めの応答性が悪いのでコーナー進入時にノーズがなかなかインを向かず我慢が必要なのに、そこからクルマは想像以上に機敏に動いてしまうのです。

 昔のホンダ車は「曲がりそうで曲がらない」と言うのがありましたが、SEALはその逆「曲がらなそうなのに、曲がる」で、一体感に欠けます。

 更に旋回中にはロール方向の動きは少ないものの、ピッチ方向はアクセルコントロールで予想以上に動いてしまい、結果としてクルマがギクシャクしてしまいます。

 これは後輪駆動よりAWDのほうが顕著だったので、前後モーターの協調にも問題があるのかも。

 乗り心地は一般道では少々突き上げを感じますが、60~70km/hくらいからしなやかさが増す印象です。個人的にはちょっと昔の欧州フォードやオペルの乗り味に近いと感じました。

 しかし、そこから先の100~120km/hくらいだと逆にバネ上が常に落ち着かない印象で、残念ながらフラットライドな感じはありません。

 AWDは減衰調整式ダンパーが採用されていますが、乗り心地としては後輪駆動モデルとあまり差がないように感じました。

 運転支援系デバイスはBYD独自の幼児置き去り検知システム(CPD)をはじめ、予測緊急ブレーキシステムやACCとレーンキープアシストを組み合わせたナビゲーションパイロットなど必要な機能はほぼ用意されています。

 ただ、お節介くらい介入する制御や必要以上に警告音や表示は、良く言えば「安全側に振っている」とも言えますが、やはり「人間中心」ではないかなと。

 総じて言うと、個々のハードの実力は高いものの、トータルつまりクルマとしての“まとまり”は志半ばなのが筆者の評価となります。

 少々厳しいですが、恐らく「最高の技術を盛り込めば、必ずいいクルマに仕上がるはず」と言った技術屋集団的な考えが強すぎで、数値に表れにくい感性領域へのこだわり。

 つまり最後にクルマに“魂”を込める所は、老舗自動車メーカーのそれと比べるとまだまだ差があるように感じました。

 ただ、彼らがその重要性に気付き始めたら脅威なのも事実です。なぜなら、ボディ構造をはじめとしたクルマの根幹部分をチェックすると、欧州メーカーのレシピが再現されているなど、ハードに関しては間違いなく“いいモノ”が使われているので、今後どう調理をしていくかで大きく化けるのではないか、と予想しています。

 劉氏は「BYDの強みは、市場の動向をいち早く捉えて製品をアップデートしていくこと」と語っていますが、今後「おっ、やるねぇ」となる事を期待しています。

 ちなみに価格は後輪駆動が528万円、AWDが605万円ですが、導入記念キャンペーン(1000台)は後輪駆動が495万円。

 AWDが572万円とお買い得プライスな上にETCやドライブレコーダー、充電器の工事費(最大10万円まで)などの特典アイテムがプラスされます。

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Writer: 山本シンヤ

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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