伝説の「和製スーパーSUV」まさかの市販化!? 斬新“未来すぎ”「2ドアモデル」! まさかのいすゞ“オシャマシン”「ビークロス」とは
モーターショーに登場した斬新なモデルが市販化される稀有なケースがあります。今では商用車専売メーカーとなったいすゞにも「ビークロス」という超未来的なクーペモデルが存在していました。
未来的なコンセプトカーを市販化した「大英断」!
現在は、主にトラックやバスなどの大型商用車を製造しているいすゞ自動車(いすゞ)ですが、かつては乗用車も製造しており、1990年代ごろは「ジェミニ」や「ビッグホーン」、「ミュー」などのモデルが活躍していました。
なかでも超個性的なクーペSUVとして知られていたのが、1997年デビューの「ビークロス」です。どのようなクルマなのでしょうか。
ビークロスのもととなったのは、1993年に開催された第30回「東京モーターショー」に出展されていた「VehiCROSS(ヴィークロス)」。
ベースとしたのは小型車のジェミニですが、デザインを優先し、3ドアの4人乗りクロスオーバークーペとして大径タイヤとワイドトレッド、ショートオーバーハングに改装するなど、絶妙な塊感のあるデザインに大変更。
全体に丸みを帯びたスポーティなデザインながらも、太いピラーや張り出したフェンダーアーチなど、骨太かつ躍動感があるエクステリアデザインが特徴的で、「もしかして近未来のスーパーカーはこんな風になるのかな」と思わせるほど、若々しく新鮮な印象にあふれるものでした。
この“ヴィークロス”が思いのほか好評だったことで、いすゞは市販化を決定。市販型「ビークロス」として、1997年4月より販売しました。
コンセプトカーとは違い、ベースにクロスカントリー型四輪駆動車ビッグホーンの3ドアショートモデルを採用したことで、コンセプトカーよりもボディサイズは大きくなりました。
しかし躍動感のあるデザインは損なわれることなく、有機的でアグレッシブなエクステリアスタイルに仕上げた手腕はかなりのもので、いま見ても斬新にみえます。
ボディサイズの割にはリアシートがタイトで、ラゲッジスペースもそれほど広くないなど、かなり割り切った仕様で、エンジンも3.2リッターのV型6気筒ガソリンエンジンのみ。
ディーゼルエンジン車のイメージが強いいすゞですが、プレミアムをうたっていたため、ガソリンエンジン車としたといいます。
75度という珍しいバンク角かつオールアルミ製、ヘッドカバーにマグネシウムを採用したこのエンジンは、最高出力215PS、最大トルク29.0kgfmと余裕があり、トルクフルな走りが楽しめるものでした。
前席にはレカロ社製スポーツシートを採用したほか、モモ社製スポーツステアリングなども装備されていました。
30年近くも昔にデビューしたクルマとは思えない、色あせないフューチャーデザインは、ビークロスの最大の魅力です。
割り切ったコンセプトカーを元に、市販車の販売までやり抜いた当時のいすゞの判断は、英断だったといえるでしょう。
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ビークロスは、現在も中古車市場で、極わずかな台数が出回っています。大手中古車情報サイトによる相場は、1997年式の約10万km走行車で税込100万円から170万円ほどと異常な高騰こそしていないものの、相場を維持しているようです。
25年以上前のモデルであり、購入するにはなかなか勇気のいるところですが、ビークロスに乗って街中を走れば、振り返る人は少なくないでしょう。
なお近年は、海外への流出例も目立つようです。日本が誇る名デザインの一台として、いつまでも記憶に残しておきたいものです。
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