三菱新型「トライトン」どんな人が買う? 全長5.3m超え気にならない? 荷台には何を積む? 変化する「ピックアップ市場」とは
これまで日本のピックアップトラック市場ではトヨタ「ハイラックス」のみが唯一の選択肢でした。しかし新たに三菱新型「トライトン」が投入されましたが、現在はどのような市場状況なのでしょうか。
どんな人が新型「トライトン」を買うのか
2024年2月15日に発売された三菱新型「トライトン」。
全長5.3m超えのサイズを誇るピックアップトラックですが、どのようなユーザーが購入検討するのでしょうか。
またトヨタ「ハイラックス」に加わるカタチでピックアップトラック市場に投入されましたが、現在はどのような市場状況なのでしょうか。
鳴り物入りで日本再登場となったトライトン。
その性能は、もはや「SUVを越えている」との声も多く聞かれ、すでに受注も1700台を超える状況(3月10日現在)となっています。
これまで日本のピックアップトラック市場では、選択肢がトヨタ「ハイラックス」しかありませんでしたが、トライトンが復活したことでユーザーも頭を悩めることになりそうです。
三菱がピックアップトラックを日本に導入するのは8年ぶりですが、その歴史は意外と古く、1966年から1986年まで販売された「フォルテ」にまで遡ります。
フォルテは未だに旧車ファンに人気のある名車ですが、1986年に「ストラーダ」にバトンタッチ。
この頃の日本はRVブームに沸いていましたが、ハイラックスや日産「ダットサントラック(ダットラ)」といった強力なライバルたちは依然と商用車のスタイリングを採用していました。
ですが、一部の感度のいいユーザーはハイラックスやダットラをアメリカンスタイルにドレスアップ。
そんなニーズに応え、ストラーダは標準でオーバーフェンダーやサイドプロテクトモール、フロントグリルガードを装備し、「パジェロ」を彷彿とさせる外観にしました。
いち早く“スポーツピックアップ”というカテゴリーを確立し、「ピックアップトラック=商用車」という図式を崩したストラーダのDNAは、まさしく今回登場した2代目トライトンに受け継がれています。
ライバル・ハイラックスと日本市場へのアプローチが違っていることも、新型トライトンのキャラクターを表しているのではないでしょうか。
ハイラックスもまた、日本市場に導入されていない期間が13年間ありました。
そのため、アグリカルチャーカーとして使う北海道のユーザーの間から、「老朽化が進んでいるので新しいハイラックスが欲しい」という声が挙がったのです。
2014年にトヨタが日本でハイラックスを再販したのは、この声があったからだと言われています。
実際には、一般ユーザーが自家用車で購入するケースが多かったことから、今回のピックアップトラックムーブメントにつながりました。
一方で、新型トライトンはレジャーユースのユーザーをメインターゲットにしています。
ハイラックス同様に、海外ではFRや単なるパートタイム4WDのグレードが用意されており、またシングルキャブやエクストラキャブ仕様があります。
こうしたグレードは新興国では実用車として使われているものですが、日本ではSUT(スポーツユーティリティトラック)の定番であるダブルキャブのみの設定となり、駆動方式もフルタイム4WDモードを持つ「スーパーセレクト4WD II」だけに絞っています。
さらに、ハイラックスがスポーティなエクステリアを持つグレードを特別仕様車にしていることに対して、トライトンは「GSR」というグレードをカタログモデルにしている点にも注目です。
前述の通り、日本でのメインターゲットをレジャー派に絞り、エクステリアにこだわったことが出だしの受注好調に繋がっているのではないでしょうか。
それはデータも示しており、スタンダードグレード「GLS」が受注の12%なのに対して、GSRは88%という割合に。
500万円を超える車両価格に関わらず、ほとんどの人が上級グレードを選んでいるのです。
ちなみにメーカーは、日本のユーザーがトライトンをどのように使うと想定しているのでしょうか。開発スタッフに聞いてみました。
「荷台の使い方には多様性があると思いますが、基本的にはアウトドアレジャーに使う人にご購入いただいていると思っています。
MTBやオフロードバイク、サーフボード、フィッシングギアなど、濡れたり汚れたりしたものでも気軽に積みたいというユーザーさんが多いと思います。
SUVでは、載せるのに二の足を踏むというようなモノもガンガン載せられますので」
また企画時には、アメリカやオーストラリアにトレンドとなっているオーバーランドスタイルも想定されていたようです。
特にアメリカでは、荷台にポップアップテントを積んでオフロードを走り、フィールドで宿泊するというスタイルが定番化。
トヨタや日産は、北米仕様車でそれを意識した装備のモデルを発売しています。
トライトンの高い悪路走破性を考えれば、そういった使い方も難なくこなしてくれるはずです。
ユーザーのライフスタイルが多様化している今こそ、ひと昔前は一般人には無用の長物だった荷台スペースが注目されているのではないでしょうか。
かつてピックアップトラックオーナーに「どんなモノを載せるんですか?」と聞いたところ、“夢です”と答えていましたが、現代ではピックアップトラックの使い途が以前よりもより明確になっています。
また1ナンバーへの抵抗感も少なくなっており、その結果がハイラックスの好調な売れ行きに繋がったわけです。
デザイン、装備、性能面で申し分のない新型トライトンは、これまでピックアップトラックに縁が無かったユーザーも取り込み、この市場をさらに成長させそうです。
Writer: 山崎友貴
自動車雑誌編集長を経て、フリーの編集者に転向。登山やクライミングなどアウトドアが専らの趣味で、アウトドア雑誌「フィールダー(笠倉出版社刊)」にて現在も連載中。昨今は車中泊にもハマっており、SUVとアウトドアの楽しさを広く伝えている。
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