スバルの「四駆」なぜ雪道に強い? 本格SUV「フォレスター」に受け継がれた「AWD」のスゴさとは
スバルは四駆をメインに扱うメーカーですが、そのルーツは50年以上前に誕生した試作車にありました。どのような歴史があり、現在のクルマ作りにどう生かされているのでしょうか。「フォレスター」の雪上試乗を通して体感しました。
乗用車初の四駆を世に送り出したスバル
スバルのスポーツモデルについての歴史は様々なメディアで紹介されていますが、スバルのビジネスに欠かせないのが「SUV」です。
「スバル=SUV」というイメージはここ最近付いたように思われますが、実はスバルの四輪駆動(AWD)が誕生した時のエピソードを振り返ると、50年以上前からSUVのコンセプトが語られているのです。
遡ること1968年。東北電力から「山間部の送電線の点検用に『ジープ並みの積雪地での走破性(=四輪駆動)』と『乗用車の快適性』を両立したクルマが欲しい」というリクエストを受け、宮城スバルのメカニックがFFの「スバル1000」に日産車(「ブルーバード」510型)の駆動系/サスペンションを流用しながら四輪駆動の試作車を製作しました。
二駆から四駆の切り替え機構(=トランスファー)はギアのシンクロ機構を参考に手作りされたと言います。
このモデルは豪雪地で知られる山形県の月山(がっさん)やスキー場でジープと共に試験が行なわれましたが、東北電力のオーダー通りの仕上がりだったそうです。
その後、宮城スバルは富士重工に生産化を提案。試作車はメーカー(=富士重工業)に持ち込まれ、各種試験を実施。その結果を受けて開発を即決、わずか4か月で試作車を作り上げました。
それが1971年東京モーターショーで発表された「スバルff-1 1300バン4WD」で、これが乗用AWDの元祖となります。
ただ、ベース車がモデル末期だったため試作車8台の生産のみに終わりました。これらのモデルはリクエストを行なった東北電力に加えて長野県白馬村役場、長野県の飯山農協、防衛庁などに納入されました。
量産初の乗用AWDモデルという意味では、1971年にff-1の後継モデルとして登場した「レオーネ(初代)」に1年遅れで追加された「レオーネ4WDエステートバン」が初となります。
とはいえ、当時はメーカー自身も「作ってみたが、乗用4WDの需要は本当にあるのか?」と懐疑的。その証拠に当初の設定は“バン”のみでした。
確かに積雪地域を中心に人気を博しましたが、「普及したのか?」と言われると正直疑問があったのも事実でしょう。
その流れが大きく変わったのは、レオーネに代わり1989年にスバルが社運をかけて開発した「レガシィ」の登場でしょう。
レガシィにはセダンとツーリングワゴンが設定されていましたが、ツーリングワゴンはレオーネ時代と異なりバンを持たない「ワゴン専用車」でした。
さらに7か月遅れで追加設定された「GT」は200馬力のターボエンジン+4速ATの組み合わせで、スポーツモデル顔負けのパフォーマンスと走りとワゴンのユーティリティを両立させ、その人気を不動のモノにしました。
当時のスキーブームから「関越エクスプレス」や「ゲレンデエクスプレス」と呼ばれたことを記憶している人も多いのではないでしょうか。
ここから日本でも乗用4WDが一般的になり始めますが、スバルにとっては新たな課題も浮上します。
それは当時の「RVブーム」をけん引していた、フレーム付クロスカントリー4WDの人気に火がついたことでした。
三菱「パジェロ」を筆頭に、トヨタ「ハイラックスサーフ」、日産「テラノ」、いすゞ「ビッグホーン」など、主要メーカーが力を入れていたジャンルです。これらのモデルは世代を重ねるごとにオフロード性能だけでなくオンロード性能を引き上げ、装備も乗用車顔負けの豪華さを誇りました。
ただ、スバルはこのRVブームには乗ることはできません。その理由はスバルにフレーム付のクロスカントリー4WDがなかったためです。
とはいえ、スバルも指を咥えて眺めていただけでなく、1988年に当時同じGMグループに属していたいすゞからビッグホーンをOEM供給。その名は「スバル・ビッグホーン」ですが、ISUZUからSUBARUへバッジが変更されたのみで、ほかは全く同じクルマでした。
ちなみに、スバル初の「レカロシート装着モデル」というトリビアを持っていますが、「とりあえず用意しました」的なもので、売る気は全く感じられませんでした。
1991年にいすゞがビッグホーンを刷新して2代目に進化すると、スバル版も新型になりましたが、1993年にいすゞとのOEM契約解消で販売は終了しています。
遡ること1968年。東北電力から「山間部の総電線の点検用に
遡ること1968年。東北電力から「山間部の送電線の点検用に
誤:総電線
正:送伝線
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修正いたしました。