三菱「新型コンパクトSUVミニバン」初公開! 全長4.5m以下ボディに新ハイブリッド搭載! 3列シート装備の「エクスパンダーHEV」タイ導入は何を意味するのか

HEVの「エキスパンダー」導入の意図とは?

 さて、そんなエクスパンダーHEV/エクスパンダー クロスHEVの登場で、筆者(工藤貴宏)はふたつのことを考えました。

新型エクスパンダーHEV登場の裏には莫大な投資が行われたはず…
新型エクスパンダーHEV登場の裏には莫大な投資が行われたはず…

 ひとつは、三菱の電動化戦略の本気とさらなる加速です。エクスパンダーのデビューは2017年で、もちろん設計において電動化は考慮されていません(新興国向けのリーズナブルな車種としてコストを抑えることが最優先)。

 すなわちHEV化にあたってはフロア形状まで含めた大改良(大改造)とそのための莫大な投資が必要だったのは言うまでもないのですが、そのハードルを乗り越えてハイブリッドモデルが登場したことは戦略上大きな意味を持つのです。

 同車のプラットフォームは2012年にデビューした「ミラージュ」系のもの。電動化を一切考えていない設計だったそのプラットフォームにハイブリッドを組み合わせるのは、電子プラットフォームも含めて大幅な構造変更が必要だったことでしょう。

 もうひとつは、新興国における環境意識の急激な変化です。6代目ミラージュの生産が始まった2012年はもちろん、エクスパンダーが投入された2017年でも東南アジアマーケットにおける環境意識は「(タイでのエコカー政策などはあったものの)ハイブリッドを投入するほど意識が高い」というわけではなく、「ハイブリッド化して車両価格を上げる方向よりは、できるだけリーズナブルに新車を提供する」という考え方でした。

 しかしその後、東南アジアの人々の環境意識が急激に高まってハイブリッドカーを受け入れる土壌が育ってきたというわけです。

 もちろんガソリン代高騰などの背景もありますが、いずれにせよ「コストダウンで車両価格を抑えることがすべて」という時代ではないということが分かります。

 ちなみにこのところタイでは、新車販売におけるBEV比率が10%程度で、これは日本(2023年通年で2.3%)を大きく上回ります。そういった市場環境の変化もあり、三菱は「(タイをメイン市場とする新型ピックアップトラックの)トライトンにも電動モデルを設定する必要があると考えている」と同社の加藤社長が述べているほどです。

 筆者はエクリプスクロスへのHEVモデル追加で、改めて東南アジアにおける電動化ニーズと環境意識の高まりを実感しました。

 ちなみに同社における2022年度のグローバル販売台数最上位は「トライトン」、そして2位は「アウトランダー」です。

 今後、トライトンに電動化モデル(EVもしくはHEV、PHEVなど)が追加されれば、同社の販売ランキング上位は電動化モデルを選択できる車種が占めることとなります。

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Writer: 工藤貴宏

1976年長野県生まれ。自動車雑誌編集部や編集プロダクションを経てフリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWEBに寄稿している。執筆で心掛けているのは「そのクルマは誰を幸せにするのか?」だ。現在の愛車はマツダ CX-60/ホンダ S660。

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