レクサス新型「小さな高級車」登場! 全長4.2m級ボディの豪華内装が凄い?! 「クラス超え」走りは?
新型LBX、気になる走りは?
走りはどうでしょうか。
パワートレインの印象は「電動車感強め」です。形式的には1.5リッター直列3気筒+THSIIと形式的にはヤリス系と同じですが、エンジンは音・振動を抑えるためにバランサーシャフト付。
ハイブリッドシステムを含むトランスアクスルは、高出力なノア/ヴォクシー用の第5世代、バッテリーは大電流を流せるバイポーラ型ニッケル水素とLBX専用です。
発進時はEV走行ですが、アクセルをかなり踏み込んでもエンジンが始動しない粘り強さを実感。
ハイブリッド走行時もモーターアシストが強めで、アクセルをグッと踏み込むようなシーンでも回転を上げずにトルクを活かした加速は、1.5リッタークラスとは思えない余裕を感じました。
フィーリング面もEVモード→HEVモード切り替え時の唐突感や“間”の少なさに加えて、エンジンが苦手な領域をモーターが常に先回りしてアシストする感覚など、エンジン/モーターのシンクロが今までのTHSIIとは別次元。
その結果、日常域では「ビヨーン」と間延びあるラバーバンドフィールは顔を出さない所か、応答性の良さやダイレクト感、小気味良さを感じたほどです。
エンジン音は室内の遮音性の高さも相まって3000rpm以下ではエンジンはより遠くで回っている印象で完全に黒子。
それ以上の回転域では3気筒特有のビートは聞こますが、軽やかなサウンドで振動やザラっとした感触は抑えられているので質感も高いです。
欲を言えば追い越しなどのシーンでもう少しパンチがあるいいですが、個人的には世にある3気筒の中で最も品があるユニットに感じました。
燃費は市街地~高速~ワインディングを含め170kmを走って20km/L前後でしたが、日本よりもハイペースで走ったので、それを考えれば上出来かなと。
フットワークはどうでしょうか。
プラットフォームは形式上GA-Bですが、ボディ骨格はルーフパネル薄板化/フードのアルミ化(低重心化に寄与)はもちろん、センターピラーに2.0GPa級、フロントバンパーリインフォースメントに1.8Ga級と上級モデルでも採用例の少ないホットスタンプ材を惜しげもなく採用しています。
更に骨格の接合は短ピッチ打点遠技術や構造用接着剤の採用部位を拡大、局部剛性アップも積極的に行なっています。遠藤氏の言葉を借りると、「GA-Bの欠片もないくらい変更」だと言います。
走らせての印象は「軽快なのに重厚」です。
直進時はワイドトレッドや大きく取ったキャスター角に加えて、PDAの操舵アシストも相まって、コンパクトサイズである事を忘れるドッシリ感とビシーッと真っすぐ走る安定性は、個人的にはUXを超え、むしろNX/RXに近い印象を持ちました。
風切り音もロードノイズもかなり抑えられており、会話明瞭度もコンパクトモデルとは思えないレベルです。
ハンドリングはレクサスが目指す「すっきりと奥深く」がより忠実、より色濃く再現されていると感じました。
ちなみにすっきりは「雑味を取り除き本質追求する」、奥深くは「人に頼らず、路面を選ばず、環境を問わない」を意味するそうです。
ステア系はダイレクト感と滑らかさのバランスが絶妙。操舵力はコンパクトモデルらしく軽めの設定ですが、直結感の高さに加えていいベアリングを回るような抵抗感の無さとスムーズさで、扱いやすいけどコントロールのしやすいフィールに仕上がっています。
コーナリング時は操作に対してスッとノーズがインを向く回頭性の高さは「君はFスポーツなの?」と思うレベル。また、旋回中はFF横置きを感じさせない前輪依存度の少ないボディコントロールに驚きます。
よほどRの厳しいコーナー以外はオンザレールで、「君はDIRECT4なの?」と思うくらいのいい姿勢で曲がってくれます。
快適性は他のモデルのFスポーツくらいのイメージです。ストロークは抑え気味でショックを素早く抑えてバネ上のフラット感を重視したセットですが、路面の凹凸の入力のいなし方(カドが丸い)やスムーズな足の動き(抵抗感が少ない)、スッキリとした減衰感(フワッとしない)など、引き締まっていますが優しさがあるので、多くの人は「乗り心地いいよね」と感じるでしょう。
ただ重箱の隅を突いていくと、波状路が続くような状況だと振動を抑えきれずヒョコヒョコした動きが時おり顔を出す事も。
この辺りはトーションビームのリアサスの構造上の影響もあると思いますが、逆にトレーリングアーム式2リンクダブルウィッシュボーンを採用した四駆(E-Four)だとどうか。気になる所です。
このように走りの一体感や意のままの操作性に関しては上級モデル顔負けの実力で、まさに走りも「ブレイクスルー」しています。
ただ、LBXの凄さはいい意味でクルマがそれを声高らかに主張していない事です。結果としてスポーティな走りなのですが、走っている時はアドレナリンが出る事はなく、むしろ心は冷静かつ落ち着ついたままです。
このようにLBXの走りの実力はホットですが、ドライバーは常にクールでいられます。まさに豊田氏の言う「本物を知る人が素の自分に戻れ、気負いなく乗れる」モデルにふさわしい仕上がりと言えるでしょう。
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LBXはレクサスラインアップの中では最も小さなモデルですが、今回試乗してみてクルマ全体で兄貴分のモデル以上のこだわりが凝縮されている事が解りました。
SNSでは「ヤリスクロスより200万高い」と揶揄される事も多々ありますが間違いなく別のクルマであり、むしろ他のレクサスモデルとの共通性のほうが高いです。
今までありそうでなかった“真”の小さな高級車。レクサスのゲームチェンジャーになるのは間違いないでしょう。
ちなみに2024年1月に開催される東京オートサロン2024では、より運転を楽しみ、非日常の高揚感を味わえるパワートレインを強化したパフォーマンスモデルを出展予定とあります。
ネットでは色々なウワサが出ていますが、聞くところによると今回のLBXとはちょっと違い、「末っ子はヤンチャ」を解りやすいく体現したドライバーもホットになれるモデルと言われています。こうご期待です。
Writer: 山本シンヤ
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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