なぜ未だに「ジムニー」人気が絶えない? 登場5年経過もなお「納車1年待ち」異例のヒットの理由は

ジムニー人気の裏には他車の価格アップも関係か?

 ジムニーが人気を高めた一番の理由は「クルマ自体の魅力が増したこと」にあります。

 外観は1970年に発売された初代ジムニーを連想させる直線基調のデザインになり、悪路向けのSUVらしい力強さを感じさせます。内装もブラックで、メッキ類は少なく抑えて渋い印象です。

ジムニーとジムニーシエラ
ジムニーとジムニーシエラ

 そして従来と同じく、耐久性の優れたはしご型のラダーフレームが採用され、悪路で走破力を高められる副変速機を備えた後輪駆動ベースのパートタイム式4WDが採用されています。サスペンションも4輪すべてが車軸式で、悪路の走破に重点を置きました。

 このシンプルで力強い外観と内装は、ラダーフレームや悪路向けのサスペンションと親和性が高く、ジムニーの本格的な悪路向けSUVとしての魅力を際立たせています。

 こういったジムニーの特徴は今に始まった特徴ではありませんが、ほかのSUVが大きく変わりました。それがジムニーシリーズが人気を高めた2つ目の理由です。

 冒頭で述べた通り、今はSUVの車種数と売れ行きが増えましたが、それはすべて乗用車のプラットフォームを使う前輪駆動ベースです。これらが増えた結果、悪路指向の強い野性的なジムニーシリーズの価値が際立っています。

 もしも乗用車のプラットフォームを使ったSUVが流行していなかったら、ジムニーシリーズの売れ行きもここまで増えなかったでしょう。

 ジムニーシリーズが人気を高めた3つ目の理由は、SUVを含めた日本車の価格高騰もありです。

 今から20年ほど前(2003年)は、日産初代「エクストレイル S・4WD」の価格が202万円、スバル2代目「フォレスター X20」は195万円、トヨタ2代目「RAV4・5ドア2.0X・4WD」は207万円で販売されていました。200万円前後の価格帯に、魅力的なミドルサイズSUVが集まっていたのです。

 ところが今は、価格が一番安いグレードでも、エクストレイルが351万円、フォレスターが306万9000円、RAV4が293万8000円と、この20年ほどの間に1.4倍~1.7倍まで値上げされたのです。

 その一方で現在の日本の平均所得は20年前を下まわるため、今でもSUVを選ぶ時に価格を200万円前後に想定するユーザーが多いです。

 そこで有力候補になるのが、現行型で魅力を高めたジムニーシリーズです。軽自動車のジムニー「XC」は190万3000円(4速AT)、小型車のジムニーシエラ「JC」でも208万4500円(4速AT)ですから、20年前のエクストレイルやフォレスター、RAV4などと同程度の予算で購入できます。

※ ※ ※

 ジムニーシリーズは、車両自体のデザインや機能に魅力があり、乗用車感覚のSUVが増えたことで個性が一層際立ち、日本車の価格上昇もあってヒットに至りました。

 ジムニーシリーズの高い人気は、今の日本のクルマ選び事情を反映させているといえるでしょう。

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Writer: 渡辺陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。

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2件のコメント

  1. 屠龍の剣 日本人はこの感性をきずいていないが皆魂の奥に持っている、形ばかりの偽物ではなく、その道で最高を目指す、そお云うものが欲しい、

  2. 本格クロカン車なのに何故オンロードしか
    走らない?一部のユーザーしかこのクルマの性能をフルに発揮してない デザインで選ぶなら中身はモノコックボディの2WDでいいじゃない わかって選んでんのかな?

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