まるで乗用車!? 「キャンピングカー」の乗り心地を“極上”にする新システムがスゴい! カヤバの新たな取り組みとは?
東京キャンピングカーショー2023において、カヤバが新システムを搭載したキャンピングカーを公開しました。どのような仕組みが採用されたのでしょうか。
なぜカヤバがキャンピングカーを手掛けた?
ショックアブソーバー大手のカヤバ(KYB)が、キャンピングカー市場への取り組みをさらに拡充させ、「フルアクティブサスペンション」を実車に搭載しました。
いったい、どのようなものなのでしょうか。
最近はヤングファミリーからシニア層まで、キャンピングを気軽に楽しむことがトレンドとなっており、キャンピングカーも注目されています。
2010年代半ば頃から、アウトドア志向の趣味などでキャンピングカーの需要はジワジワと上がってきていたのですが、コロナ禍となってから、キャンピングカー市場は一気に火が付いた印象があります。
密を避けて家族や仲間うちで楽しめる空間として、あるいはリモートワークの拠点として、そして新型コロナ感染症のワクチン接種用の移動施設としてなど、これまでになかったキャンピングカーのユースケースが出てきたのです。
そんなキャンピングカーには、さまざまなバリエーションがあります。
一般社団法人 日本RV協会によると、軽自動車を使った「軽キャン」、バンやミニバンをベースに内装を架装した「バンコンバージョン(バンコン)」、キャブ付きシャシに車室空間を架装した「キャブコンバージョン(キャブコン)」、専用のベアシャシ(フレーム、駆動系、エンジンのみ)にボディ全ての架装する「フルコンバージョン」、バスやマイクロバスをベースとする「バスコンバージョン」、そのほかにはけん引タイプの「キャンピングトレーラー」などあります。
実は、こうしたキャンピングカーに、カヤバはショックアブソーバーをすでに提供しているとのこと。ただし、あくまでも「縁の下のサポーター」という立ち位置だったことから、キャンピングカーユーザーにとってカヤバの存在を意識することはあまりなかったかもしれません。
そんななか、2023年7月1日と2日に東京ビッグサイトで開催された東京キャンピングカーショー2023で、カヤバは「カヤバキャンピングカーコンセプト」を公開。
トヨタ「ダイナ」をベースとした同モデルの最大の特徴は、ボディ後部がカヤバの油圧システムによって縦方向と横方向に車内空間が拡張するシステムを搭載するところにあります。
これは、ロボット用などで使う高付加価値の小型ピストンポンプとバルブを使って各所に油圧を送る仕組みとなっており、約100kgの可変ボディ分を支え、縦方向に60cm、横方向に40cm動きます。
また、このキャンピングカーには、電子制御サスペンション「Smart IDC(仮称)」を装備しており、専用のスマートフォンアプリを使って、ドライバーが路面の状態に応じて減衰力を設定できます。
可変の度合は、0%~100%としており、さまざまな走り味に変化させることが可能です。
こうした電子制御サスペンションをさらに進化させたのが、今回初公開された「フルアクティブサスペンションシステム」です。
この新システムは「カヤバの油圧、サスペンション、制御技術を結集。まるで走行していることを忘れるかのような体験。将来のモビリティにおける究極の快適・安心空間の実現を目指す」と紹介されており、搭載される車両は、メルセデス・ベンツ「スプリンター」をベースにドイツの高級キャンピングカーメーカーであるハイマー社が仕上げたモデル。
もちろん、ノーマルの状態でも操縦安定性や乗り心地を追求したクルマではありますが、昨今のキャンピングカーユーザーは、さらにもう一歩先に進んだ「乗用車のような乗り心地」を求める声があるようです。
実車の前には、フルアクティブサスペンションの構成部品として、ショックアブソーバーと油圧システムが展示され、またテストコースでのさまざまな実験映像を紹介。
例えば、クルマの運動特性の基本である、「ピッチ」「ロール」「ローテーション(ヨー)」という3要素に加えて、重量が大きなキャンピングカーで課題である上下の揺れ「バウンシング」において、フルアクティブサスペンションの効果のアリ・ナシで、圧倒的な差を画面上で確認することができました。
カヤバ関係者によると「路面からの力の入力をできるだけ早く把握して減衰力を最適化している」ということです。
映像を見ると、まるで「路面状況を先読み」しているかのように、実に自然な動きをしていることがわかりました。
量産化については、前述のスマートフォンアプリを使った可変式ショックアブソーバーも含めて「高付加価値な商品に対する理解が深い、キャンピングカーユーザー(または事業者)の声をしっかり受け止めた上で検討していきたい」という前向きな姿勢を示しました。
ショックアブソーバーなどの足回りパーツについては、量産車向けでは大量に生産されます。
ただし、部品メーカーにとって収益性が高いアフターマーケット向けとして近年、需要が伸び悩んでいる状況であるなか、キャンピングカー市場は足回り部品メーカーにとっては今後、大きなチャンスになるのかもしれません。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。
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