「軽商用車」なぜMTが根強く残る? 新車の99%はAT車なのに「軽トラ・軽バン」はいまだにMTが主流な訳

昨今の新車販売は99%がAT車といわれるなか、軽商用車に関してはMT車の比率が高く、根強い人気があります。なぜ軽商用車はMTが好まれるのでしょうか。

軽トラユーザーの多くがMTを選んでる!? なぜ?

 現在、日本で販売されるクルマのAT(オートマチックトランスミッション)車(CVT車など含む)の比率は99%だといわれています。趣味性の高いモデルを除き、ほとんどのモデルがAT専売となっているのが実状です。
 
 しかし、MT(マニュアルトランスミッション)車を未だに残していることが多いのが、バンやトラックといった商用モデルで、なかでも「軽商用車」では多くのモデルにMT車が設定されています。
 
 なぜ軽自動車の商用モデルにはMT車が残っているのでしょうか。

軽商用車ではMTが根強い人気(写真はホンダ「N-VAN」の6速MT車)
軽商用車ではMTが根強い人気(写真はホンダ「N-VAN」の6速MT車)

 MTのメリットは軽量で伝達効率に優れることが挙げられます。少し前までは「MTのほうが燃費性能が優れている」という声もありましたが、CVTの普及やトルコンATの進化もあり、燃費性能に関しては同等か場合によってはATのほうが優れていることも増えてきました。

 また、ストップ&ゴーが多い日本の道路環境では、操作性の観点からATのほうが好まれるという事情もあります。

 一方で、軽バンや軽トラックといった軽自動車の商用モデルは依然としてMT車が残されています。

 例えば、スズキの軽トラック「キャリイ」は、2022年度は購入者の約5割がMT車を選択したとのこと。また、ライバルであるダイハツ「ハイゼットトラック」も3割から4割がMT車だといいます。

 軽バンにもMT車はラインナップされていますが、とくに軽トラックではMTを残してほしいという声が根強いようです。

 理由として、軽トラックは畑などの未舗装路を走ることが多いからとのこと。これは農業や林業、建設業で軽トラックを愛用しているユーザーからの要望であり、「未舗装路×斜面」というシチュエーションでは、660ccの限られたエンジン性能を引き出すMT車の伝達効率やダイレクト感が重宝されているということでしょう。

 一方で、商用モデルといえども、普通車ではMT車のラインナップが減っています。

 例えば、商用モデルとして人気の高いトヨタ「ハイエース」は、2017年の改良で新たなディーゼルエンジンが設定されましたが、このエンジンの性能を最大限引き出して滑らかな加速フィーリングと低燃費を実現するには6速ATが最適解と考えられ、MT仕様は設定されていません。

 重い荷物を積載することが多い商用モデルならば、エンジンブレーキが利くMTのほうが良いという声もありそうですが、2017年の改良では6速ATはマニュアルの感覚に近いシーケンシャルシフトマチックが採用されたこと、開発効率の観点などからもMT車がラインナップにない理由となっているそうです。

 また、ハイエースのライバルといえる日産「キャラバン」においても。現在はMTが設定されていません。競合他社の設定状況や搭載率の確認などをおこなった結果、2021年のビッグマイナーチェンジでMTの設定を終了するという判断がされたそうです。

 これらの商用バンはレンタカーや会社などの法人でもニーズの高いクルマということもあり、多くの人が運転する機会があるといえます。

 近年、新しく運転免許を取得する人では「AT限定免許」の人が多くなっているなか、普通車の商用バンはほとんどAT車しか売れないといった状況になっており、MTの廃止はそういった背景も考慮した結果といえるでしょう。

※ ※ ※

 ダイハツは2021年末、マイナーチェンジした軽トラック「ハイゼットトラック」と、フルモデルチェンジした「ハイゼットカーゴ」「アトレー」向けに軽自動車初のFR用CVTを採用しました。

 このCVTは燃費や静粛性が優れているのはもちろんですが、軽トラックの要の装備のひとつである、4WDやスーパーデフロックにも対応したCVTとなっています。

 軽トラックではまだまだMTが主流の時代は続きそうですが、技術の進化により、ATでも多くの人が軽トラックとして満足できる日が来るかもしれません。

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Writer: 西川昇吾

1997年生まれ、日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。大学時代から自動車ライターとしての活動をスタートさせる。現在は新車情報のほか、自動車に関するアイテムや文化、新技術や新サービスの記事執筆も手掛ける。また自身でのモータースポーツ活動もしており、その経験を基にした車両評価も行う。

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