バッテリー上がり時の緊急手段 マニュアル車のエンジン「押しがけ」、知ってる?
MT車で運転免許をとった人は、教習でエンジンの「押しがけ」を習ったことがある人がいるかもしれません。しかし、「知らない」という人も。そもそも昨今のクルマで「押しがけ」は可能なのでしょうか。
教習で教える? 教えない?
MT(マニュアル)車で免許を取得した人であれば、バッテリーが上がってエンジンがかからないときの緊急手段として「押しがけ」を知っている人がいるかもしれません。
「押しがけ」は文字通り、人力でクルマを押してエンジンをかける方法です。ブースターケーブルを介してほかのクルマから電気を供給してもらう必要がなく、いざというときには役立つ方法ですが、MT車で免許を取得した人でも知っている人と知らない人がいるようです。フジドライビングスクール(東京都世田谷区)の田中さんに、その背景を聞きました。
――エンジンの「押しがけ」は、教習では教えないのでしょうか。
教習で教えることはないと思います。エンジンを切ったうえでのやり方ですから、ブレーキがほとんど利きませんし、いまのクルマはパワーステアリングですからハンドルも回らないので危険です。教えたとしても「こうした方法もありますよ」という程度で、実演などしないと思います。
――そもそも押しがけとは、どのように行うのでしょうか?
キーをオンの位置にして、ギアを2速か3速に入れ、クラッチペダルを踏んだ状態で車体を後ろから押してもらいます。5~10km/hくらいの速度がついたらクラッチペダルを上げつつアクセルペダルを踏んで、エンジンを始動させます。
――原理としてはどういうものなのでしょうか?
MT車はエンジンの動力をクラッチ、変速機(ギア)を介してタイヤに伝えますが、押しがけはこれと逆の原理です。タイヤの回転をエンジンに伝えてピストンを動かし、エンジンを駆動させる方法です。
――AT(オートマチック)車では無理なのでしょうか。
変速機とエンジンが直結していないため、原理的に不可能です。