またハンマーで壊される? アメリカでの日本車販売、怖いのは関税より「バッシング」
歯に衣着せぬトランプ米大統領が、日本車および日本のクルマ市場をやり玉に挙げています。それがエスカレートすれば「ジャパンバッシング」が再発しかねないでしょう。
「ジャパンバッシング」の悪夢再び?
アメリカのトランプ大統領が自動車メーカーに対して、厳しい注文をつけています。「メキシコに自動車工場を造るのはけしからん。メキシコで造ったクルマをアメリカに持ってこうようというのなら、高い関税をかけてやる」「日本車ばかり売れるのは公平じゃない」など、メキシコに工場を持つメーカーへの牽制だけでなく、貿易の不公平さまであげつらっています。
そうした発言で思い出すのは、1980年代の日米貿易摩擦です。当時は日本からアメリカへ大量の日本車が流れ込み、アメリカ国内自動車メーカーの苦境と共に、一気に「日本車憎し」という雰囲気になりました。労働者が日本車をハンマーでたたき壊すパフォーマンスまであり、本当に驚かされたものです。
しかし、日本の自動車メーカーは、その解決策としてアメリカへの工場進出を加速させました。「日本車が売れると、アメリカの労働者の仕事がなくなる」というなら「アメリカ本土で生産して、アメリカ人を雇えばよい」と応えたのです。結果、今ではトヨタはアメリカに9か所の生産拠点を構えます。ホンダは7か所、日産は5か所、スバルも1か所の工場を持っています。
つまり、トランプ大統領が「国内の雇用を守るためにメキシコからの輸入車に高い関税をかける」と主張したところで、実際には日本車メーカーのほとんどがアメリカ国内に工場を持っていますから、たとえ高い関税が本当に実現しても、最終的には対応が可能なのです。
確かに、人件費の安いメキシコの工場でクルマを造って、そこからアメリカ本国へ輸出するという方法は、最近の自動車メーカーのトレンドでした。その方法論が潰されるのはもちろん痛手ですが、致命傷にはなりません。ただ、アメリカに工場がなく、メキシコに工場を造ったアウディとマツダの2社は、事態がどこに落ち着くのか不安でたまらないはずです。