「電動キックボード」パリでは”9月”から禁止へ! 日本では“7月”からルール改正? 電動キックボードの扱いどうなっていくのか

フランスのパリ市は2023年4月2日、電動キックボード・シェアリング事業継続の是非を問う市民投票を実施しました。結果、反対が9割となったことを受け、市内すべてのシェアリング事業を今年9月から禁止する見通しといいます。日本でも度々話題になる電動キックボードですが、国内でもその影響はあるのでしょうか。

パリ市は今年9月から禁止へ! 日本への影響は?

 フランスのパリ市が2023年4月2日に電動キックボード・シェアリング事業継続の是非を問う市民投票を行った結果、反対が9割に達しました。

 投票率は8%程度とかなり低いことが気になりますが、パリ市のアンヌ・イダルゴ市長は今回の住民投票の結果を重んじ、現在3事業者が市内で行っているすべてのシェアリング事業を今年9月から禁止する見通しと報じられています。

パリで実際に運用されている電動キックボード
パリで実際に運用されている電動キックボード

 パリ市はこれまで、電動キックボード普及の牽引役というイメージが強かっただけに、今回の施策の方向転換は、世界の国や地域における電動キックボードのあり方に対する問題提起になったことは間違いありません。

 この結果が日本に及ぼす影響はあるのでしょうか。まずは、直近での日本での電動キックボードの動向について説明します。

 2023年4月現在、電動キックボードを巡っては、国が進める産業競争力強化法における実証試験があり、また個人所有の電動キックボードも都市部を中心に徐々にその数が増加しています。

 その上で、大きな話題は「新しい規定の電動キックボード」の登場です。

 2023年7月1日に改正道路交通法の施行に伴い、既存の一般原付(原動機付自転車)扱いの電動キックボードに加えて、新たに「特定小型原動機付自転車」としての電動キックボードの使用が可能になります。

 特定小型原動機付自転車は、16歳以上ならば免許不要で、ヘルメット着用も努力義務となります。道路交通法上は、自転車と同じ軽車両の扱いです。

 また、時速6kmでの速度抑制機能とそれに同調する点滅式ライト機能がある機種の場合、「特例・特定小型原動機付自転車」という扱いとなり、歩道での走行も可能です。

 時速6kmという速度設定は電動車いすと同じで、道路交通法上は歩行者扱いとなります。

 このような法改正が、産業競争力強化やインバウンドを意識した交通ルールの国際標準化の観点で一気に加速したため、新しい電動キックボードに対して一般的な消費者の感覚が追いついていない印象があります。SNS、オンラインメディア、そしてテレビやラジオなどの報道番組では電動キックボードの安全な運用について賛否両論があるのが実状です。

 そうした中、今回のパリ市の市民投票が実施されたため、日本時間4月3日朝からテレビニュースやオンラインメディアで「パリ市で電動キックボード・シェアリングが9月から禁止へ」というニュース報道が目立ったのだと思います。

 では、日本では今後、電動キックボードに対してどのような姿勢で望むのが良いのでしょうか。

 筆者(桃田健史)の私見では、キーポイントは「共生」という観点での「まちづくり」だと考えます。

 電動キックボードのユーザーから見れば、電動キックボードは数百mから数kmの、いわゆる“チョイ乗り”向けの乗り物として重宝されています。都市部では、タクシーだと1~2メーター分の移動の代替、また路線バスや地下鉄の待ち時間や乗り場までの移動時間を気にしなくて良い乗り物、といったメリットがあります。

 また、観光地では外の風を感じて、のんびり探索できる乗り物という認識があります。

 一方で、クルマの運転者からは「もしもの場合を考慮しなければならない、新しい乗り物が増えた」という認識を持つ人が少なくないでしょう。

 歩行者からは「歩道やその周辺では、危ない運転をする自転車もいるのに、そこに新しい電動キックボードも入ってくると、ちょっと怖い」という感覚も持つかもしれません。

 こうした電動キックボードのユーザーと、他の交通参加者が、それぞれの立場を尊重し、公的な空間を共有するという意識が必要であることは言うまでもありません。

 さらに、国や地方自治体、また警察は、そうした様々な交通主体が上手く交わるような、また、場合によっては完全に分離するような、地域特性にあった道路計画や地域設定を深く考えていかなければならないのは、当然のことでしょう。

 パリ市はこれまで、そうした共生するまちづくりを進めてきました。

 まず、市内全域の一般道路で、自動車の最高時速を30kmとするゾーン30を実施しています。日本でも各地にゾーン30がありますが、都市全体がゾーン30という大胆な低速走行社会は実現していません。

 さらにパリ市では、歩行者専用道路と、歩行者優先道路という考え方を市内で適宜設定してきました。その中で、電動キックボードにはGPSを使い最高速度を時速10kmに抑制するソフトウエアを採用するなどして、交通参加者のなかで電動キックボードが安全に使用するための仕組み作りをしてきたのです。

 それでも、二人乗り、飲酒運転、不法駐車などが課題となり、また利用者数が増えるにつれて死傷者の数も増加してきました。

 そうした社会状況に対して、パリ市は市民の声を市民投票という形で聞いたのです。

 日本においては、パリ市が行ってきた電動キックボードに対する政策や、その後の修正案などを十分に参考にすることは当然のことです。

 その上で、日本の社会の実状にあったさらなる法改正を躊躇せずに行うこと、また地域によっては新たなる条例の制定や既存の条例の変更など、自動車、二輪車、自転車、歩行者、そして各種電動キックボードなどの新しいモビリティが共生できるまちづくりを、住民が協議に参加できる形で一歩一歩進めていることが大事だと感じます。

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Writer: 桃田健史

ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。

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1件のコメント

  1. お上は、ノーヘルでたくさんの死者が出てから考えるのでは………😅

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