なぜ日本や世界で「TAXi」と共通して呼ぶのか? まさかの古代ローマ時代にまで遡るその語源は? 意外な歴史背景とは
乗った区間に対して決められたお金を支払って利用するタクシー。日本全国のみならず世界各国で見かけられる乗りものですが、なぜ「タクシー(taxi)」と呼ぶのでしょうか。
「タクシー」は略語だった?古代ローマ時代にまでさかのぼるその語源とは
世界中で見ることのできるタクシーは、1886年に世界初の自動車が登場してからまもなくして生まれたとされています。
100年以上の歴史を持つタクシーですが、その語源をさかのぼると、古代ローマ時代にまで行き着くことができるようです。
1912年、日本最古のタクシー会社であるタクシー自働車株式会社が、現在の東京都千代田区有楽町で創業しました。
フォード「モデルT(T型フォード)」を用いたこのタクシーは、現在のタクシー同様に料金メーターを搭載しており、最初の1マイル(約1.6km)を60銭、その後0.5マイル(約800m)ごとに10銭ずつ料金が上がっていくというシステムが採用されていたといいます。
海外を見ると、1890年代後半にドイツや英国で登場したものが、最初期のタクシーと言えるようです。
世界初の自動車のひとつと言われるベンツ「パテント・モーターワーゲン」が世に送り出されたのが1886年であるため、そこからおよそ10年あまりでタクシーが登場したことになります。
現代では、ほとんどすべての国や地域でタクシーを見ることができ、ビジネスや観光、そして日常の足として世界中で活躍しています。
そんなタクシーですが、その語源についてはあまり知られていません。
英語の語源辞典で「タクシー(taxi)」を引くと、「タクシーメーター・キャブ(taximeter cab」の短縮形であると説明されています。
「キャブ(cab)」はフランス語の「カブリオレ(cabriolet)」の略ですが、現代のようにオープンカーというニュアンスはなく、馬車の一種を指していたことから転じて、漠然と自動車意味する言葉として使われていたようです。
つまり、「タクシー」とは、「タクシーメーター・キャブ」の略であり、「タクシーメーター・キャブ」は「タクシーメーターの備わった自動車」を意味しています。
日本語で「タクシーメーター」というと、「タクシーに備わっているメーター」というニュアンスが強くなりますが、実際には、「タクシーメーターがある自動車」のことを「タクシー」と呼ぶのが正確なようです。
英語の「taximeter」は「距離と運賃を記録する自動メーター」という意味を表すひとつの単語ですが、もともとはフランス語の「taximetre」に由来しています。
さらに遡ると、「taxi」の部分は古代ローマ時代に使われていたラテン語の「tango」に行き着くようです。
「触れる」という意味を持つ「tango」から、「評価する」という意味の「taxo」という言葉が生まれ、それが後に「計測する」という意味を持つ「taxi」へと変化したと考えられています。
「触れる」こと、つまり食べ物や生活用品などを手で触ることは、それらを「評価する」ことにつながります。そして「評価する」ことは、距離や運賃などを「計測する」というニュアンスを含みます。
これらをまとめると、「(距離や運賃などを)計測する」という意味を持つ「taxi」と、同じく「計測するもの」という意味を持つ「meter」と合わさって「taximeter」となったうえで、「自動車」を意味する「cabriolet」と組み合わさって「taximeter cabriolet」となったと考えられます。
そして、「taximeter cabriolet」が短縮され、現代で用いられている「taxi」になったということのようです。
※ ※ ※
「タクシー」と同じ語源を持つ言葉に、「tax(税金)」があります。
現代の英語には、「触れることのできる」という意味の「tangible」という語がありますが、これもラテン語の「tango」に由来しています。
いまでこそ、税金は様々な物や行為に対して課されていますが、古くは有形資産、つまり収穫された農産物などの「触れることのできる(tangible)」物に対して課されていました。
タクシーと税金は、一見するとまったく異なるもののように思われますが、「一定の基準によって計測される」という点では共通しています。
そう言われると、タクシーメーターに表示される金額がどんどん大きくなっていく時の心境と、自動車税などを支払う時のあの心境も、どこか似ていると言えるかもしれません。
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