なぜ「落書き放置車両」撤去しない? 羽田空港「P5」に6台も放置中? 管理会社がすぐに対応出来ない理由とは

羽田空港の駐車場は20日を超えたらどうなる? 決められたルールとは

 長期間許可なく駐車しているクルマに対する対応について、東京国際空港ターミナル株式会社が作成した「東京国際空港第五駐車場 管理規程」には次のように記載されています。(一部抜粋)

 1)20日間を超えて駐車していた場合、管理者は利用者に対して通知又は駐車場における掲示の方法により指定日までに車両の引き取りを請求できる。

 2)車両の引取りをしないまた、利用者を確知できない場合、管理者は車両の所有者等(自動車検査証等に記載された所有者及び使用者)に対して通知又は駐車場における掲示の方法により管理者が指定する日までに車両を引取ることを請求し、これを引き渡すことができるものとする。この場合において、利用者は当該車両の引渡しに伴う一切の権利を放棄したものとみなし、管理者に対して車両の引渡し その他の異議又は請求の申し立てをしないものとする。

 3)管理者は指定日を経過した後、車両について生じた損害については、管理者の故意又は重大な過失によるものを除き、賠償の責を負わないものとする。

 要約すると、「管理者は利用者に対して車両引取りの請求ができるが、利用者が不明な場合は車検証上の所有者等に対して車両引取りの請求が可能」となります。

放置車両のひとつとなるトヨタ「アベンシス」には裁判所からの告示書が貼られていた(撮影:加藤博人)
放置車両のひとつとなるトヨタ「アベンシス」には裁判所からの告示書が貼られていた(撮影:加藤博人)

 また、車両の調査や車両の移動、売却や廃棄についても規定されています。

 1)管理者は利用者又は所有者等を確知するために車内を含めて必要な調査を行うことができる。

 2)管理上支障があるときは、その旨を利用者や所有者等に通知や掲示をして車両を別の場所に移動できる。

 3)車両引取りの催告をしても期間内に様々な理由で引取りができなかった場合、催告をした日から90日を経過すれば、利用者に予告したうえで、公正な第三者を立ち合わせて車両の売却、廃棄その他処分をすることができるものとする。

 要約すると、「放置車両の利用者、使用者に関する情報を知るために車をあけて、車検証の内容や車体番号などを確認できる」「車両引取りの催告から90日過ぎても連絡がない場合は裁判を起こすなどして車両の売却や廃棄などの処分が可能」ということになります。

※ ※ ※

 ただし、不法駐車の移動や処分などに関してよく出てくる言葉があります。

 それは「自力救済禁止」というキーワードです。

 民法で明確に規定されているわけではありませんが「条文にはない原則の一つ」と解されており、裁判などの公的な手続きを経ることなく、土地の所有者(駐車場の管理者)などが自力でレッカー移動させたり、車両を廃棄してしまうことはできません。

 利用者や所有者等と連絡が取れない場合や所有者の協力が得られない場合には、車両の撤去や土地明渡などを求めて提訴し、裁判所の判決を取得する必要があります。

 前述のように羽田空港に長年放置されているクルマが存在するのは、撤去のための公的な裁判手続きをしている最中かもしれません。

 また、裁判には時間も費用も掛かり、勝訴したとしても車両の撤去や処分の費用は羽田空港側が支払う可能性が高いでしょう。

 引取りもしない、連絡も取れない利用者や所有者から、それらの費用を得られる可能性はとても低いと考えられます。

 駐車場利用に著しく支障がある状況でなければ、そのままにしておいたほうが良いとの判断なのかもしれません。

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Writer: 加藤久美子

山口県生まれ。学生時代は某トヨタディーラーで納車引取のバイトに明け暮れ運転技術と洗車技術を磨く。日刊自動車新聞社に入社後は自動車年鑑、輸入車ガイドブックなどの編集に携わる。その後フリーランスへ。公認チャイルドシート指導員として、車と子供の安全に関する啓発活動も行う。

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