EV急増で充電問題どうなる!? 家庭用の普通充電器は販売好調! 高出力な急速充電器の課題とは?

高出力な急速充電器の課題とは?

 急速充電器については、高出力仕様への注目が集まっています。

 近年、EVは航続距離を延ばすため電池容量が70kWhから100kWhと大型化する傾向があり、それをより短い時間で充電するためには、急速充電器の高出力化が必要という考え方が欧米や中国を起点に広まっています。

充電器問題、どうなる?
充電器問題、どうなる?

 急速充電器の規格は国や地域によってバラバラで、日本を中心とするCHAdeMO(チャデモ)、欧米それぞれの仕様があるCCS(コンボコネクター方式)、中国のGB/T、そしてテスラ独自のスーパーチャージャーがあります。

 日本では、CHAdeMOの主流は50kWで、その一部が90kWになってきており、また輸入車メーカー系の販売店では150kWの設置を促進しているところです。これらは直流出力を使う方式です。こうした高出力化に関して課題は大きく3つあるようです。

 ひとつ目は、技術的な課題です。国が定める電気設備の技術基準での450Vという制限値と、それに伴う電流値によるケーブルの仕様設計の関係です。

 具体的には、出力150kWを450Vで充電すると、150kW(15万W)÷450V=333A、という電流値になる計算です。これがケーブルに流れると発熱することが課題となっています。見方を変えると、ケーブルの性能によって、充電器の出力が制限されてしまうということです。

 現状で、取り回しがある程度しやすい、太さや重さのケーブルは125A程度だといわれていて、つまり450V×125A=50.26kWということになり、現在の充電器の主流が50kWという考え方が成り立ちます。

 これを、200A対応のケーブルにしたり、または複数口で利用した際の制御方法を工夫すると、実質的に450V×200A=90kWが可能になります。

 90kWが2口あるタイプでは、欧州メーカーなどがラインナップしている180kW対応という急速充電器があります。

 そして、150kW対応にするには、先に説明したように電流値が300Aを超えてしまいますが、一般的にブーストモードと呼ばれる考え方で、一定時間だけ150kWで出力しケーブルの熱上昇が起こる前に出力を絞る方法の充電器が商品化されています。

 または、ケーブルの内部に液体を流して冷却する方法も、海外の充電器メーカーではすでに採用されています。

 こうした出力・電圧・電流との関係で、欧米では電圧800Vの充電器が早くから考案されてきました。電圧を上げれば電流を抑えながら高い出力が可能になり、さらにケーブルを液体で冷却して熱対策をしています。

 日本でも今後、高出力の急速充電器が普及するには、先に実施が決まった消防法に対する規制緩和のほか、「450Vの壁」に対する規制緩和が必要になってくるのではないでしょうか。

 2つ目は、設置費用(イニシャルコスト)です。450Vまでは、200Vから配電することも状況によっては可能だといいますが、450Vを超える場合は中規模な事業施設など向けの6600Vから配電し、個別の電気設備を設置する必要があるため、コストは一気に上がります。

 現在は、国や自治体からの補助金が潤沢にあるものの、EVの普及が進めばいずれ補助金も減額されて足りなくなります。

 そして3つ目は、電気の基本料金(ランニングコスト)です。料金はkWあたりで計算されるため、例えばkWあたり1700円と仮定すると50kWでは月8万5000円ですが、150kWではその3倍となる25万5000円となります。設置した事業者がこうしたランニングコストをどう回収するのか、さまざまなビジネスモデルを考えていかなければなりません。

 こうして見てみると、当面の間はEVコンセントと6kWの普及充電器の普及が着実に進み、一方で、急速充電については全体の数は徐々に増えるものの、場所によって出力の差は大きいままの状態が続きそうです。

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Writer: 桃田健史

ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。

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