トヨタ新型「クラウン」なぜ一部グレードしか納車されない? ユーザーは選びづらい!? 時間差で発売する事情とは

不明なグレードがあるとユーザーが判断しにくい

 ただし新型コロナ禍を発端に納期の遅れが始まる前から、グレードによって生産開始時期の異なる車種もありました。

 例えば「マツダ3」は新型コロナ禍前の2019年5月に発売されましたが、パワーユニットに応じて生産開始時期が違いました。とくに「スカイアクティブX」は、2019年の発表時点では燃費などの数値が不明で、納期も大幅に遅れました。

エンジンのバリエーションが多い「マツダ3」
エンジンのバリエーションが多い「マツダ3」

 そしてマツダ3は2020年11月に早くも改良を実施していますが、この時も改良型の発売時期に差が生じました。改良型の発売時点で、スカイアクティブXと1.8リッタークリーンディーゼルターボはデータがそろっていませんでした。

 このときにはマツダの販売店から次のような話が聞かれました。

「お客さまは車種を決めたら次にグレードを選びます。このときには、全車の性能、装備、燃費、価格などを知ったうえで、ご自分のニーズと予算に合ったグレードを決めます。不明なグレードがあると最適なグレードを判断しにくいのです」

 マツダ車には全般的に選べるエンジンが多く、マツダ3では、ガソリンエンジンが1.5リッター、2リッター、2リッタースカイアクティブXで、1.8リッタークリーンディーゼルターボもあります。ボディタイプもファストバック(5ドアハッチバック)とセダンの2種類です。バリエーションが多く、開発にも時間を要するため、全グレードの一斉発売は困難でした。

 しかも今は新型コロナ禍なので、順番の遅いグレードは、いつになっても発売できない心配があります。

 例えば日産「アリア」は、先行発売した特別仕様車の「リミテッドシリーズ」を終了して今は一般グレードの販売に移りましたが、2022年2月上旬時点では、ベーシックな「B6」しか用意されていません。せっかく開発されたパワフルな4WDの「B9・e-4ORCE」などは購入できない状態であるうえ、一時的にB6の受注も停止しています。

 この状況では、レクサスRXのように、グレードの種類を減らす必要も生じるでしょう。グレードの選択と集中をおこなってコストや納期を合理化するわけです。

 そこで問われるのが、メーカーの国内市場に対する分析能力です。グレードの選択肢を少なく抑えるには、国内のニーズを的確に把握して、需要の高い商品を厳選して投入せねばなりません。

 過去20年ほどの間に、日本のメーカーは、海外市場を重視した商品開発によって国内の売れ行きを下げました。納期遅延などにより、今後の国内市場がさらに冷え込むのか、それとも販売の下降を食い止められるのか、日本メーカーの国内市場に向けた熱意に掛かっているといえるでしょう。

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Writer: 渡辺陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。

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