なぜデザイン激変!? トヨタ新型「クラウン/プリウス」全面刷新で一気に路線変更した意外な理由とは

トヨタを代表するモデルである「クラウン」と「プリウス」は、フルモデルチェンジを機にコンセプトや外観のデザインを大きく変更しました。一体どのような理由があったのでしょうか。

セダン低迷のなかクラウンを継続させる手段とは?

 フルモデルチェンジにはふたつのパターンがあります。ひとつは従来路線を踏襲する「キープコンセプト」、もうひとつは車両の性格まで変える「コンセプトチェンジ」です。
 
 クルマが急速に進化した20世紀にはコンセプトチェンジも多かったですが、今は従来路線を踏襲するキープコンセプトが主流。車内の広さや加速性能などは、進化の過程を経て安定期に入り、環境性能や安全性といったクルマの中身を充実させているからです。
 
 そのためにフルモデルチェンジを実施しても、ボディの基本的なサイズやスタイルは変わりません。この流れは、最近フルモデルチェンジを実施したトヨタ「ノア/ヴォクシー」や日産「セレナ」などを見ても分かるでしょう。

クロスオーバースタイルに刷新されたトヨタ新型「クラウン」
クロスオーバースタイルに刷新されたトヨタ新型「クラウン」

 ところが2022年に登場したトヨタ新型「クラウン」と新型「プリウス」は、珍しく車両のコンセプトや外観を大幅に変更しました。そこには売れ行きの激減という、両車に共通する悩みがありました。

 クラウンの国内登録台数がもっとも多かったのは1990年で、20万8016台に達しています。1か月平均は約1万7300台でしたが、2021年はコロナ禍の影響も受けて約1800台です。およそ30年間でクラウンの売れ行きは10分の1まで下がりました。

 プリウスについては、国内登録台数がもっとも多かったのは3代目で、2010年には1か月平均で約2万6300台、東日本大震災を挟んで2012年にも約2万6500台を登録しました。それが2021年は約5000台ですから、プリウスの登録台数は最盛期の5分の1まで減っています。

 では、クラウンとプリウスが売れ行きを下げた原因を考えてみましょう。まずクラウンにおいてはセダン市場の縮小があります。

 クラウンがもっとも多く販売された1990年頃まではセダンが国内で一番の売れ筋カテゴリーでしたが、1990年代の中盤以降は、トヨタ「エスティマ」やホンダ「ステップワゴン」、セレナなどのミニバンが売れ行きを伸ばしています。

 さらに1998年10月には軽自動車の規格が今と同じ内容に変更され、16車種の新型軽自動車が各社からほぼ同時期に発売。そのために2000年以降は売れ筋カテゴリーが変わり、2022年に新車として売られたクルマは39%が軽自動車だった一方、セダン/ワゴン/クーペは7%にとどまっています。

 セダンの売れ行きが低下したことから、トヨタ「マークX」「プレミオ/アリオン」のようにクラウンを廃止する方法もありましたが、初代モデルが1955年に発売された伝統あるモデルですから、存続することになりました。

 その代わりセダン市場が縮小していることから、カテゴリーは変えなければなりません。また従来のクラウンは、国内中心の売り方で生産台数も限られており、新型は海外でも販売したいということから新型クラウンをSUVに発展させたというわけです。

 しかも1車種では売れ行きが伸びない不安もあるため、複数のボディを用意。従来型からの乗り替え需要も考えて、SUVとは駆動方式が異なる後輪駆動のセダンも開発しました。

 セダンからSUVに発展すると車両のデザインや性格が大きく変わりますが、従来型のユーザーもある程度は新型へ継承したいというわけで、新型クラウンの第1弾は後部にトランクスペースを備えたセダンとSUVを融合させたクロスオーバーにしました。新旧クラウンの架け橋になるモデルです。

 ただし販売がもっとも見込めるのは、今後登場する「クラウン エステート」でしょう。3列目シートも備わり多人数乗車も可能。このように新型クラウンは、クラウンスポーツを含め、売れ筋カテゴリーのSUVを複数そろえることで生き残りを図ります。

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