叩くべきはトヨタじゃない! 規制で足を引っ張りまくる政治や行政を叱咤激励すべきワケ

『トヨタが「世界一」から転落し、日本の自動車産業の「ヤバすぎる大崩壊」が始まる…!』という記事が現代ビジネスに掲載されましたが、その記事に対して自動車ジャーナリスト国沢光宏氏はどう思ったのでしょうか。

なぜトヨタが叩かれる記事が出てくるのか

 現代ビジネスWebにアップされた「トヨタが『世界一』から転落し、日本の自動車産業の『ヤバすぎる大崩壊』が始まる」という記事について、少なからぬ業界関係者から意見を求められた。

なぜか叩かれやすいトヨタだが…その理由にはどのようなものがあるのか?
なぜか叩かれやすいトヨタだが…その理由にはどのようなものがあるのか?

 書いたのは井上久男さんという朝日新聞出身のジャーナリストです。

 ゴーン失脚事案のときに何度か一緒にTV出演してます。自分の考え方をしっかり持った人だ。それだけに反響も大きいのだろう。

 同業者の意見なので良いも悪いもない。数字については間違っていない、と信じる。

 井上さん、自分の意見に持っていく筆力は素晴らしい。

 そういった点からすれば、直球勝負しかできない私よりはるかに頭良いです。

 ただミスリードを招くブブンがいくつかあり、業界関係者はそれについて「ホントなの?」と私に聞いてくる。ミスリードされやすい点だけ取り上げ、解説したい。

 まずタイトルの「トヨタが世界一から転落」という点だけれど、皆さん「ホントですか?」と思うようだ。

 記事によれば「特に落ち込みが激しかったのがトヨタである。乗用車の販売台数では同社の減少幅が最大で、12%減の約125万台だった」とある。

 125万台の内容は不明。未だ発表されていない2022年に於けるメーカー毎の世界販売台数を井上さんの取材ルートで得たのだろう。

 ただそれでも2022年の世界販売台数はトヨタが2位のフォルクスワーゲンと、3位GMの差を広げて1位だと思う。

 というのも2022年11月までの数字でフォルクスワーゲンに挽回不可能な台数差を付けていたからだ。

 もっといえばトヨタの台数は本来なら傘下のダイハツと日野自動車を含めるべきで(トヨタはなぜかトヨタ+レクサスの台数のみ出す)、フォルクスワーゲングループや中国の通用五菱すら含めるGMを圧倒してます。

 本文を読んでいくと「半導体不足は各国共通の事情ではあるものの、22年の中国の新車販売は2%程度伸びた。GMも米国で新車販売を約3%増やし、トヨタを抜いて首位の座を奪い返した。言い訳が許される状況ではない」とトヨタに厳しい。

 GMに抜かれたといっても、2021年は新型コロナで生産調整したGMをトヨタが僅差で抜いたという事情。これといった驚きはない。

 さらに数字のマジシャンぶりが並ぶ。曰く「電気自動車は出遅れた」となり、トヨタの電気自動車「bZ4X」は1か月でリコールになった一方、メルセデスやヒョンデなど輸入車勢が2021年の107倍売れたという。

 数字は正しいけれど、bZ4Xのリコールってハブ(車軸)の問題だし、売れているというヒョンデの台数は2022年で500台ほど。そもそも2021年についていえば販売していない。

 その後、BYDの凄さがトクトクと続く。これは個人の印象なので御自由に。

 この記事の最後に「トヨタが中国企業に『敗北』する日がやってくる…日本の基幹産業を襲う『悲劇的な結末』」という第2弾のお知らせが出る。

 多くの人は「心配だ! 次を読まなくちゃ!」と思うだろう。第2弾もBYDの凄さ紹介なのだけれど、突然豊田章男社長の話が出てくる。

 同業者の池田直渡さんがITメディアニュースに書いた「トヨタは日本を諦めつつある 豊田章男社長のメッセージ」という記事を読んだ結論として「思惑通りに運ばないなら、日本から出ていくぞ」という意思を示したと結論付ける。

 実は池田さんが書いた記事の取材は私も同席していた。豊田章男さんって超が3つつくらい日本好き。しかもタイに軸足を置くリスクの大きさだって御存知だ。

 井上さんの記事の結論は、EVシフトという大変革に直面しているのに「トヨタが真正面から向き合おうとしていない。それでは国民に『このまま中国の軍門に下っていいのか』と言われても、文句は言えないだろう」である。

 いかにトヨタが出遅れてダメな状況かを説明したいんだろう。

 トヨタを叩くとジャーナリストとしてカッコいいし、トヨタの悪口を読みたい人って多い。数字取れる。

 エンジン車も電気自動車も好きだし、自動車産業に関わる全ての人が幸せになって欲しい私からすれば、トヨタは日本の自動車企業のなかでもっとも先を見ていると思う。

 少しばかり普及の速度を遅く見積もったものの、電気自動車に対する準備だっておこなっている。

 もし日本を叱咤激励するなら、叩くべきはトヨタじゃなく、さまざまな規制で足を引っ張りまくる政治や行政だと思う。

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Writer: 国沢光宏

Yahooで検索すると最初に出てくる自動車評論家。新車レポートから上手な維持管理の方法まで、自動車関連を全てカバー。ベストカー、カートップ、エンジンなど自動車雑誌への寄稿や、ネットメディアを中心に活動をしている。2010年タイ国ラリー選手権シリーズチャンピオン。

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コメント

6件のコメント

  1. 朝日新聞出身のジャーナリストが書いた記事がそもそも信用できるのか甚だ疑問です。
    朝日新聞社の捏造と偏向報道はネットを利用する人なら常識ですよね。
    そんな記事を読んで国沢氏に意見を求めるって・・。

    ネットの普及でマスコミフィルターを通さない情報に触れることができるようになり、朝日新聞の売り上げが順調に落ちているのはとても良い状態だと思いますよ。
    週刊朝日も休刊でしたね。
    素晴らしい。

  2. 現代ビジネスっていうだけで胡散臭いのに、記事を書いたのが朝日新聞出身の記者って(笑)

  3. 「トヨタは日本の自動車企業の中で、もっとも先を見ている」とか「少しばかり普及の速度を遅く見積もったものの、電気自動車に対する準備だって行っている」との見解の国沢さんとしての根拠を明確に示してこそ、トヨタに対して不安や不満を持っている人たちに説得力を持って響くのではないでしょうか。
    私自身は、トヨタが衰退しようが発展しようがどうでもよいのですが、大好きな自動車・自動車産業が、環境問題や気候問題に責任ある態度をもって取り組んでいって欲しいと思っています。切なる願いです。

    • 国沢さんありがとうございます。
      エネルギーは再生できません。

  4. 国沢さんEVに対して偏見ない稀有なジャーナリストだと認識してたけど、今日の岸田の答弁見てもトヨタが望む方向性に国を従えたと認識できないなら、さすがにバイアス入ってるのでは?
    世界に先駆けて規格制定したのに、まともな急速充電インフラがテスラ一つに負けている状況に業界リーダーの企業がなんの責任もないとでも?

    • 充電インフラまでトヨタが面倒見なきゃいけないんですか?
      テスラが普及してるのは、VWのディーゼルゲートが端を発する政治の流れに上手く乗れただけのハナシでしょ
      仮にトヨタが充電インフラを設置させてと交渉しても、設置するかどうかは各施設の責任者の裁量だと思うんですけど。