EV急速充電器の規制緩和でスピードチャージ可能に!? EV普及のカギとなる高出力化の現状とは

 これまで急速充電器の流れを振り返ると、日本が中心となって研究開発したCHAdeMOは、大手自動車メーカーとして初めて大量生産したEVである日産「リーフ」と三菱「i-MiEV」の発売を踏まえて2009年から実用化されました。

 ところが、こうした日本主導の動きに欧米メーカーが反発し、2013年からCCS(コンボコネクター方式)が登場します。

 同じ頃、中国では全土でEV普及政策を進めるなかで独自規格のGB/T、またテスラは「モデルS」の量産化に合わせる形でこちらも独自規格であるスーパーチャージャーを開発しました。

 さらに、2020年には中国がCHAdeMOと協議したうえで、世界各地の急速充電方式と互換性を持つChaoji(チャオジ)規格を提唱しているという状況です。

 これらの急速充電器は、通信方式や最大出力(最大電圧および最大電流)などの規格が違い、現時点では世界標準化に向けて今後どのような流れになるのかを予想することは難しいです。

充電中の電気自動車
充電中の電気自動車

 ただし、いずれの充電規格においても、高出力化に向かっていることは確かで、例えば、日本でのCHAdeMOは現時点では50kWが主流ですが、2021年末から90kWの導入が段階的に始まっています。

 また、欧州メーカーでは、アウディジャパンがポルシェジャパンと連携して全国各地の正規販売店で150kWを独自に広める活動を強化しているところです。

 このような急速充電器の高出力化は、EVが搭載する電池量が大型化していることを反映しているのはいうまでもありません。

 例えば、電池容量100kWhを出力100kWで充電すれば、充電時間は1時間。これが、出力50kWになると2時間かかることになります。実際には、充電器の出力などに対する制御がかかるため、電池の特性や電池に対する安全性の配慮からこれよりも時間がかかります。

 また、急速充電器は使用時間が基本的に1回30分というルールも念頭に置く必要があります。

 それでも、欧米メーカーのEVの上級モデルでは90kWhや100kWhが当たり前になってきましたし、国産EVでもトヨタ「bZ4X」やスバル「ソルテラ」では70kWhを超えています。これは、満充電での航続距離を長くしたいからです。

 航続距離や充電時間・場所、そして電池の負担が大きい車両コストといったEVにおける基本的な課題は、現時点でのEV関連技術や社会情勢のなかで急速充電の高出力化だけでは解決しないでしょう。

 重要なことは、個人や事業者がEVを実際にどのような目的で使うのか、その際に必要なエネルギーを社会全体でどのようにバランスさせていくのかという視点を、政府やメーカーだけではなく、ユーザーの一人ひとりが持つことではないでしょうか。

日産・サクラ のカタログ情報を見る

日産・リーフ のカタログ情報を見る

【画像】日産の軽EVが大ヒット! 新型「サクラ」上質すぎる内装に驚愕!(33枚)

【2023年最新】自動車保険満足度ランキングを見る

画像ギャラリー

Writer: 桃田健史

ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。

1 2

新車不足で人気沸騰! 欲しい車を中古車でさがす ≫

【NEW】自動車カタログでスペック情報を見る!

最新記事

コメント

本コメント欄は、記事に対して個々人の意見や考えを述べたり、ユーザー同士での健全な意見交換を目的としております。マナーや法令・プライバシーに配慮をしコメントするようにお願いいたします。 なお、不適切な内容や表現であると判断した投稿は削除する場合がございます。

1件のコメント

  1. そこだけじゃないでしょう。
    それよりも「設置した事業者が1kwh=○○円で売れる」ような体制にするべきです。いまの状態は「1分○○円が基本」になってますが、これでは、時間単価となり低速な充電器は割高になってしまう。このあたりの法改正が必要でしょう。

メーカーからクルマをさがす

国産自動車メーカー

輸入自動車メーカー